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4.12.孤児院の現状

『転生したら小魚だったけど龍になれるらしいので頑張ります』

発売日です。

どうぞ宜しくお願い致します。


 シーラの説明は、木幕にとって分からないことが多い物だったが、レミがそれを訳してくれたので話の内容はしっかりと理解することができた。

 話を要約するとこうだ。


 此処の土地を国から買い取った貴族は、クレム・ヴァリダリーという名前の人物。

 どういった経緯でこの土地を購入したかは不明だが、その時からこの周辺にいた住民が何処かへと消えていくことが多くなったとの事。

 恐らく立ち退きに応じているのだろうが、彼らの消息を辿る程の力はないので、また何処かに潜んでいるのだろうと考えている。


 クレムはそれなりに権力を持っている様で、多方面に顔を売っているらしく、その力も強いのだという。

 悪い噂もいい噂も聞かない静かな貴族だったらしいので、このスラム街を国から購入したという噂はすぐに広まった。


 目的としては、ここを取り壊して新しい民家や商家を作りたいという考えらしいが、それも全て恵まれている人々に向けての物。

 スラムにいる人々のことは全く考えられていなかった。


 国としても、このような寂れた土地は要らないだろう。

 何とかしてくれるというのであれば、そう宣言した者に土地を任せて改善してくれれば万々歳。

 経済の回せないただの穀潰しなど、居てもいなくても変わらない存在だというのが、この国とクレムの考えであるらしい。


 環境さえ整っていれば、子供たちは様々な分野で才能を開花させる。

 それを摘んでしまうのは、なんとも勿体ない事だ。


「……故郷も似たような場所もあったが、ここまでとはな」

「木幕殿の里は、国は恵まれておったかの? 儂はそりゃもう恵まれた土地じゃった。戦などなかったと言わんばかりの」

「某も良い家柄に産まれた。幼い頃は仕えるべき主君がおり、母上がおり、父上がおった。民を守るが主君の務め。主君を支えるが民の務め。そんな事を父上はよく某に言い聞かせてくれたな。某の家柄は主君の側にあったが、父上はそれでも尚自分たちのことを民であると言っておった」

「良い父と主君を持ったのぉ」


 沖田川は素直にそう思った。

 人には人の考えかたがあり、相違もある。

 守られているのが当たり前、と思っているのは実は主君の方が多かったりする。


 民無くして国の繁栄は無い。

 言ってしまえば、民は兵なのだ。

 国を守るだけの力を有した兵であり、その指揮をするのが主君。

 人間の体で言えば、主君が頭で民が体だ。


 木幕の父は、その事をよくわかっていたのだ。

 恐らく彼は主君の家臣に位置する家系に生まれ育ったのだろう。

 その父もまた、兵を指揮する立場に属していたはずだ。

 そう言った人物は、自分は主君の側にいる特別な存在であると考える者もいる。

 だが彼の父は違ったようだ。


 自分の事を民と言い、主君に守られている存在だという考え。

 そして自分が主君を支えるという覚悟。

 実に天晴。


「ではそなたの父は、困っている民を助けておったか?」

「無論。だが某のいた土地も恵まれていた。その様な者が少ないのは事実。あると言えば、小競り合いに巻き込まれた村の者を受け入れた程度だ。今のこのようなことは経験がないだろう」

「それもそうじゃの」

「え、ちょっと待ってください今の話ってお二方の故郷の話ですか?」

「む? そうであるが……?」

「めっちゃ気になるんですけど」


 レミが食い気味に二人に詰め寄る。

 今までは彼らの故郷の話など聞く事などなかったのだ。


 彼女らにとっては、彼らのいた世界は異世界。

 気になるに決まっている。


「また今度でもよいじゃろ。今はこっちの問題を片付けねばのぉ」

「えー……。ま、それもそっか」


 彼らがいる限りは、話などいくらでも聞ける。

 また今度暇なときに話を聞いてみることにしよう。

 そう思ったレミは、すぐにシーラの方に振り向く。


「で、シーラさん。それからここに冒険者や兵士の人たちが来て立ち退きを要求してくるんですね?」

「そうなりますね。最近は武器を持って来て無理矢理といった感じが……」

「ま、実際儂にも刃を向けてきたしのぉ」


 冒険者や兵士が来たのはこれで四回目ほどだ。

 一度目は説明に来ただけでそれきり何もなかったのだが、巡回に来た兵士がまだここに人がいるという事を確認した途端、今度は強制的に連れ出そうという手段を取り始めた。


 その時は沖田川が撃退したようだったが、それからという物しつこく来るようになったのだとか。

 どうして未だに数で攻めてこないのかは分からない。

 だがそれも時間の問題だろうと、沖田川は踏んでいる。


 シーラは小さく頷き、俯いたまま話始める。


「私もそうですが、この子たちもここ以外行く所なんてありません……。これだけの寒い環境なのです。雨風を凌げる家が無ければ、凍え死んでしまいます……」


 大人であればまだいいだろうが、子供となればそうもいかない。

 この国は夜とても冷え込むのだ。

 あの時のスゥも夜に一日外にいて、あと少しで凍え死んでいたかもしれないのだから。


「えーっと、じゃあ目標としては……。拠点を移すことを第一目標とするって事でいいですかね」

「じゃがそれには金が掛かるのぉ。おまけのこんな国じゃ。ここの者たちに家や土地を売ってくれるとは思えん」

「んー……」


 レミは、その問題に関しては問題ないと断言できる。

 大金が絡んでくる話なのだから、売れない土地はすぐに売ってくれるはずだ。

 だが問題はその後だ。


 スラムにいた者たちが家を購入し、そこに住んでいるという事実があってはすぐに差別の対象にあうだろう。

 だが隠しきるという事も難しい。

 偽っていたのがバレる方が問題になりかねないのだ。


 スラム街出身であるという事を周知させつつ、安定した生活につくにはどうしたらいいか。

 幸いなことに金はある。

 どうせ木幕はこれを使おうと言うと思うので、本当にあぶく銭だと思って使うことにした。


 資金はある。

 だが問題は多い。


「あっ」


 ここで、レミは一つ良い案を思いついた。


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