08:真実の痕跡
◇ ◇ ◇
一方その頃、静岡県鼎市のとある鍾乳洞。
海岸沿いに位置するこの大きな鍾乳洞の奥で、女性が一人で調べ物をしていた。
「ふんふん。成る程、成る程……確かに混鏡化の形跡があるわね。ねー、そっちはどう?」
「どうもこうも無いよー! 最近やたらと多くなってきてるし、正直たまんないよ! こんなんいらんっちゅーに!」
女性が独り言のように訊いてみるが、誰かが居るワケでも無い。
そう。
居るワケが無いのだが、どういう事か返事だけが返ってきた。
その言葉と同時に何か固く、そして軽いものが落ちた音が鍾乳洞に木霊した。
それは白く短い棒のような物。
それに続くかのように次々と同じような物体が突然現れては落ちる。
中には球体の白い《《何か》》も紛れており、いつしか小さい山が出来る。
「ちょっと、そんな所に投げないでよ、薄気味悪いなぁ。調査の済むまでそっちに置いててよね!」
女性はグロテスクなそれらを見て、引き攣った口で「うへー」と零す。
積まれた白い棒――それは複数の方の遺骨であった。
「えー、だって元々コレってそっちのでしょ? いつまでもこっちに置いとけないって。ご遺族さん達に返してやんなよ、真琴からさ。きっと手柄になるよ? ん~と、そうだなぁ。明日の新聞にさ、「鼎鍾乳洞集団失踪事件の遺骨発見! 事件解決に繋がるか!? 坂本刑事大手柄!」みたいな感じできっと一面占めるって!」
「あ、あのねぇ。もう! 遊びでやってるワケじゃないんだから真面目にやりなさいよッ!」
「えー、そんな怒んなくても。てかもう探す所、探し尽しちゃったんだけどー」
「どうせあんたの事だからレファレンスしたんでしょ?」
一先ず作業を止めた女性もとい真琴は、近くの手頃な岩に腰を下ろして声のする方へ向き直した。
「ありゃ? バレた?」
「まーね。セコい事すんのはあんたの定石だからね。って、ん? 何、あれ」
真琴は鍾乳洞の少し奥に行った所に何か光るモノを見つけた。何かの破片のようだ。
「これは破壊された幻核の破片だね。しかも風化せずに残っているって事は「現代の」幻核。こりゃあ……事件性が増したよ」
「だね。よし、やる事やったし……帰ろうか」
そう言った真琴は近くの水溜りに片足を入れる。
すると見る見るうちに体が水溜りに入って行き、遂にはそこから姿を消した――。