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機会仕掛けの雫  作者: Eurk・CagLier
第二幕:言の葉の道の先
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【2話】志道を進む午後の亡骸

勇者、それは物語でのみ聞いていた存在。

ある時は姫を救うべく森や洞窟を巡り。

またある時は世界を、人類を救うべく、巨悪と立ち向かう存在。

さながら御伽噺の王子様が現れてしまったかのように、私の心は戸惑い、手のひらには力が篭ってしまっていた。



「どうしたんだ、いきなり黙ってしまって?」

「す、すいまひぇん、にゃんでもありません!!」

動揺で声が裏返り、噛んでしまう。

そのまま恥ずかしさで再び黙り込んでしまった私に対して、勇者様は優しく語り掛けてくれる。

「キミの名前を聞いてないが、言いたくないなら無理に言わなくても良いぞッ!!」

「大丈夫です、イリア、イリア・サタニアです!!」

「ふむ、良い名だ!!」

無骨で大きな手が私を少し乱暴に撫でる。

それすらも私には高揚感を与え、昂ってしまう。

「イリア、君には3つ提案したいことがある!!」

「3つですか?」

「まず1つ!! 少し待ってもらうことになるが、俺がここら周囲に破魔方陣(サークレット)を展開する。」

「そうすれば、並大抵の魔物を防いで静かに余生を過ごせるだろうッ!!」

「2つ目!! 王都で暮らす、俺の紹介なら安全な王都で暮らすことも造作ではないからなッ!!」

非常に魅力的な提案を2つもされてしまったが、私の心は3つ目に対する期待で溢れていた、きっと、きっとソレを提案してくれると信じながら、ゆっくりと唾を飲み込む。



「……最後に3つ目!! 君の魔力は魔王討伐の力になりそうだから、嫌じゃなければ是非俺に力を貸してほしい!!」

「わ、私でよろしければ、お供をさせてください!!」















捨て子の私を拾ってくれた母を悼む気持ちもあったのだが、天命に従うかの如く、母の墓を作ると、すぐに勇者様の旅へと同行した。

ある時は魔物すらも息を引き取る死の砂漠。

またある時は時間すら止まったように感じるほどの永久凍土。

様々な場所に足を運び、様々な人、魔物、神霊などに会った。

そして出会い、別れ、様々な道を紡ぎながら、私たちはついに魔王の居城へと辿り着いた。





「なんで……なんで私がここを知っているの……?」

そう、そこは幼き頃夢見た、私の思い出の場所と瓜二つの城だった。

何かがおかしい、そう考えた時、私の中の全ての違和感の鎖が繋がり、全てに気付いてしまった。

「どうしたんだイリア、ここに何が?」

「駄目、勇者様、私から離れて!!」

思わず勇者様から離れる、逃げる、走る。

そして堀を抜けたところに、その不自然な建物があった。

来る時は絶対に無かったそれに逃げ込むと、ソレは私に姿を現した。

「あぁ、懐かしき我が城、懐かしき魔界の空気。」

「あ、貴方は誰ですか!!」

強い語気で聞く私に、ソレは一瞥をくべながら語り掛ける。

「我は汝、そして我は魔王、魔族と人族の均衡を望む者也て……」

「う、嘘だ!!」



「本当だよ。」

今度は闇の中から、私と同年代くらいの女性が現れた。

「久しぶりだね、イリア・サタニアくん」

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