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カミングアウト

 最初に訓練を始めてから3日が経った。

「今日からは実戦形式で鍛えていくぞ。まずはアウルム、お前からだ。好きな武器で攻撃してこい」


 イーリエさんはその巨体に見合った大きな木剣を肩に担いでいる。似合うなぁ‥‥‥


「俺は‥‥‥これかな?」

 短剣サイズの木剣を手に取る。うーん、これでも重いな。


「まぁ、それが無難だろうな。ただその短剣で俺の一撃を受けられると思うか?」

「いいえ、だから全力で避けます」


「そうだな、自分より大きい相手に力で挑んでも勝てない。動きで翻弄しろ。よーし、やってみるぞ」


 イーリエさんの構えに隙がない、さすがは一流の冒険者だっただけの事はある。


「やぁあーーーーーー!」

素早く左右に動いたり、フェイントを入れて隙をつくろうとした。が、全然隙が生まれない。

 逆にイーリエさんのフェイントにこっちが大きく動きを乱される。


「ほれ、こっちから行こうか!」

 鋭い横薙ぎを避けきれずに短剣で受けてしまう。そのまま身体ごと吹き飛ばされる。


「おいおい、大丈夫か?」

「‥‥‥なんとか」


「近接戦闘は魔術師並みだなぁ。なるべく戦闘は避けるようにしろ」

「‥‥‥ですね、ハハ‥‥‥」


 あの力を使えば戦えるだろうけど、やはり人前で使わない方がいいのだろうな。部屋で一人の時は鉄球を手の周りに浮かせて動かすトレーニングみたいな事はしているけど。


 ‥‥‥‥‥‥

 イーリエさんには話しても良いかもしれない。

相談に乗ってくれるかも。


ーーーーーーーーーーーー


 イーリエさんと二人きりになれるタイミングを見計らって話しかけた。


「‥‥‥イーリエさん、ご相談が有るのですが‥‥‥」

「おう! なんだ?」


「驚かないで欲しいんですが‥‥‥俺にはもう一つスキルが有りまして‥‥‥」

 手に載せた鉄球を浮かせて手の周囲、体の周囲を円運動させてみる。

 

「な‥‥‥なんだ、それは!? 魔法か!?」

「こんな魔法、見た事ありますか?」


 鉄球を変形させる。

 円盤状にしてみたり、棒状にしてみたり。


「いや‥‥‥、ないな。こんな魔法は無い!! 他に知ってるやつはいるのか?」

「いえ、見せたのはイーリエさんが初めてです」

 まぁ正確には野盗の連中が初めてだな、もう生きてはいないけど。


「‥‥‥アウルムよ、この能力は人に見せるなよ。人の可能な能力と大きく違う。どんな扱いを受けるかわからない」

 やはりそうなのか。魔法はあるのにな。


「少なくともお前がSランクになるまでは隠しておけ。俺は口外はしない」

「Sランクなら良いんですか?」


「この世界のSランクは特別だからな。ギルド公認のバケモノみたいな扱いだ。ふむ、だが、困ったな‥‥‥」

「え‥‥‥」


 どうしよう、やはり見せるべきじゃなかったのか?


「アウルムよ‥‥‥」

「はい?」


「お前、ソロでやれ‥‥‥」

 はいぃ!?


「考えてもみろ。お前、その能力を隠したまま冒険者活動していくつもりか?」

「‥‥‥まぁ、そのつもりでした。あとは商人とか」


「お前の『ストレージ』を最大限活かすならやはり荷運びだろう。だが、行商というのは危険がつきものだ」

「‥‥‥ですねぇ」


「危険が迫ったとしてその能力を使わずに回避出来るか? ソロならその能力がバレる可能性はずっと低くなる」

「はぁ、まぁ。そうですねぇ」


「お前がその能力で何かしてみろ、あっという間にお前は国の監視対象となるだろう。それくらいお前のその能力は特殊なんだ。まぁSランクになれば問題ないだろうがな」

「ストレージや魔法なんかよりも特殊なんですね‥‥‥」


「そうだ、ストレージは前例があるし魔法なんか結構な人数が使えるしな」

「そうですか‥‥‥」


 はぁ‥‥‥ボッチ旅確定か‥‥‥。

 まぁ、いずれそうなるかもしれないと思っていた。スズとディーンはお似合いだし、一緒に旅しててもお邪魔だったり足を引っ張ったりになりそうだしな‥‥‥。


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