イーリエさんの訓練（夜の部）
「初日の訓練、お疲れ！」
「疲れました‥‥‥」
「明日絶対筋肉痛になるよ‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
俺は声が出なかった。
ギルドから少し歩いて「居酒屋アドベンチャー」って書いてある店に入っていった。
「今日はお前らの歓迎会だよ、俺の奢りだ。ありがたく食えよ！」
「「はい！ ありがとうございます」」
「あら、イーリエさん。注文まだでした？」
「えっーと注文、このメニュー全部で。あとビールを俺のジョッキで、こいつらはジュースでいいわ」
「はい、いつものですね」
！！ マジかよ！？ どんだけ食うんだ。
そしてマイジョッキがあるのかよ‥‥‥
「はい、飲み物お待たせしましたー」
ジュースのグラスが三つと‥‥‥小さい樽？
「はい、ありがとう。ほれ、乾杯！！」
「「「‥‥‥乾杯」」」
ゴッゴッゴッ‥‥‥ダンッ！！
「‥‥‥あぁーー！！！！ 美味い！！ お代わり！」
「はーい」
一気飲みかよ‥‥‥
「お前らの好きなものわからないからとりあえず全部頼んだけど足りるか？ 大丈夫か？」
「大丈夫ですよ！ むしろ多いです！」
「お前たちは育ち盛りなんだから今食べないといけないんだ。しっかり食べろよ！」
いや、言ってる事はわかるけど‥‥‥多いよ、どう考えても。
「はい！ いろいろお待たせしました〜。こそこそ（キミたち新人さん？ 大変だけど頑張ってね）」
「こそこそ（いつもこうなんですか？）」
「こそこそ（そうよ）」
このイーリエさんはとにかく新人を大切に育てる担当官らしい。
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「お前たち、冒険者になったからって調子に乗って無理はするなよ。こうなるからな」
と言ってイーリエさんは左手の手袋を外す。
鉄で出来た義手だった。
「イーリエさん、それって‥‥‥」
「俺はこうなって引退したんだ。こんなのはマシな方さ。俺以外のパーティーはみんな‥‥‥」
とそこまで言うとイーリエさんはジョッキを煽った。
「いや、すまん。お前らの歓迎会だというのに辛気臭い話をしちまったな。ほら、食え食え！」
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「おい、アウルム！ 聞いてんのかぁ‥‥‥！？ ヒック！ おりゃあよぉ、新人のためによぅ‥‥‥どれだけ尽くしてるか‥‥‥ヒック！ わからんだろぅ！？」
「はい、聞いてますよ」
イーリエさんは出来上がってきた。
やはりこうなったか‥‥‥ 予感はしていた。
でも憎めない人だと思った。散々走らされたけど‥‥‥
イーリエさんはテーブルに突っ伏して寝てしまったようだ。
「イーリエさんなら大丈夫よ。いつもの事だから。やっぱり余っちゃったわね。持って帰れるように包むわね」
「ありがとうございます」
店員さんも慣れたものらしい。
「イーリエさんの訓練はどう？」
「訓練も何も今日は走ってただけですよ。何も教わってないです」
「初日でしょう？ そんな感じよね。そのうちイーリエさんの訓練の意味がわかるわ。イーリエさんが担当官になってから新人の死亡率がグンと減ったからね」
「えっ！？ それはすごい！」
「イーリエさんの指導受けてれば間違いないわ。明日からも頑張ってね！」
いい事を聞いた、明日からの訓練もしっかり頑張ろう！！
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