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11,フェミニスト反省会と別れ

注;これはあくまでフィクションです。

 トンギビスタ村にオークたちと住むことになって3週間後、王都から派遣されて1月半が経過していた。薫たちが召喚された時は春らしく、今は少しずつ暑さを感じはじめる時期になっていた。

 薫、令、奈央はオークたちが新しく作った来訪者用の宿泊できる宿舎に滞在していた。人間だけが作っていたころよりも幾分か大きく作られ、中や細かな部分は専門的に作業時間を作れるようになった人の手で丁寧にこなされている。建築や他の作業もオークたちがいることで目まぐるしく早くなり、トンギビスタ村の発展スピードは目覚ましかった。

 夜、ロビーの居間で3人は集まっていた。何かと村の手伝いを各々でしていたのでこうして集合するのは久しぶりだった。


「つかさちゃんとなおちゃんをちゃんと見るの久しぶりな気がするわね~」

「そうですね。ここ最近はとくに頑張っていた気がします。掘削作業に魔法の指導など……嬉しいことに能力も幾分か上がりました!」

「じ、自分は何故か村の男たちからすごい話しかけられて大変っす!」

「それはねなおちゃん、可愛い子になってしまったからよ……なによ!ワタシにも話しかけなさいよ!!」


 ぷんすか、と薫は腹を立てる。


 (こういうところで性別が入れ替わってしまったことを思い出すわね……と言っても同性のように思ってしまうからなんてことないのだけど)


 令も困り顔で、


「私も女性からお声がけ頂くことが多いですね……今思えばそういうことなのでしょうね……でも薫さんは色々な方にお声がけされていて尊敬します」

「そうね、オークたちやおじいちゃんおばあちゃんたちからも話しかけられるわ。なんだっけ?この前『友好』ってスキル着いたのよ。きっとそのせいかしらね」


 薫はさっきとは一転、少し嬉しいそうに答える。


(こうして色んな方から声かけられるなんて、ここに転生していなかったら無かったでしょうね。慣れないことだらけだけど、結局楽しんでいるのよね)


 薫が感慨に深けている時、奈央は少しへこんだ表情で、


「う、羨ましいっす。自分は今回スキルが付いたとか一気にステータスアップとか無かったので……」

「きっとそのうちドカッーと上がる時があるわよ!……さてこうやって久しぶり集合したから、ぼちぼち反省会、しましょうか」


 3人みな姿勢を整える。反省会、レンヘムとの戦闘時のことについてだ。


「まずワタシからね。一言で言えばあなどってしまったわ、結局最後は全力を出し切らないといけないくらい。レンヘムように一目でヤバいって感じたら前回以上に気を付けた方が良さそうだわ……」

「もうちょっと鍛錬が必要かなと私は感じました。魔力量の関係上『念話』を低燃費で使っていたせいで薫さんと意思疎通が取り切れずに、結果的に薫さんが昏睡してしまいましたので……」


 令は冷静に分析しながら話す。


(こうしていれば……こうして欲しい……とか確かにあったけど、今回結局ワタシ一人で突っ張しってしまったからね……申し訳ないわ)


 今回の反省会、令や奈央がしたそうだったのもあるが、自分一人で危険な行動を取ってしまったことを薫は謝りたかった。


「そこに関してはしょうがないわ。つかさちゃんはワタシたち二人と自分にも能力を使うわけだから。色んなところ手助けしてもらっていて助かっているわよ」

「これが私の役目ですから。次は薫さんをしっかり守れるように努めます」

「つ、次は自分すよね……自分も申し訳なく思っています。レンヘムに色々されていて困っていたはずなのに、いざってなったら傷つけてしまうのが嫌……というか……怖くなってしまいました。でもそのせいでレンヘムと薫さんが深手を負ってしまって……」


