4.8.孤児院
今日から2021年1月31日まで毎日投稿です。
宜しくお願いします。
一段落して、状況を整理することにする。
話を聞いてみても、スゥは会話ができないのでなかなか要領を得ない。
だが、とりあえずこの子の変える場所だけは把握することができた。
これはレミと宿屋の店主による予想だが、見事当たっていた様だ。
「孤児院……?」
スラム街でこの歳の子供が生き続けるのはとても難しい。
孤児院にいるというのだが妥当なところだった。
何かしらの理由で出てきてしまい、帰れなくなったといった所だろう。
スゥもその話を聞いて頷いていたので、間違いはない。
だが分からないことがある。
「孤児院とはなんだ」
「えーっと、身寄りのない子供たちが集まるところ……って言ったらいいですかね?」
「お客人が責任を取れないというのであれば、そこに帰しておいた方が利口です」
「……某の旅の目的を考えれば、子供を連れていくわけにはいかぬ。そこに帰すことにしよう……」
孤児院に帰したとして、生活が安定するわけではないだろう。
だが、この旅に子供がついてくるのは難しい。
血などという生々しい物も見せたくはないからだ。
「店主。その孤児院の場所は分かるか?」
「スラム街の孤児院となれば、一つしかありません。城から一番離れた、西の城壁にあります」
「できるだけ距離を置きたいってのが見て取れますね」
レミは店主の話を聞いて、そう呟く。
確かに、関係をできるだけ持ちたくない、というそんな考えが見て取れた。
解決する気はないのだろうか。
兎にも角にも、場所は把握できた。
早く連れて行ってあげよう。
恐らく孤児院の仲間たちも心配しているはずだ。
準備を整え、木幕とレミは指定された孤児院へと向かうことになった。
しかし宿を出る前に、店主が声をかけて止める。
「お客人。行くのであれば気を付けてください」
「む? というと?」
「いえ実は……何やら不穏な噂が流れておりまして……」
「噂? 聞いても良いか?」
店主は思い出すそぶりを見せる様に、その噂を説明してくれた。
「その孤児院、何か物凄いのがいるらしいという噂が。それと、こっちは噂ではないのですが、貴族が孤児院の建っている土地を国に許可をもらって買い取ったらしく、その立ち退き作業に冒険者や兵士が使われているようなのです」
「物凄い……?」
「人なのか化け物なのか……。よくわかりませんが、そのせいで立ち退きがなかなか上手くいかないらしいです。孤児院に行くのであれば、どうかお気をつけて」
「うむ、気を付けよう」
それがどんな存在であるか分からないが、どんな妖でも基本は見間違いから始まる物だ。
海坊主だってクジラを化け物だと見間違えて、噂が広がってしまったに過ぎない物。
これも似たようなものかもしれない。
だが警戒しておくに越したことは無いだろう。
しかし、子供のいる所にそんな噂が広がっていること自体おかしな話である。
とんでもない物が居るというのは間違いないのかもしれないが……。
そもそもそんな噂だけで兵士や冒険者が手をこまねくだろうか?
どうにも情報が足りない。
店主が言った後半の事は、恐らく事実だろうが……。
「スゥよ。お主のいた孤児院に、そんな化けものはいたか?」
「……?」
考える素振りをしたが、首を大きく横に振ってそれを否定する。
やはり噂でしかない。
孤児院にいたスゥがそう言うのだ。
化け物などという存在は、居ないのだろう。
とは言え、行ってみれば分かる事だ。
危険かもしれないが、まぁ問題は無いだろう。
この中で、一番不安を募らせているのはレミの方だった。
頑丈に財布を縛って袋に詰め、しっかりと体に固定する。
これで盗られるという事は無いだろう。
大金を持っているので、その責任感は大きい。
できればそんな所にまで足を運びたくないのだ。
「では行くぞ」
「ふぁい……」
しかし、木幕には逆らえないレミなのだった。




