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7.35.防衛準備


 なんだか遠くから凄く大きな音が聞こえてくる。

 おそらく海の方だろう。

 だがここからでは見えない。

 気になるには気になるのだが、こちらのことを優先しておかなければならないので、再び作業に戻る。


「ここ、こんなかんじ~?」

「いや、だから私には分からないんですって」

「あーそうだった……。じゃあ設置場所はここでいいね?」

「それは問題ないと思います」


 レミとテディアンは、魔法による設置型の罠をいくつも仕掛けていた。

 石動の鍛冶場の敷地内だけなので、他の場所には設置できない。


 テディアンはそれなりに魔法を多く使えるらしく、闇と無属性以外の魔法であれば修得している。

 なので、罠を使った魔法も何個か持っていたのだ。

 殺傷能力は低いが、怪我をさせるという目的においてはどれもピカイチなものらしい。

 発動条件は様々であるらしいので、その辺は彼女に勝手に決めてもらうことにする。


 この二日間、結局新しい人員は確保できなかった。

 その理由は……黒い梟が差し押さえている為である。

 黒い梟が何かしらの策を取っていると、調べて来てくれたテディアンが教えてくれた。

 一筋縄ではいかないとは思っていたが、ここまで影響力のある存在だとは思わなかった。


 なのでこうして沢山罠を張って迎え撃つことにしたのだ。

 魔法使いがいるだけで戦況を変えることができるかもしれないので、彼女の存在は本当にありがたい。

 しかし、そのせいで逆に警戒されないだろうかという不安もある。

 テディアンは黒い梟を追っていると言っていた。

 彼らのその事がバレているとしたら、更なる増援が予想される。


 本人は問題ないと言い張っているのだが……心配でしかない。

 本当にもっと人を集めることができなかったのかと考え直してみるが、今更考えたところで状況が好転するわけでもなし。

 だったらある物すべて使って何とか撃退するしかないだろう。

 それに、自分たちも強くなっているのだ。

 あの時みたいに武器を折られるということはないだろう。


「で、それ結局どんな罠なんです?」

「ん? んー……びりってくるやつ、燃えるやつ、刺さるやつとか沢山あるよ」

「うわー」

「私だけで何とかなっちゃうかもねー! 一回撃退したらさすがのギルドも動くでしょ。来るから来てくださいじゃなくて、来たから助けてくださいの方が説得力あるしね~」

「まぁ、それは確かに」


 事件が起きる前に動いて欲しいものではあるが、そう言った証拠はまったく持っていない。

 そういうこともあって、力強い援軍を要請することもできなかったのだ。

 やはり見知らぬ土地ではこういったことがあるから困る。

 頼れる相手がいないというのは難儀なものだ。


 罠を設置し終わったテディアンが立ち上がる。

 手をパンパンと叩いた。


「これでしゅーりょー。あとは来るのを待つだけだね」

「まだ来てくれない方がいいんですけどねー」

「まぁ今日じゃないでしょ。向こうも二日や三日で準備なんてできないだろうし」

「確かに。そう言えば……」


 レミは周囲を見渡す。

 いつもであればこの時間帯くらいには、他の鍛冶場から鉄を打つ音が聞こえるはずなのだが、今日は何も聞こえない。

 休みなのだろうかと首を傾げる。


 しかしそのことをテディアンに聞いてみると、顎に手を添えて何か考え始めてしまった。

 この状況に何か思い当たる節があるのだろうか。


「っ~」

「あ、スゥちゃん。何処行ってたの?」

「っ」


 欠伸をしながら出てきたスゥは、質問されて指をさす。

 その方角は鍛冶場の中だ。

 どうやら文字の練習をしていたらしい。


 まだ拙いが、文字を見ながらであれば文章を作ることができるようにまでなっている。

 後はただ文字を記憶すれば、時間を掛けずに相手に伝えたいことを伝えることができるようになるだろう。

 なんだかその成長が嬉しいなと思いながら、レミはスゥの頭を撫でる。

 スゥはニマニマとして誇らしげにしていた。


「二人とも~。準備してねー」

「……準備?」

「レミちゃんいいところに気が付いたから、意外と早く分かっちゃった」

「と言いますと?」


 テディアンは他の鍛冶場を指さす。

 先ほどレミが音が聞こえないと言っていた鍛冶場だ。


「レミちゃんとスゥちゃんに質問です。暗殺者はどういうタイミングで襲って来るでしょうか」

「……人がいないタイミングとか、夜ですよね?」

「まぁ大体はそんな感じかな。で、ここにこれだけの鍛冶場があるのに鉄を打つ音が今になっても聞こえないということは……人払いがされてる」

「どうやって?」

「それは犯人に聞いてみないと分からないわね。でも偽の依頼書を作り上げれるくらいなんだから、それくらいは造作もないんじゃないかな」


 確かにそうかもしれない。

 だがそんなに早い段階でそんな事が可能なのだろうか。

 もし、本当に黒い梟がこれを成したのであれば……協力した人物はそれなりに権力を持ってるか、大勢の人物を従えている可能性がある。

 それが後者の場合は……考えたくもない。


「で、でも昼ですよ!?」

「あいつらは昼夜でも関係なく襲って来るの。でもこんなに早く……いや、早いんじゃなくて何かに合わせたのかな……? とにかく警戒! すぐにでも来るかもしれないよ!」

「本当にー……?」

「っ!」


 テディアンは杖を、レミは薙刀を、スゥは小太刀を構える。

 まだ敵は現れてはいないが、今から警戒しておかなければ奇襲を受けることになってしまうだろう。


 三人はこれから来る敵に備えて、警戒する。

 そして彼らは、今この場所へと向かっている最中だった。

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