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境界

 境界、というものはいたるところにございます。ドアも境界の一つですし、立ち入り禁止の立ち札も境界。特に橋は最たるもので、「あっち」と「こっち」を繋ぐ役割を持っています。同じ世界に見えて、あっちとこっちは別の世界。例えば神社の鳥居前に橋があったりする場合は、その橋は人界と神域を繋いでいるわけです。


 さて、現代は境界が役割を失いつつある時代であります。昔々、夜は街灯もなく真っ暗でした。昼の明るさと比べれば夜はまさしく別世界。人が支配する時間から、物の怪たちが支配する時間に変わった訳です。昼と夜との境界が黄昏時であり、人と物の怪が一番集まる時間。最も危険な時間でした。


 あるいは村の外と内。これもまた別の世界でした。境界を示すものとして道祖神が祭られていました。境界を守るのは神だったわけです。


 境界が必要な理由。それは、境界を設けることで別世界を明視することにあります。境界があるからこそ境界の向こう側には近づかなくなりますし、向こう側に行くときは万全の体勢で向かいます。


 ではでは、境界がなくなるとはどういうことでしょうか。いま、夜はどんどん明るくなり、森は開拓され、村というまとまりは意識されなくなっています。特に夜。人は闇を怖がります。怖いものを滅するためいたるところに明かりが設けられております。ところが。ところがです。境界はあっちの世界とこっちの世界を分けるもの。その境界がなくなった結果、人はあっちの世界への対処法を忘れてしまいました。しかし境界はなくなっても、あっちの世界がなくなったわけではありません。ふとした時に停電などで暗闇が訪れ、あっちの世界が現れたら、必要以上に怖がってしまう。対処法が分からないからです。


 そして境界がなくなったということはあっちの世界からこっちの世界へ来ることも容易くなったということです。科学の進歩により、物の怪たちは淘汰されてしまったと、そう考えているでしょう。しかしそうではない。物の怪たちはいま、私たちのすぐ傍で身を潜めているのです。そして、ふとした時に訪れるあっちの世界に乗じてあなたを襲おうと思っている。そう、あなたも例外ではない。きっとあなたの背後にも、物の怪はいる。ほら、視線を感じるでしょう?

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