 奈央は終始へこんでいる、薫はそれが凄く申し訳なく感じた。


「初めての本物の戦闘だったもの、しょうがないわ。ワタシもレンヘムがケガして倒れているのを見た時ゾッとしたもの。ましてやそれを自分がさせちゃったものね、回復魔法覚えていて良かったわ……こういうところもだんだんと慣れていくしかないわね、メイから色々と聞いたけど、今回こうしてオークたちと分かりあえる方が、相当の奇跡らしいの。他にも別種族でも話せることのできるものは多いらしくてね、だけど好戦的らしいの。もしものことも考えて専用魔法をもっと強化、熟練しないとね……おかげで『光速』でごっそり魔力量持っていかれたわ!」

「そ、そうっすね。やっぱり死ぬは嫌すから……」


 奈央は苦笑しながら答えた。


(やっぱりへこみ顔よりも笑っている方が可愛いわ)


 薫は励ますように奈央にはにかんだ。令もそれを察し、声色は優しく、


「後はもっともっとこの世界について情報を集めないとですね。3か月では分からないですし、今回発見したことも多かったので……」

「そこも少しずつやるしかないわね~。後は結局経験なところもあるでしょうから」

「そうですね。それとあともう一人くらい増えたらだいぶ楽に戦えそうなのですが……」

「と言ってもね~……こちらの秘密を漏らさないものならって条件になっちゃうから……転生の先代はいまどこなのかしら?結局王にはぐらかされたから……さてさて他にはなさそうかしら?」

「はい、私はありません」

「じ、自分もないっす」

「それじゃ終わりましょうか!そうそうレンヘムとリーダーのステータスなんだけどね……」


 こうして反省会は終わり、眠くなるまで談笑を続けた。

 薫はまたひとつ親睦が深まったように感じ、今夜はよく眠れたのだった。



 トンギビスタ村を去る前日。

 村を出発する準備をある程度整えた薫は、レンヘムに会いにいく。


 村の急速な発展は一通り終わり、後は畑の仕事など長期の作業が残るだけとなっていた。ここまでくれば薫たちもお役御免、王都に帰る準備をしていた。

 村人たちの魔法は着々と進歩し、とくにメイには使いやすい呪文を一式覚えさせ、後は日々の鍛錬となっていた。畑仕事、装飾加工、建築作業などの効率は一気に上がり、そう遠くないうちに王都と引けを取らない、同じくらいになるのではと薫は思った。

 オークはやはり洞窟を寝床にしたいものがいるらしく、地盤沈下がないように村人と協力しながら穴を掘り進めていた。大きなトラブル、人間とオークのケンカはほとんどなく、王都以上に平和だった。


 薫は近くの山、かつてオークたちが住処にしていた洞窟があったところ、今回は山頂、トンギビスタ村が見張らせる場所に向かった。レンヘムと待ち合わせるために。


(しかし本当に綺麗になったわね……こんな短期間で……)


 薫が天辺から見た夕日の映える村に感嘆としている時、レンヘムが到着する。


「おまたせぇ、カオルちゃん待ったぁ?」

「大丈夫よ、今きたばかりだから」

「良かったわぁ……明日ここを去るのよねぇ?」

「そうよ」

「やっぱり寂しいわねぇ……カオルちゃんともっとお話したいしぃ、ついていきたいけどぉ」

「しっかりみんなを引っ張っていくんでしょ?」

「そうねぇ、少なくともリーダーがアーシの指示がなくても自信もって動いてもらうようになってくれるまでは頑張るわぁ!あいつ結構小心者だから時間かかりそうだけどぉ」

「いいんじゃない?その方がレンヘムも達成感あるでしょ?」

「それもそうねぇ、そう思うことにするわぁ」


 レンヘムは苦笑しながら答える。しかしその表情はどこか明かるげに薫は感じた。


(本当に転生してから怒涛の毎日だわ。でもやっぱり楽しんでいるのよね……ワタシって忙しいのが好きだったかしら)


