1,フェミニスト異世界転生
注;これはあくまでフィクションです。
目が覚める。
「いつもの天井だ…」
寝ぼけていたのか、なぜかそのようなことを呟いた。そして昨夜は女性がたくさん出るアニメについてSNSで論争していたこと、その内容を思い出し、薫は舌打ちをした。
(身体のラインがあんなくっきり出る衣装なんかおかしいに決まってるでしょ)
思い出しながら薫は髪を掻き、朝の支度のために洗面台へ向かった。
彼女は畠木薫、偏ったフェミニストである。160cmくらいの身長、年齢は30代をとっくに超えもうじき40がみえていた。顔たちは整っているが鋭い目つきが印象的だ。
薫は幼少期からあまりいい環境で育ったとは言えなかった。長女として家族1人目の子供として生まれるも、その後弟が生まれ、初めての男の子ということものあり両親は弟を溺愛、逆に薫はそっけない愛情をうけた。
よりよい愛情を受けなかった薫は少しずつ、偏った考えを持つようになりはじめる。
(男だからってそんなに優先されるの?!ワタシが最初に生まれたのに!)
男に関しての贔屓が特に嫌いだった。最初はただの妬みだった。しかし、偏った考えはさらなる偏りを生み、今では事あるごとにSNSソイッターでは呟いては論争の火種になっていた。
(なぜ結婚するとき苗字は男の方に変更するのが一般的なのか!)
(制服など女性の方が露出が多いのはおかしい!)
(〇〇作品は女性配慮にかける!)
そのようなことを継続的に呟いたせいかおかげか、薫はソイッターではちょっとした有名人になっていた。反抗してくる輩に困ることもあったが、一定数の女性からは支持も受けており、それが薫にとって唯一の支えだった。きっと同じ境遇なんだと、そう考えると楽になれるからだった。
ソイッターだけが自分の考えをわかってくれる場所だった。周りの友達は次々と結婚を済ませ、子供も授かっており、気軽に会える人はほとんどいなかった。当然男の友達もおらず、孤立感が薫を襲っていたからだ。
会社でも苛立ちは募っていく
「薫、女なんだから事務処理パッパッとできるだろ、早くな!」
「トイレ長かったな、なんだ生理か?」
「お前はいつ結婚するんだ?」
上司からあまりにも心ない言葉をもらい続ける、薫が勤めるところは古くからある会社であり、男尊女卑の思想が残るところだった。
転職も考えていた。ただ給料は良く、英断に踏み切れなかった。そんなことをうじうじとしていたら、転職が難しい年齢にまで来てしまっていた。
(今夜もとことん呟いてやる・・・!)
薫は怒りを悶々とため込んだ。
こうすればよかった、ああすればよかった、後悔もあった。もし家族がもっとワタシを愛してくれたら、こんな会社じゃなくて別の会社だったら、もっと穏やかな性格であったら、生まれ変われたらと。
このような性格、考え方だからストレスを溜めていくことも薫自身気づいていた。ただ築き上げたしまった人生は、リセットする機会でもないと変えられないことも悟っていた。
薫は退勤の帰り道、そのような後悔と先ほどの怒りで考えに深け込んでいた。
(男ってどうして…あんな言い方はなんなの?!)
考えに、
(なんで男はあんな下品ことを平然と言えるの!)
考えに、
(女性を言いくるめて何が楽しいの!)
考えに、
(それなのになぜSNSでは叩かれる?)
深け込み、
(どうしてワタシをしっかり見てくれないの!)
横断歩道の赤信号に気づかずに渡ってしまう。
(もしワタシが男ならそこらもしっかりするのに!まぁないでしょうけど!)
そして突然クラクションが聞こえる。
「えっ!」
そこで薫は横断歩道にいることに気づいた、だが手遅れだった。音を鳴らしたトラックはすぐ目の前だった。
瞬間、鈍く重い感覚に一気に支配され、激痛が全身から訴えてくる。しかし、その痛みもすぐに消えはじめる、感覚が失われはじめていた。力がどんどん抜けていき、気怠いような、眠気のようなもので満たされてくる。
薫は色んな感覚におそわれながらも思考は動いていた、それが走馬灯なのかもしれないと気づいていながら。
(あぁ、なんてあっけないんだろ……これで終わりなのね……)
そして闇に包まれて・・・
と思った瞬間、今度は眩い光に覆われるような感覚がきて、薫は驚いて、パニックになる。
少し落ち着いて、自分が目を閉じていることに気付いた薫は、目を開けはじめる。
さらに気づく、先ほどまで横たわっていたはずなのに、その場に立っていることに。
「えっ!」
そうしてすぐ周りを見渡し、先ほどの住んでいたところとは全く違う造りの建物の中にいることに驚きながら、呟く。
「知らない天井だ」
鴨鍋ねぎま:初めまして、鴨鍋ねぎまと申します。国語赤点、日本語は独特で今まで生きてきましたので至らぬ点があるかと思いますが、よろしくお願いします!
赤烏りぐ:今回作品制作をお手伝いさせていただいた赤烏りぐです!自分が考えたことない切り口でのお話はやっぱり面白いし、自分の作品を書くのにも勉強になりました!