【開幕】白い朝日と水色の空。
これは悲しき姉弟の物語。
運命に踊らされ全てと言って過言では無いものを失った弟は、違えた糸を戻そうとする。
愚者と出るか賢者と出るか……
第一幕:茜色の空
はじまりはじまり……
大切な人を失った時のことは、心を蝕み消えることは無い。
あのわざとらしいくらいの真っ青な空の下。
元気な深緑の木々の生えた山から落ちてきた黒い塊によって、
僕の大好きな、とても優しいお姉ちゃんが死んだ。
白沢 茜、享年14才、土砂崩れに巻き込まれて即死だった。
その日以降、僕の世界から色は失われて行った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんが居なくなってからも20年も頑張ったんだ、そろそろ、そっちに行ってもいいよね……?」
年甲斐なく当時のような言葉を遣い、柵を越えるため足を踏み出そうとする。
「あれは……?」
よく見れば崖際に見覚えのないプレハブ小屋が建っている、今から死ぬ私には関係ないことなのだが、どうもそこが気になって仕方ない。
「……」
緊張で唾を飲みこむ、こんなもの気にせずにさっさと×ぬべきなのだろうが、好奇心が私を駆り立てる。
そして、扉を開くと……
気付いたら私は暗闇にいた。
突然月明かりが雲に隠れ消えてしまったかのように暗い世界が広がる。
だが、私の目の前には暗闇では見えるはずのない姿がはっきり見えた。
「ようこそ、ボクの所へ。」
「だ、誰なんだ君は、ここは一体!?」
あの時死んだ姉と同じ、淡色の赤いセーラー服を着た少女がにこやかに微笑む。
「ここがどこか、ボクが誰かなんて、些末なことはどうでもいいだろう?」
どうでも良さそうに私の疑問を蹴ると、そのまま彼女は続ける。
「白沢 丹波くん、33歳……いや、もう13才か。」
「キミの願い事を叶えるためにここに招待させてもらったよ。」
……
「願い、だと……? そもそも、33歳で合って……!?」
不意に自分の声とは思えない幼さの残る高い声が響く。
「いやいや、ボクから見れば、丹波くんはどこからどうみても13才の少年だよ。」
身体に違和感を感じる、先程少し見下ろした少女が、同じくらいの目線まで下がってくる。
「さて改めて、キミの青臭い願いはなんだい?」
「私は……僕は、もう一度お姉ちゃんに会いたい!」
彼女の背後から光が差し込む。
「しかと聞き遂げたよ、白沢 丹波くん。」
「さて、もう悪夢は醒めて、学校に行く時間だ。」
「今度は、お姉さんを大切にね?」
青黒く滲み蠢く世界に、白い光が差してくる。
そのまま、意識が薄れるような、世界が遠のくように身体が瓦解する。
そうして光と一体になり、僕の意識は失われた。
「起きなきゃ学校に遅刻しちゃうよー?」
目を醒ました時、目の前には死んだはずの……
淡色の赤いセーラー服を着たお姉ちゃんが僕の目の前に居た。