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浸喰のヴェリタス -破滅の未来ー  作者: フィンブル
第7話:闇夜と制裁「N」
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33:複合幻影VSタナトス(5)

 複合幻影(プラティス)のそんな様子を観察しながら、冬真が壇に問う。


「うん、その事なんだけど、詳細情報検索(ハイ・レファレンス)の結果をざっと説明するね!」

詳細情報検索(ハイ・レファレンス)? 普通の情報検索(レファレンス)よりも精度が高いってか?」


「んー、まぁ意味合いは似たようなものかな。情報検索(レファレンス)よりも更に詳細な検索に加え、情報の解析が出来るんだ。ちなみに真琴先輩のは広範囲情報検索(ワイド・レファレンス)といって、様々な項目が検索出来るんだ」


 そこまで言うと壇は言葉を区切り、手帳を出して絵に描いて説明しだそうとする。

こりゃ、話が長くなるな……。

容易に想像が出来た冬真は無言で手帳を彼の胸内ポケットに戻す事にした。

少し残念そうな表情を浮かべていたが、一応大人の壇は笑ってその場を誤魔化して話を続ける。


「あはは、ごめんごめん。とにかく、さっきの検索対象は主に二つ」


 そう言うと壇は人差し指を立てて神妙な表情を浮かべた。


「一つ目は勿論あの複合幻影(プラティス)だ。複合幻影(プラティス)は読んで字の如く、複数の幻影(ファントム)が合わさっている――言わば、人工幻影(ファントム)だ。体の組成構造を情報解析して判ったんだけど、使用された幻影(ファントム)は全部で六体。頭部、胴体部、左右の腕部、左右の脚部の六つだ。それらを無理矢理(・・・・)繋ぎ合わせている――つまり接合部である関節には、相当な負荷が掛かっていると言ってもいい」


「つまり、弱点は関節部、って事?」


 壇に言われて、再び暗い路地の隙間から複合幻影(プラティス)を覗く。

関節部を凝視すると、確かに部材が違うのか色が蒼白では無かった。

遠目からでも微かに見えるが、それでも凝視しなければ分からないだろう。


「御明察ぅ! 流石だね!」

「はぁ、別に……」


 出会った頃の壇は何処に行ったのだろうか?

きっと幸村恭平と同じで、立場が良ければ調子に乗るタイプなのだろう。

面倒なメンバーが増えた、などと思いながら冬真は深々と溜息を吐いた。


 とは言え、正直助かったのも事実だ。

複合幻影(プラティス)の弱点――これが知れただけでも大きな収穫だからだ。


「んじゃ、その作戦で動いてみる――」


 それだけを言い、冬真が路地から出ようとしたのだが――壇がそれを阻む。

いきなり腕を掴まれた冬真は、怪訝な表情を壇へと向けて訊く。


「――って、何? まだ(何かあるのか)?」

「待ってくれ、まだ話は終わっちゃいない! 今さっき得た情報を基に、一つの仮定を立てたんだ!」


 鼻息荒く興奮している壇は、冬真の両肩をしっかりと掴み、絶対に逃がすまいと身構えていた。

コイツ、目がマジだ。

ったく、暑苦しい所まで恭平にそっくりだな。

壇の目を見るなり、流石の冬真も口を引き攣らせていた。

とは言え、ここまでされてしまったら、寧ろ逃げた方が後々の対応が面倒になるのは目に見えている。


「分かった。分かったから、少し離れろ」


 ここは素直に話を聞くしかない、か。

嫌々ながらも数回縦に首を振った冬真は、半ばヤケになりながら壇の手を払い退けた。

逃げる素振りを見せない冬真に安堵した壇は、一度咳払いしてから話の続きを語り出した。


「へへっ、そうこなくちゃな! なんたって、この理論の通りにいけば人を……被害者を生き返らせる事が出来るかも知れないんだから!」


 活き活きとした表情で言い切る壇はともかく……一度は死んだ人間を生き返らせる、か。

彼の言う被害者とは、おそらく守浜(かみのはま)高等学校で起きた「女子高生無差別殺人事件」――尤もそれは一般に公表された事件名であり、JP's(ジプス)での記録簿には「幻影(ファントム)剥離事件」と記述されているが――の女生徒の事を言っているのだろう。


 そんな御伽噺(おとぎばなし)のような荒唐無稽理論、俄かには信じ難いが壇の様子を見る限りでは「言い間違い」や「聞き間違い」では無さそうだ。


「……、……」


 無言で頷き、話を進めるよう催促する。

冬真は小さく相槌を打ちながら、話を続ける壇の推論に耳を傾けた。

けれども興奮しきった壇の言葉は余りにも取り留めの無いモノであった為、冬真は脳内で話を纏める事にする。


「ン……つまり――」


 つまり、壇の理論をもの凄く簡潔化すると……こうなる。

第一に、複合幻影(プラティス)の関節を破壊する。

第二に、バラバラになった幻影(ファントム)達を主人の元に還す。


 その結果、被害者達が生き返る……うーん、なんとも淡泊な説明だ。

あれだけ自信満々に長々と、つらつらと話していたにも関わらず、少々寂しいかな。

冬真が要約すると重要な項目はこの二点に限られてしまった。

そもそもこれは理論なのだろうか?


余りにも漠然且つ無茶苦茶な方法である為、正直なところ信憑性は皆無なのだが。

冬真からしてみれば「有り得ない」の一言で一蹴してしまえるレベルの戯言だった。


「うんうん、良いよ良いよ! やっぱり姉弟! 呑み込みが早いねぇっ!」


 静かに話を聞いていた冬真に、気を良くした壇が静かに拍手を送る。

そもそも姉弟では無く従姉弟なのだが……まぁ今はどうでも良いか。

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