曜日感覚
夏休みの間に、すっかり曜日感覚が狂ってしまった。だだでさえ大学生になってから早起きができなくなったというのに(しかもコロナが原因で家から出なくて済むというダブルパンチ)、オンライン授業すらなくなって生活が完全に夜型にシフトした。このままではマズい、秋学期が始まったら死ぬ、という意識はあるが、ついつい寝るのが遅くなる。
それでも、寝るのがどんどん遅くなったからなのか、一周回って早朝に目が覚めることがある。今日がそうだった。
朝っぱらからゲームをしたってよかった。けれど折角早起きしたのだから、いつもと違うことがしたい。そう思い立って、思い立ったものの何も思いつかず、散歩でもすることにした。
朝の冷たく澄んだ空気は、住宅街でも健在。夏休みということもあって人通りはまだない。閑静な町中をあてもなく歩く。今日は多分、日曜日。というか毎日が日曜日。
日曜日は確か……。家からしばらく歩いたところの十字路の一角、敷地の広い一軒家を訪れた。毎日曜日は陽気なおじさんが挨拶してくれる。
しかし期待していたおじさんはいなかった。一軒家の周りを探索し、おばさんの頭部を見つけた。塀の上にひっそりと置かれている。近づくと、おばさんがじろりと僕を見た。
「やあおばさん。今日はおばさんが挨拶当番?」
「今日は木曜日だからね。悪いわね、今は体の方がゴミ捨てに行ってて、頭しか使えないのよ。ほんとはちゃんとした挨拶したいのだけど」
「大丈夫ですよ。散歩がてら寄っただけですし。お勤めご苦労様です。今日もいい日になりますよう」
そう言って、僕は踵を返した。ちょうど、おばさんの首のない体が帰ってくるのが見えた。
「今日、木曜日だったか」




