22:世界の仮説(2)
まっすぐ手を挙げたのは華。
知っている事は、得意気に頷いていた彼女であったが、未知な情報になると途端に表情が曇り出す。
とは言え、彼女の理解力が低い事を差し置いても、全員の表情は険しかった。
名護自身、仮説は済んでいるがまだ検証段階との事だが、どうやら九割は検証済みらしい。
冬真でさえ息を呑む事実。
――鏡世界と混鏡世界と現況世界、これらと殺人の関連性についてである。
それは、「誰」が「どこの世界」で「殺した」かにより、「認識出来る人」が限定される、と言うもの。
ここで言う「認識出来る人」とは、第三者《観測者》の事を指している。
例を挙げて説明するならば――こうなるだろう。
「現況世界」で一般人が一般人を殺害すると、第三者(一般人・稀人)は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
それは消える事のない事実。
飽くまでこれが一般的な認識である。
とは言え、人を殺害する事は常軌を逸していると言う事を、JP'sメンバーは名護から強く念押された。
これに倣って、名護は次の仮説を立てた。
日々起こる事件により、実証済みだそうだ。
・仮説一
現実世界で「一般人」が「一般人」を殺害すると、「第三者(一般人・稀人)」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
・仮説二
現実世界で「一般人」が「稀人」を殺害すると、「第三者(一般人・稀人)」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
・仮説三
現実世界で「稀人」が「一般人」を殺害すると、「第三者(一般人・稀人)」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
・仮説四
現実世界で「稀人」が「稀人」を殺害すると――これは実証無し。
仮定として、一般人・稀人共に認識可。
・仮説五
鏡世界で「稀人」が「一般人」を殺害すると、「稀人」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
一般人は出来ない。
・仮説六
鏡世界で「稀人」が「稀人」を殺害すると――これは実証無し。
仮定として、稀人は認識可。一般人は不可。
・仮説七
混鏡世界で「一般人」が「一般人」を殺害すると、「稀人」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。一般人は出来ない。
また、加害者には意識混濁の症状が見られ、最悪の場合は植物人間のようになる。
・仮説八
混鏡世界で「一般人」が「稀人」を殺害すると、「稀人」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。一般人は出来ない。
また仮説七同様に、加害者には意識混濁の症状が見られ、最悪の場合は植物人間のようになる。
・実証九
混鏡世界で「稀人」が「一般人」を殺害すると、「稀人」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
一般者は出来ない。
・実証十
混鏡世界で「稀人」が「稀人」を殺害すると、「稀人」は犯人が相手を殺害した・殺された相手は死亡していると、認識出来る。
一般者は出来ない。