【終幕】線や位置やの物が足り?
気付いたら我は、少女にされていた。
幼き頃に捨てられた、悲哀の赤子……
其れは我であり、同時に"イリア・サタニア"であった。
世界は残酷である、我に再度世界の均衡を取り戻すチャンスをくれたと言っておったが、そんなもの無くここで終わってしまうのかと悩んでいた。
衰弱し我の微量の魔力では命を繋ぎ止めることが出来ないと思った時……
「おやなんだいお前、1人でこんな所に居るとは、捨て子かい?」
優しき魔女に拾われた。
その後、少女は愛情を持って育てられ、そして愛情によって守られた。
少女もまた、愛を持った強かな少女となり、我が城へと辿り着いた。
はじめは、いつ乗っ取り我を死に陥れる勇者とやらの寝首を掻こうかと思ったが、我にそのようなことが出来るわけもなく、ただただ少女の人生を眺めていた……
「と、ここまでが汝の中に居た我の話だ。」
「そんな……私は、私は私を倒すためにここに来たということですか!?」
「否。」
「なら勇者様を!?」
「それも否。」
戸惑う少女、もとい、我を宥める様に説明する。
「話は最後まで聞け、我が望むのは平和と均衡である。」
「そして、お主らが望むのも平和であろう。」
「簡単な事だ、勇者と我に話をするようにお主が仕向けよ、さすればきっと、分かり合えると信じておる。」
魂が、徐々に本体の方に引かれているのを身に染みて感じる。
「我にはもう汝をどうにもする気は無い、我と、お主と、勇者を助けてくれ。」
「は、はい、魔王様!!」
そのまま、我は自身へと戻るように意識の手綱を手放した。
ふむ、そろそろ締めたいから、主導権は返してもらおう。
「さて、そろそろ話は終わったかい?」
「はい、えっと……」
「あー、ボクのことは気にしないでいいよ、ただの狂言回しさ。」
呆気に取られるイリアくんの前に、扉を開く。
「キミが、成すべきことをするといいさ。」
「あ、ありがとうございました!!」
そのまま彼女は勇者の元へと戻りましたとさ。
ふむ、今回の総まとめをさせてもらおうか?
この後彼女らは魔王と対談、イリアは魔王に養子縁組をし、そのまま勇者と婚礼を結ぶとこによってヒトと魔族の平和条約が結ばれた。
その後は、今までは領域を区切って居たのを廃止、そのままヒトや魔族と言った括りも無くなり、平和になったらしい……
45年後の、勇者の死までは……ね?
さてさて、そろそろボクも喉が渇いてきたよ。
なのでこのお話は、ここで区切るとしよう。
停滞した水は淀み、濁る。
均衡を望んだ魔王の行く末は、気まぐれのカミサマしか知らない……