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アウルム、隣国へ

「しかし本当に命拾いしたよ。どうやって複数の騎士を?」

「あ〜、それは‥‥‥‥‥‥」


「ブラス様、アウルム殿が困っておりますぞ。冒険者の強さの秘密は守られるべきものですので詮索はその辺で‥‥‥」

「いや、失礼した。そうだな」


 深く詮索されずに良かった。このまま話題を変えてしまおう。

「しかし何故仲間割れを?」

「我らは現在ユピテル教と対立していてね。おそらく奴らはそいつらにそそのかされて‥‥‥だろうな」


「ユピテル教?」

「『ヒトによるヒトのための世界を』というふざけた教えの宗教さ。ヒト以外の種族、ドワーフ、獣人、エルフの排斥活動をしているよ」


「なんか聞いたことあるような、無いような」

「王国には太古の昔よりタイタンの教えが息づいているんだけどね‥‥‥」


「タイタンの教え?」

「『大地の神タイタンの背に住まうもの、立場形は違えど平等なり』 王国という形ではあるがな。だから我が王国には「犯罪奴隷」以外の奴隷はいないんだ」


 ほほぅ。それは住みやすそうな国ではあるな。種族的差別のない国なのか。でもそれがヒト種だけの国にしようという動きもあると。


「我が国は鉄が豊富じゃ。後で港を見てみるといいだろう。きっと驚くぞ」

 


 国境に差し掛かった。

 さすがは公爵様、入国審査もほぼスルーだな。


 タイタン王国に入ってからの馬車の運転で気がついた。スピードが速いし揺れない。

「ん? 道が平らですね、もしかして舗装してある‥‥‥?」

「おっ! よく気づいたね。石畳で舗装してあるんだよ、馬車もスピードが出せるんだ。間もなく海が見えてくるよ。アウルム殿は海は見たことあるかい?」

「‥‥‥いや、ないです」


 パッと視界が広がる。

 おぉ、海だ!!

 こちらの世界で海を見るのは初めてだ。

 前世では見た事はもちろんあるが、こちらの海はどこまでも青く綺麗だ。


 海岸近くの道をひたすら馬車が走る。

 陽光が煌めき、海を照らす。

 こんな綺麗な景色は前世でも見たことないなぁ。



「もうすぐ王都に着くからね」


 王都の城壁の門をぐぐるとそこは紛れもなく都会だった。


 王都の街並みはどの建物も高く、日本でいう地方都市と見間違うほど栄えていた。


 王都の公爵邸に到着した。

 王宮かってくらいデカい。でも公爵って王家の近い親戚筋だもんな。当然か。


「お帰りなさいませ」

「「「「お帰りなさいませ」」」」


 執事長みたいな人に合わせてみんなが出迎える。今更ながらすごい人を助けてしまったなぁ。

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