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34/95

34,元高校球児は過去話を聴きます

注;これはあくまでフィクションです。

「おはようワンミさん!」


 クルギアスラ村について3日目、ワンミさんのところに行くのは2日目、奈央はワンミがいる洞窟に来ていた。

 昨夜ワンミはしっかり寝られただろうか。

 事前に探索魔法でいることを確認済み。中に入ると昨日の火球はほとんど無くなり、暗く静寂で陰鬱な空気が流れているように感じる。

 それを払うように奈央は元気よく挨拶する。ワンミはまだ寝ていたようだった。


「……奈央さん……おはよう、ございます」


 ワンミは身体を起こす。奈央は手元が見やすいように魔法で火球を作りワンミの元に寄る。


「ありがとうございます、もう朝なんですね……」

「ここ暗いから分からないよね、また昨日みたいに火球を天井につけてもいい?」

「はい、お願いします」


 奈央の提案にワンミは快諾する。

 左手に持っていた火球を両手支えるように持ち替え、慎重に上に放る。ひとりでの挑戦はやはり失敗に終わってしまう。

 再び暗い洞窟、奈央が涙ぐんでいることを察しているのかワンミは奈央の手を取り、


「一緒に、やりませんか?」


 ワンミから言ってもらえた、それが奈央はとても嬉しい。洞窟内はまだ暗いのでワンミには分からないだろうが奈央は目をキラキラさせながら一緒に火球を天井放った。



 昨日ほどではないが、火球をある程度つけて洞窟内は再び明るくなった。

 ワンミはマーナが置いてあった朝食を食べ終え、洞窟内でひと段落していた。顔色も悪くなく血色も良さそう。表情も昨日に比べてよくなっているように見える。


「今日、午前中はお話でもいいかな?」

「はい、分かりました」


 今回は村のことも聞きたいがそれよりも、


「ワンミさんの生まれた時からの記憶をお話して欲しいなって!」

「え?生まれた時からですか?」

 予想だにしていないことを言われたワンミは目を見開いていた。


「そう、もっとワンミさんのこと知りたいなって思って……それなら最初から、生まれた時からどうかなって思ったんだけど……あ!話したくないことは無理に話さなくていいからね!」


 攻めすぎてしまっただろうか、踏み込んでしすぎていないだろうか、彼女を悲しませていないだろうか、奈央は不安になりながらもワンミを真っ直ぐ見つめる。


「分かりました。といってもあんまりいい話はないですけど、それでも大丈夫ですか?」


 不安そうに見つめ返してくるワンミに奈央は、


「大丈夫。ありのままのワンミさんを知りたいんだ。それに自分もあんまりいい過去はないから……」


 ワンミの手を優しく取りながら呟く。


「……奈央さんの生まれた時のお話聞きたいです」


 今度は奈央が目を見開きながらも、


「分かった。交換みたいにしよ!」


 自分の過去と向き合う心の準備を始める。

 そしてワンミは語り始める。



 自分の出生ですか、記憶がついた頃からすでに村長のところで暮らしていました。親、父は病で早死にしたらしく、母もすでにこの村にはいないということでした。そのため村長が自分を引き取り、小さい頃は大切育ててもらいました。今は全く会っていないですけどね。

 村長が言うかぎり、お前は魔力が秀でている、と物覚えついた時から教えられました。今は火魔法を使えるようになりましたが、当時は魔法がどういったものか分からず、住人たちも魔法を使えるものがいなくて、困っていました。火魔法が使えるようになったのは村長の娘、マーナの母親が火を使った料理をしているのを見て、なんとなくそれを想像して真似てみたら使えるようになった感じです。

 そうなんです。その頃はマーナにも母親がいました。いつから忘れてしまいましたが失踪してしまいました。今も見つかっていません。父親も同様です。

 マーナの両親の印象ですか?えっと、2人がいた頃は実はこの村の周りに少ないながらも木や草が生えていました。木を炭にして火を使った料理をしていたって感じです。今は火を起こすのも大変だし、そもそもあまり必要とされていませんが。

 マーナの母親はマーナと見た目はかなりそっくりです。マーナも可憐で可愛いですが、大人になったらあんな美人になるんだろうな、そんな綺麗でそして面倒見のいい人でした。マーナの母親から色々なことを教わりました。生活のルールや物の名前、本当のお母さんのように。時折遊び相手にもなってもらいました。

 そうですね。その頃はまだマーナは生まれていなかったので、マーナが生まれてからはマーナを溺愛していましたけどね。それはしょうがないことだと思います。やっぱりマーナの母親と自分は似ていないですから。それに自分の年齢的にもちょうどいいと思いますから。それからは村長と話すことが多くなりました。

 マーナの父親は、すみませんあんまり記憶に記憶にないんですよね。いたことは確かです。ただ働き者の印象が強くてどんな人だったかまでは思い出せません。婿養子ってことは覚えています。だからよく働いていたのかもしれませんね。

 村長の妻、ですか?そういえば見ていないですね。最初からいなかったので気に留めたことがなくて。でもマーナやその母親も見る限り、きっと美人さんなのかなって思います。

 マーナの母親が失踪した辺りからですね、この辺りから木は完全になくなってしまい今の砂漠地帯になってしまいました。そんな中村長と小さいマーナ、自分で暮らしていました。

 あ、そうなんですよね。村長の家系は魔法が使えます。自分もその家が作れる魔法を覚えてみたかったのですが出来ませんでした。どうしてなのか村長に聞いたことがあるのですが、やっぱり家系が違うから、その魔法は使えないみたいなんです。そして思ったんです、なんで自分は魔法が使えるのかって。それも聞いたら、あんたは特別だからと村長はそれしか言いませんでした。

 普段どんな生活をしていたか、ですか?えっと、自分が小さい時は遊んでいた記憶しか残っていないですがそれでもいいですか?

 ありがとうございます。自分が5歳前後、それくらいの時は木によく登ったりマーナの母親とかけっこしたりしていましたね。夏になると洞窟内で村長権限で貸し切りで水浴びも出来ました。あの頃の村長さん、今も昔も口数はそんなにないけど結構そんな感じで優しかったんです。

 マーナが生まれてからは村長の仕事の手伝いをしていました。家を建てるためにたくさんの砂を運んで。砂は一気に運ぼうとすると重いんですよね。それを幾度も運んで降ろして、運んで降ろして、大変なお手伝いでしたが村長がたまに水を渡してくれるのです。その時は嬉しかったです。


 それがワンミが語ってくれた幼少期の出来事。

 今度は奈央がワンミに話す番だ。


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