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痴漢

 朝電車に乗ると、痴漢されている人がいた。お尻を誰かに掴まれている。触るってレベルじゃない。鷲掴みにされてる。これはよくないと思って一歩踏み出したところで、僕は違和感に襲われた。


 痴漢の手の向き、おかしくない?


 そう感じてよく観察してみる。痴漢は男、そして痴漢されている方も男だということに気づいた。さらに観察していて、痴漢だと思っていた男は自分の尻を掴んでいるのだと気づいた。周りの人に隠れて腕の先が見えなかったんだ。


 尻がかゆいのかとも思ったけれど、どうもそういう訳ではない。明らかに揉んでいる。ぞわぞわ、と背筋を虫が這うような気味の悪さを感じる。


 ふと横を見ると、隣のサラリーマンもセルフ痴漢の男を見ていた。めちゃくちゃ引いてる。そりゃそうだ。気持ち悪いもの。


 男の方をもう一度見たとき、ちょうど男がこちらを向いて目が合ってしまった。慌てて目を逸らす。こっち来るなという思いと裏腹に、男が僕の方ににじり寄ってきた。


「なあ坊や」


 目の前に立った男の声。男を見ないようにして、口を閉じる。


「俺さあ、女のケツ触ったことねえんだよ。童貞だからな。でも触りてえじゃねえか。んで、自分のケツを女のケツと見立てて触ってたんだ。したらよ、めっちゃいい感じなのよ。それで思いついたんだ。この車両、痴漢がよく出るんだろ? だったら俺が、自分のケツ触ることのよさを教えてやって痴漢を撲滅しようかって考えたわけだ。どうだいい考えだろ?」


 知らねえよ、という言葉が口をついて出そうになった。それでもどうにかこらえて無視する。するとそこで電車が目的地に着いた。慌てて電車を降りる。男は追いかけてこなかった。


 これはよくないなあ。僕は、明日は別の車両で痴漢しようかと考えながら改札へ歩いて行った。

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