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韓国のり少女その1

 学校一の美少女との接点は、ひょんなことから生まれる。僕の場合は鞄に着けているストラップだった。醜悪なデザインの水色タコのストラップ。ゲーセンのクレーンゲームで取れてしまったもの。部活内でやった遊びの罰ゲームで、僕がもらうことになった。まさかそれが好きだなんて人がいるとは。それも、学校一の美少女……。


「ね、それタコマリンだよね!!!」


 はじめ、僕が話しかけられたとは思わなかった。放課後のことだ。部活やら帰宅やらのため皆が慌ただしく動く。椅子の鳴らす音やら誰かの笑い声やら。そんな中、僕のストラップを目ざとく見つけて彼女はやってきた。頬を紅潮させて。


 マドンナに話しかけられ胸を躍らせた僕は、冷や水をぶっかけられた気分になった。よりによってこのストラップがきっかけとは。


「これ、好きなの?」


 タコマリンというらしいストラップを指さし、恐る恐る尋ねた。彼女は大きく頷き、自分の鞄の中を探りだした。瞳がきらきら輝いている。なんだかすごく嫌な予感がする。


「私も持ってるんだ! ほら」


 そう言って彼女が取り出したのは十数体のタコマリン。全部色違い。僕の中のマドンナ像が音を立てて崩れていく。いやだいやだ、彼女のこんな一面見たくない。


 しかしここで僕は、天才的な発想を得てしまった。


 僕にはかねてからの夢がある。人を支配したい。と言っても人類を、じゃない。せいぜい一人か二人でいい。誰かにはっきりわかるほどの影響を与えてみたい。人には言えない僕の夢。


 これはチャンスだ。もしかしたら、学校一の美少女を改造できるかもしれない。僕は試しにこんなことを言ってみた。


「もしよかったら、これあげようか? その代わりひとつ、お願いがあるんだけど」


「え、いいの!!?」


 そう言ってから、彼女は「でも……」と訝しんだ。


「お願いって、なに?」


「韓国のりを食べてほしいんだ。毎食ね」


「……ってどういうこと?」


 訳が分からないという顔をした彼女に、僕は間髪入れず追い打ちをかけた。


「食べてくれたら、これはあげるし、なんなら別のやつを買ってもいい」


「ほんと!!? わかった、食べる!!!」


 即答だった。決まりだ。僕は彼女を改造して見せる。そう決意した。そして始まったのだ。僕の、「学校一の美少女を韓国のり無しでは生きられない体にする大作戦」が。

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