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45/95

45,元高校球児は暖かい手を握られます

「ねぇ、奈央お姉ちゃん!その人がやっている解呪っていうの、自分でもできるんだよね!やらせてよ!マーナを救いたいんだ!」


 マイルが奈央たちに訴える。

 マーナ、マイルと同い年で真紅のような髪色に目の色。年上のワンミにあれこれ歳不相応に指示する女の子。今は奈央の魔法の効果で眠っている。

 そんな彼女の中には本人ではない何者かによって操られている。その正体は未だに分からない。

 それをマイル、奈央、そして村長も知っているのだろう。ただそれを取り出せずにいた、方法が分からなかった。

 しかし奈央たちが来たことによって状況は一変、薫の手によってその操っているまがい物から解呪しようと試みた。

 ただそれに失敗してしまった。そこで薫と同じ属性の魔法が使えるマイルがやりたいと申している。

 でもそれには、


「マイル君!ダメなんだ!この魔法を使うと寿命が一気に縮んじゃうんだよ!」


 奈央は疲れている身体を起こしながら必死に訴える。


(マイル君は実際に白魔法の代償を見ていないから……)


 自分が言っていることが簡単な代償に聞こえるかもしれない。しかし強力な魔法を、それも一気に使用すると体の生命力を引き換えに発動する。老化が著しく進み、見るに絶えないもの。


「でもこのままじゃマーナを救えないよ!自分ができるならやりたいよ!」

「奈央さん、マイル君、落ち着いて。まだ今すぐというわけじゃないはずです。マーナさんはかなり深い眠りについています。これなら1時間くらいならおきません。状況を整理して新たな作戦で挑む方が先決です」


 令がふたりの間を割って、冷静に止める。

 令も普段に比べ声色が違う、それでもここまではいけない、それを変えるために動いてくれた。


(冷静に、新たな作戦……切り替えないと!)


 奈央とマイルは落ち着きを取り戻すように努める。それでもマイルは早くマーナを安静にさせたくてうずうずしている様子だ。

「つかさちゃんの言う通りね。ワタシも失敗をくよくよしていられないわ。でも原因が分からないと次に進めないのよね……何が良くなかったかしら……?うーん、奈央ちゃん分かる?」

「自分もすぐには……ワンミさんも何故か手伝ってもらってもいいかな?」

「じ、自分ですか?」

「うん。ワンミさんも魔法凄いから」


 今はとにかく手数、たくさんの頭脳が欲しい。どうして薫の魔法が上手くできなかったのか。解呪に失敗してしまったのか。その分析を奈央はワンミに優しくお願いする。

 薫の言う通り、原因が分からないままでは、仮にマイルに解呪を任せたとしても成功する保証がない。


(そもそも解呪が出来るのか……?)


 確かにマイルは白魔法の適正がある。しかし普段使用していないところをぶっつけ本番でできる保証もあるわけがない。

 ここも課題のひとつだ。

 問題だらけになってしまった。

 奈央はせわしなく身体を揺する。そうしないと落ち着かないから。しかし考えはまとまらない。

 そんな時、ワンミに手を握られる。


「な、奈央さん、今の奈央さんだといけないです。落ち着いてください……!」


 奈央はワンミの方を振り向くと、美しい顔がそこにあった。

 真剣な表情、自分を思ってくれるまなざし。今のワンミは、今まで見たワンミの姿よりも綺麗で可愛く、生き生きとしている。


(令さんに言われたのに結局自分は焦っていたのか……)


 ワンミの握られた手からの温もり、距離が近いゆえに感じるワンミの僅かな香り、それが奈央を我に帰してくれる。


「ありがとうワンミさん」

「い、いえ!自分はただ奈央さんの力になりたかったので……」


 初めて言われた気がする。

 前の世界から通じて。

 いつも奈央は力になる側だった。同じ立ち位置の人はいなかった。

 それでいいと思っていた。誰かの役に立つことが奈央自身の幸せだった。


 でも今はどうだろうか、ワンミ言われた言葉。

 嬉しいなのか、今の感情が奈央には分からない。複雑な気持ち、これはなんだろうか。

 ただ同じ視線、距離でいてくれることは嬉しいなんだ。


 ワンミは顔を上げ、


「か、薫さん。失礼なことですが……もしかしたら気持ちが足りなかったかもしれません」

「気持ち?」

「は、はい。その、マーナは治したい気持ちがもしかしたら足りなかったのかなって……じ、自分は火の魔法使うとき、あの時と同じくらい威力が出て欲しいって。そうしたら使えるようになったので」

「……なるほどね。確かに魔法を確実に成功しなきゃと思って、そっちばかりに気を使っていからね。マーナちゃんを治したいという気持ちが、念が足りないってことなのね。根性論ね!」

「ま、間違っていたらすみません!」

「大丈夫よあってるわ。だって魔法を使うのにこうしたいって気持ちがなければ、そもそも成功しないものね~。確かに辛い時の根性論は嫌いだけど、今回はそれじゃないし。どうかしらつかさちゃん」

「そうですね。確かにワンミさんの言うところはあるかもしれません。魔法は実際に形にする想像力、そしてそれを成功したいと願う気持ち、この2つがないと成功しないのですね。言われて合点するところが多いですから」

「つまりその2つがあれば魔法は何でもできるというわけね?」


 薫はニヤリと、令は頷くように話を飲み込む。


(そっか……言われればそうなのか……)


 奈央も思いあたる節はある。

 想像力、これはゲームなどで実際見てきたものを頭に思い出して、思い描いて試していた。

 気持ち、上手く発動させたいと確かに願っていた。これが気持ちになるのだろう。

 奈央たちは基本的に無詠唱で魔法を使用しているが、一般的には詠唱が存在する。それがなぜなのかも今の奈央は理解できる。その方が発動させやすいから。詠唱することによって、その魔法を発動したいという想像がしやすく、言葉に気持ちを込めることで発動率、成功率を上げる。

 ゲームの魔法、色々な概念があったがこの世界がもしそのような概念であれば、マイルが代償なしに魔法を使用できるかもしれない。

 奈央は再度立ち上がる。


作者:お久しぶりになってしまい申し訳ありません!多忙につき間が空いてしまいました!ただ落ち着いてきたのでここからた投稿頻度増やしますね!ブックマーク登録、評価、励みになりますので気軽によろしくお願いします!!

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