 そうではない、違う理由だと薫自身気づきはじめている時、察するようにレンヘムは、


「あらためてぇ、カオルちゃん今回はありがとうねぇ」

「こちらこそ感謝だわ。こうしてあなたと出会って、一戦交えちゃったけど……だからこそ色んな経験と考えを持つことができたわ」

「これからも絶対応援するからねぇ!今後はどうするのぉ?」

「トンギビスタみたいに王都から離れたところに村や集落は他にもあるみたいだから、転々としながらだと思うわ」

「いいわねぇ、色んなところに行けるってぇ……そうそう!ここにも後で戻ってくるのよ!良いねぇ!そして色んなお話を聞かせてちょうだいぃ!」


 レンヘムの勢いに薫は圧倒される。


「すぐには……ちょっと時間かかるかもしれないけど、必ずあなたたちに会いに行くわ」

「絶対来てねぇ!」


 また来てもいい、そのことが薫とっては嬉しかった。誰かに必要される、誰かと気兼ねなく話せる。種族も関係なく。性別は、薫にとってはもう少し時間かかりそうだ。

 心が満たされる、慣れない感情に薫は翻弄される中、レンヘムが顔を赤らめながら、


「……今夜なんだけどぉ……一緒に寝ないぃ?」

「……え?」


 時間が止まった。ように感じるがレンヘムはモジモジし続けている、止まっていない。ちょうど性別について思っていたおかげか、自分が今は男だと自覚できたが、


(は?え?は?噓でしょ?!噓でしょ!待って待って!そういうことで言っているのレンヘム?!そういうことなの?!)


 薫は冷や汗が止まらない。どう答えるか。いっそ冗談よぉ、と早く言ってくれないか期待したがその兆しは見えそうもない。

 確かに仲は良かった。思いも似ていた。気兼ねなく話しやすかった。しかしそれはあくまで女性同士の感覚でのこと。異性の関係、経験皆無の薫に痛恨の一撃。

 この間の思考わずか3秒、そろそろ答えなければ怪しまれる、薫の冷や汗はピークに達した。

 その時、後ろから聞き覚えのあるはきはきした声に助けられる。


「いたいた!レンヘム!ちょっとオーク同士で騒ぎが起こっちゃって止めて欲しいです!村から渡されたビール?っていうの渡されてからみんなおかしいんですよ!」

「リーダー何しにきたぁ!……えぇ、これで?みんな軟弱ねぇ。飲んでるけど何も起こらないわよぉ」


 レンヘムは言いながら左手持っていた大きなジョッキを見せびらかした。


「カオルちゃんごめんねぇ。ちょっと一足先に行ってくるわぁ。またねぇ」


 別れというのにレンヘムはご機嫌だった。早々にリーダーの首根っこを掴みながら立ち去る。


「しょうがないから今日はあんたと一緒に寝てやるよぉ!」

「は!?え?レンヘム?!」


 それを観察していた薫は、危機的状況から脱するも、


(あれ酔っぱらっているわね……お酒って本当に怖いわ……)


 ビール、お酒は時にそのものの本性をさらけ出してしまう。特にレンヘムの場合はお世辞やジョークは言わないたちだ。

 薫の冷や汗は、未だに止まらなかった。



 山から戻ると日は沈み、村はお祭りように賑わっていた。かねてオークと人が共同開発していたビールの試飲会だ。オークのおっちゃんたちが恋しいといったところを飲むことのできない令が、知識はあったらしく、指導していた。麦っぽい(正式名称は不明)があったことが幸いし簡単に作れたようだ。

 レンヘムたちが上機嫌になっているもこのせいだろう、薫もビールが恋しかった。しかし、今は未成年に逆戻り、ルールはルール、バレたら令たちにきっとうれいの目で見られるだろう。そんなことになったら藻掻き苦しむことは分かっているので、我慢した。

