表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

何度思い出しても後一杯半は飲めたはず!

遅くなりまして申し訳ございません。


意気揚々と帰宅した私は、手洗いうがいを済ませた後冷蔵庫に入れていたサラのオレンジジュース2Lを取り出し毎度おなじみミミコさん(ウサギのキャラクター)のコップに注ぐ。


ミミコさんが愛らしく(あざとく)寝そべっている透明のプラスチック製コップは、私が小学校二年生の時からの愛用品。今年で19だから、実に11年近く使っていることになる。私の所持品は大体こんな感じで、物持ちがいいとよく言われる。


式が終わってーーーこの言い方はまるで結婚式のようだ、なんつってーーー本来ならお昼を食べなきゃいかんのだが、ダイジョブ、今日は両親は遅くまで帰ってこないぞ、だから思う存分お腹が膨れて()()()入らなくなるくらい飲み明かそうぜ!!オレンジジュースをな!!


だめだ、飲む前からテンションが高い。


...ま、いっか!


因みに、高校卒業したにも関わらずオレンジジュースを愛する私は子供舌か?なんてこの際気にしないキニシナーイ。


「そんじゃ、卒ぎょーおめでとー、私!」


一度空で乾杯をするふりをしてから口元に運ぶ。ゴクリゴクリといい音が鳴る。

ぷっはーと一気飲みしながらぎゅうううっと目を閉じて、ふと耳に入った時計の針の音に心を沈める。


「はぁぁ...割りと短かったなぁ」


目を開けて、おかわりを注いで今度はちょびちょびと飲みながら中学から高校にかけての色々なことを回想して、

「うん、でも終わった、やっとここまで来てしまった、ああぁぁ」

なんて矛盾っぽく思い悩む。



そんなことを続けていたら、いつの間にか日が暮れていて、ご近所さんとこの娘さんが家族連れで外食に行く、とはしゃぐ声が聞こえた。


「もうそんな時間か、ってあぁ...喉乾いた」


机の上でしょんぼりしていたミミコさんを掴みオレンジジュースのパックを揺らす。ああ、もうこんだけかと楽しい時間の終わりを感じ、よしそれじゃあ遠慮無くと敢えて勢い良くコップに注ぐ。


期待に乾ききった喉がコクンと催促してくる。


「いっただっきまーす!」


と口を付けた。


途端に猛烈に吐き気がこみ上げてきた。

なになに、何が起こってんの?!とパニックになりながらもオレンジジュースを吐くなど万死に値する!!と気合でゴッキュンと飲み込んだはいいもののそれが肺に来てゲホッゲホッと掠れた咳が出る。

その咳によるズキンズキンと脈打つ頭痛が全身を覆う熱を呼び起こし、視界が定まらずブンブンと揺れ、たまらず机に突っ伏した。


「はぁっっあぅぅっああああ!!!」


痛い、痛い痛い、い”った”い”の”ぉ”っっ


とぉん〜でぇけぇ〜っ!!!


荒い呼吸で汗がダラダラ止まらず唾液が机をぼたぼた流れ落ちるような、こんな状況でも笑いを忘れない私ってば、なんてお馬鹿なのぉ...?

うっ、ミミコさん、オレンジジュースがァッ!!


気がつけば横たわるミミコさんから溢れ出すオレンジジュースの池が猛烈に悲しかった。


ああ、出来ればあと僅かのオレンジジュース1.5杯分は飲みたかったわ...

最後までこんな自分を自分で笑いながら、私の意識は事切れた。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