モブとして 少女漫画の世界に転生したようです。何が起こるのかが全く思い出せません//大切なお嬢様の悪役令嬢化を防ぐべく頑張る モブ侍女クレアのお話
「あわわわわ!! ここって ”虹の少女 リリ” の世界だわ!」
王立学園の入学式で講堂に入ろうとしたワタシは突然思い出した。
この講堂の前の階段で、リリが一人でひざを抱えて座つている絵の下敷きを愛用していたのだ。
あの下敷き、どこへ行ったんだろう?
ん?違う違う あの下敷きを使っていたワタシはクレアじゃなくて 前世のワタシ?他の国にいたワタシなのだ。
ん?国? この国クレッシェンド王国って虹リリの舞台だ! なんで 今まで気が付かなかったんだろう?
ワタシの耳に新入生への学長の話なんか全く入って来ない。
"虹の少女リリ”略して『虹リリ』はワタシが小学生の頃に夢中になっていた少女漫画だ。
掲載されていた雑誌は毎月買っていたし、付録も愛用していた。
アニメにもなって 毎週日曜日の朝は学校も無いのにちゃんと起きて見ていた。
王道な シンデレラストーリーだったことは覚えているがあまり細かいことは思い出せない。うーん
来賓の挨拶を聞き流しながらストーリーを思いだす。
孤児のリリは 小さいころに(そうとは知らずに)王子サマに出会っていた。その後、貴族の養女になったリリは王立学園で王子と運命の再会。悪役令嬢グループの数々の嫌がらせにもめげずにゴールインって話だったはず…
何しろ子供の頃の話だから ん?てことは、虹リリ見てた前世のワタシは立派な大人になれたに違い無い。
過去の自分と閉会の挨拶に拍手を送って 入学式は無事に終了した。
**
この世界が『虹リリ』の世界だと思い出したところで、ワタシの生活に変化はない。
在校生に王家の人間はいないから、物語はまだ始まりそうも無いし、うちは王都とはいえ外れだから『虹リリ』の登場人物に遭遇することも無さそうだ。
せいぜい 王子とリリの結婚式に沿道から花を投げたりするくらいだろう。
それよりも せっかくのAクラス入学だから卒業までこのまま成績優秀者で頑張りたい。貴族のマナーも身に着けて、あらゆる意味での良いご縁を手に入れて親孝行するのがワタシの目標なんだからね。
と思っていたのに、 ワタシが二年生の時に父が亡くなった。
王城で働いていた時に、馬の暴走に巻き込まれたのだ。
場所が王城なのは幸いで お見舞金が沢山もらえた。でも一生食っていける程ではない。
学校は二年で退学した 二年生の最後まで在学できたのをありがたいと思おう。
これから先、母と二人どうしよう。
そう思っていたら、Aクラスでの2年間が評価され伯爵家で雇ってもらえることになった。
頑張っただけのことはあった 神様はワタシを見捨てなかった サンキュー神様!
雇ってくれるのは、王都の中心からは少し外れたところにあるネイビー伯爵家、だそうだ。
んんん? ネイビー伯爵家って『虹リリ』に出ていた気がする。リリが養女に入る貴族だっただろうか?
**
ネイビー伯爵家は 王都の中心から少し外れたところに大きな屋敷を構えていた。
言われていたように、通用門のドアを叩くと使用人らしき男性が迎えてくれた。
通用門を入ったところで待つように言われて立っていると、少し離れたヤツデの木の陰から、小さな女の子が出てきた。
濃紺の髪に、青い眼、小さいながらも整った作りの顔なのに、四頭身!! 可愛い 可愛い 可愛いいい!!!
女の子はワタシと目が合うとトコトコと寄って来て 見事な貴族令嬢の礼を見せてくれた。なんという眼福!!!
負けるものか!ワタシも王立学園Aクラスに恥じない返礼をすると 彼女はキャッキャと笑って拍手すると、トコトコとどこかへ歩いて行った。
やがて 現れた執事長とメイド長に連れられて使用人室と思われるところに連れて行かれた。
「クレア あなたには、お嬢様付にメイドになってもらいます」
台所の下働きでも 洗濯女でもどんとこい!と思っていたのだが なんと お嬢様付のメイド!!
「エリザベスお嬢様には今はワタシが付いていますから 当面は見習いとしてワタシについて働いてもらいます」
お嬢様の名前がエリザベスと聞いて眩暈がした、が 踏みとどまった。男爵令嬢なめんなよ
なんか、とっさにでた言葉が意味不明過ぎて、自分が怖い…
はい!!!思い出しましたあ。
悪役令嬢エリザベス ネイビー 濃紺の瞳と濃紺の髪の美貌の悪女!
亡くなった母親の面影を第二王子に重ねて執着するちょっと不憫なお姫様。
愛称は、そうだベスだ!
ワタシの目が泳いだのに不安を感じたのか
「アリス?この娘で本当にいいのかい?」
執事長の言葉に Aクラスの淑女の立ち方と微笑みで対応します。
洗濯女とお嬢様付きメイド、どちらがお給料が良いかは明白です。ここは踏ん張ってメイドの座をゲットです。
「ええ お嬢様と年齢が近い貴族子女、2年間とはいえ王立学園のAクラスに在籍。そんな娘はめったに居ませんからね。これから鍛えれば大丈夫でしょう。」
おお 王立学園の実績が、若さが、チャンスをものにしましたよ お母さま!
「それに なによりお嬢様自身が この子を気に入ったようですからね」
うう あの可愛らしいお嬢様が ワタシを気に入って下さったと?!
こうして ワタシはお嬢様の専用メイド(見習い)として働くようになった。
先輩のアリスさんは厳しいが お嬢様は可愛い。
叱られているワタシを見つけた時は アリスさんの前に小さな手を広げてかばってくれた
「くれあ を おこっちゃ だめ ありす!」
ワタシの為にアリスさんの足元で小さい足を踏ん張って下さる!天使!!!
お母さまが大好きで 毎朝お母さまをみるとぱあっと輝かせる顏の可愛い事ったらない。
女神!?
**
そんなある日 ワタシは『虹リリ』の夢をみた。
美貌の悪女エリザベス・ネイビーがリリに対して何をして そしてどうなるのか?
夢から覚めた時に思ったのは、
ワタシの大事なお嬢様 可愛いベスを悪役令嬢にはしない! ということだ。
『夢見の伯爵令息は初恋の義姉を悪役令嬢にはさせない所存である~知らないのは彼女だけ?』のスピンオフです。本編では現在クレアちゃんは22歳くらいです
★★★★★の下 あたりにリンク張ってありますので 読んでいただければ嬉しいです。
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