 お祭り会場を横目に薫は泣く泣く宿舎に戻ろうとした。その時後ろから、


「あら薫さんじゃない!ビールはいいの?!」


 メイから話しかけられた。当の本人はシラフのようだ。

 薫は自分に言い聞かせながら、


「お酒は二十歳になってからです!お酒は二十歳になってからです!」

「そうなの?って、確かに令さんが言っていたわね。なんだかみんな凄い上機嫌になっちゃって怖いわ~」

「普段の鬱憤うっぷんやストレスを吐き出したりできるいいものですよ!」

「随分詳しいね、飲んだことあるの?」

「は!っいえ!そういうふうに聞かされましたので……」

「ふぅん」


 薫は早く宿舎に帰りたかった。飲みたい思いが募り、話し方がおかしくなっていることが自分でも分かった。

 しかしメイは流れるままに近くのベンチに腰掛ける、きっと明日ここを立つ前に話しておきたいのだろう、薫は感じ取り隣に座る。


「あらためて、薫さん今回はありがとう。ここまで豊かになるとは思わなかったわ」

「ワタシもここに住みたいくらいだわ。明日発ってしまうのが残念よ」

「私どもとしてもこのまま居続けて欲しいところなんだけどねー」


 同じやり取りをさっきレンヘムとしたなと、薫は穏やかに思った。


「ワタシたちはとくに何もしていないわ、メイと村の人たち、レンヘムとオークたちが強力的だったからよ。すごいことよ、絶交よーとかの方が普通だと思うし」

「お互い思う所はあったでしょうけどね。でもねなんでだろ……あなたたち3人を見ているとそうした方がいいかなって思ったの」


 予想していない、経験のない言葉をメイからもらい、薫は面食らう。戸惑いながら、


「どういうこと?」

「薫さんたち、あなたたちはどこか王都の人らとは違う雰囲気を感じたの。なんて言ったらいいかな……変な感じ?……ごめんなさいね、悪い意味ではないのよ!私から見たらそうだったの……」


 メイは言葉をひねり出すために視線をあちらこちらに動かしながら、言葉を続ける。


「お話も聞く感じ、出会って間もないのよね?だからどこか会話にぎこちなさがあった。しかも若い男女だもの、普通ならトラブルのひとつやふたつ起こるものだわ。でもね、あなたたちは落ち着いていたの。お互いことをしっかり尊重して、凄いなって思ったわ。ウチなんて旦那としょっちゅう揉めているってのに!この前なんてね……ってこの話がしたいわけじゃないわ!……あなたたちを見てて、お互いの考え行動を理解してて……あっ、これが理想なんだなって」


 最後は薫の目を見ながらメイは伝える。

 薫は放心していたが、メイは気にせず何かを思い出し、


「そろそろ戻るわね!やっぱり私もビール飲もうかしら!またね薫さん!」



 宿舎に薫は戻る。自分の部屋に入り、ベッドに横たわった。まだお祭り騒ぎは続いているので普段よりも窓は明るい。

 メイから言われたことについて瞑想を始める。


(そのようなことを第三者から言われるのははじめてね、もちろんメイはワタシたちの事情なんて知らないでしょうけど……ワタシはワタシの男のイメージしかなかった。そして男になってしまった。当然イメージ通りの男になんてなりたくなかったし……けどどんなことを気をつければいいか分からない……そしたらなおちゃんは丁寧に教えてくれた、本当に助かったわ。同様になおちゃんにも教えたけど、なんだか恥ずかしかったわね……つかさちゃんとも話しやすかったわ。やっぱり女性だったから、なのかしらね?……入れ替わってしまったからお互いに色んなことを聞いて、協力して、洞窟の時も思ったけどね……そういえばSNSの連中は今頃どうしているかしら……)


 自分が転生してから他人について考えはじめるようになったことを薫自身はまだ自覚しきれていない。

 薫は目を閉じ、これまでを振り返る。そしてこれからどうなっていくのだろう、希望と不安前者が勝り、外のどんちゃん騒ぎを子守歌に、安眠した。

鴨鍋ねぎま:こんにちは!こんばんは!

 これにて薫の序章編は一区切りです。次回から場面が変わる?!

 ここまで見ていただいた皆さま、本当にありがとうございます。本当に初めての試み、まだまだ至らぬ方が多い文章。いつか必ずリメイクし、もっと内容濃くし改稿します!

 そのために今後もっともっと色んな小説を読み、もっともっとプロットを沢山つくり、自分自身を磨き鍛え上げていきます。

「フェミニストが男になって異世界転生」はまだまだ、まだまだ続ける予定なので、今後ともよろしくお願いします✨

赤烏りく:レンヘムがちょっと可愛く見えてきたかも……?やっぱり女の子なんですねぇ

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