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36,元高校球児は今度はショタといちゃいちゃします

注;これはあくまでフィクションです。

「ワンミ!それと……女性の……お姉さん……!マーナを救ってくれ!」


 午後、ワンミが寝床にしている洞窟内に奈央たちはいるので正確な時間は分からないが、おそらく15時過ぎにマイルがここにやってきた。

 女性のお姉さん、それが誰のことを指すのか、奈央は気付くのに時間がかかった。名前以外で呼ばれることが滅多になく、そして性別が逆転したことで女性やお姉さんと呼ばれることに違和感がまだ消せない。


(でも慣れないとな……)


 違和感は覚えるが今は女性になった。そう呼ばれることが嫌なわけではない。前世では色々な呼び名で言われたことがある。なかでも一番ショックだったのはちびっ子におじさんと言われたこと。純粋で無垢な子供は自分よりも大きい人をそのようにいう時がある。奈央も例外ではない、もう今後はそのように言わないと誓っている。

 マイルはとことこ奈央たちの方に近づき、


「頼む!お願い、します!」


 体をこれでもかと屈折しながらお辞儀で頼まれる。ワンミは少し難しい顔をしている。


「と、とりあえずマイル君顔を上げて?しっかりお話聞くから」


 こういう少年をどうすれば落ち着くか、奈央は過去の引き出しをあけながら実践する。

 マイルの前でかがむようにする。今の奈央は女性の平均身長よりは小さいがマイルよりは大きい。まずは目線を同じにすること。

 そして表情優しく話すこと、少しでも困ったような声や怒ったような声色にすると感受性の高い子供には感付かれやすい。今はむしろマイルというキーな存在から話が訊けるチャンスでもある。

 これを前世の彼女が迷子の子供にしていた。彼女は保育士や小学校の教師などが夢だったことを聞かされていた。

 マイルは不安そうな面持ちで顔を上げ、すぐに目線を逸らされた。何か粗相をしたのか奈央は不安になりながらも、


「ごめんね。その前に……マイル君、マーナちゃんは今どうしているの?」

「……マーナは今は役場で寝ているんだ。だからひとりここに来れたんだ」

「そっか、ありがとう!」


 マイルは少し声が上擦りながらも素直に答える。さっきまでの威勢とは裏腹に緊張しているようなそんな様子に変わっていた。どうしてか奈央は分からないがとりあえず素直に言ってくれたマイルに微笑む。

 索敵魔法をマーナに使いたくない、使えない。彼女はおそらく魔力感知的な何かを持っている、それこそ現在寝ているのであれば起こすことになるかもしれないからだ。

 奈央は屈んだ際に服が内側に寄れていることに気づき、直しながら、


「マーナちゃんについて色々聞くけど、マイル君いいかな?」

「う、うん!」

「ワンミさんも聞いてほしいけどいいかな?」

「……はい」


 こうして偶然転がりこんでくれたマイルからマーナについて聞き出すミッションが始まる。ワンミは乗り気ではなさそうなのが気になるが。



 右からワンミ、奈央、マイルの順番で座る。

 奈央は二人にアイコンタクトする。ワンミは以前午前中の笑顔が消えてしまい、俯いてしまっている。奈央のアイコンタクトには気づいてもらえず悲しい。

 一方マイルは奈央とすぐ見つめ合う。ただ目が合うなり一瞬体を強張らせていた。やはりまだ奈央を警戒しているのか、できるだけ優しく接し緊張を解いてあげないと、そう意識を集中する。

 マイルはそういう意味で体を強張らせたわけではないことを奈央は分からない。先ほど奈央が前かがみになり服が寄れた際に、首元から中が見えてしまった、見てしまった。たまたま垣間見た真っ白な素肌はマイルの喉を鳴らすには十分な魅了だ。そして視線は自然とどんどん奈央の内側に、いけないと分かっていながらも。

 マイルはその光景を忘れるために首をブンブンと横に振る。奈央は不思議そうにそれを見た。


「大丈夫?」

「ふぇ!大丈夫です!大丈夫です!えーと……マーナのことです。マーナは僕と同い年で幼馴染で小さい頃から仲良くしていました……」

「うんうん」

「マーナと最初に会ったころはマーナのお母さんがいて……マーナはよくお母さんに色んな事を自慢げに話している元気な子、って感じで……」

「うんうん」


 この辺りはワンミから聞いたことと一緒に、マーナは昔は元気っ子で活発だった。


「えーと、僕が6歳くらいになるころだったかな……そのあたりからマーナの様子が変わったんだ……マーナだけじゃないんだ。まず村、今は砂いっぱいだけど昔は木とかあったんだ。あとマーナのお母さん、ちょうどそのころにいなくなっちゃったんだ……」

「うん……」

「確かその時って村で祭りがあったと思うんだ。祭りがあった日から一気に変わった気がするんだ……」

「祭りはどんなことをしたか、覚えている?」

「えーと……村のみんながいっぱい食べて踊ってをしていたかな……」

「うんうん、他に何か催し物したりとかってあった?」

「えーと……他に覚えていること……あの頃は木がまだあったから、大きい焚き火?みたいなところでみんな集まって踊ったりしてたかな……」


 おそらくキャンプファイヤーだろうか、マイルからの内容は今のところ日本と変わらない、楽しい祭りのような雰囲気が伝わる。

 だがそれだけではないはず。


「うんうん、何か気になる事……あ、その時の山の様子ってどんな感じだったの?木とか生えてる?祭りの時はそっちに……お参りとか奉納とかってした?」


 今奈央たちがいるこの洞窟はかなり特徴的で印象的、それにクルギアスラ村は何か感謝して崇めているような気配すらあった。そのためもしかしたら蛇足かもしれないがひとつのきっかけになればと思い切り出す。

 ただ奈央の言った単語が分からなかったのか、マイルが首を傾げていた。


「おまいり?ほうのう?」

「ごめんね、気にしないでいいよ!何か今と昔で山に変化はある?」

「えーと……昔はえと……お姉さんが言っていたように木とか草は結構生えてた。この山って水も取れるけど鉱石も取れるんだ。確か体を洗う時に使う原料?っていえばいいんだっけ?それは今も昔も変わらないか……」

「あっ……」

「お姉さんどうかした?何か気になった?」

「ううん。今はなんでもないよ、続けて」


 マイルがしれっと言った内容で、奈央はあることを思い出したがそれは別の話なのでここではスルー。


(そういえば何気なくシャンプー使っていたけど、めちゃくちゃ貴重じゃん!)


 王都では水浴びが主流で体を洗うためのシャワーやお風呂はまだまだ先の話だった。ワンミのことを考えながらこの村のシャワーを何気なく使用していたので気づかなかった。あまりにも自然に使ってしまったから。慣れはやはり恐ろしい。

 シャワー、水を配管でつたえることができる技術、そしてシャンプーを作れる環境、これはこの村唯一の特産品と強み。


(宿に帰ったら令さんたちに報告しないとな……)


 薫・令はシャワーを使用したのだろうか、そこらは分からないが誰もそれについての関連について声を上げることはなかった。それだけ前の世界ゆえに自然に馴染んでしまった。本来ならこの世界ではとても貴重なものに。

 奈央はその思考を一回片隅に置いておき、マイルとの会話に意識を戻す。この村の最大の手がかりを掴むために。


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