2.2.武器
「魔力が籠められてる剣や弓などのことをマジックウエポンと言います。それには風を操る力だったり、水を操る力だったりと色々あるんですが……強力なマジックウエポンを作れる職人さんは殆どいません」
「で、某の葉隠丸がそうだというのか?」
「はい」
風を操った所でそれが攻撃になるのかと疑問符を浮かべる木幕であったが、考えてみれば刀を振るだけで風が起きるのは凄いことだと納得した。
しかし、木幕の持っている葉隠丸はこの世界で作られたものではなく、木幕の故郷で作られたものだ。
なので魔力が籠められる訳がないのだが、実際にこうして葉を操れている。
レミも魔力を少しだけ感じれるらしく、これは妖刀ではなくマジックウエポンとしての力を有していると確信した。
が、これほどまでに強力なマジックウエポンは世界に数本しかな無いという。
マジックウエポン事態は数多くあるが、精々火を刀身に付ける程度しか出来ないのだとか。
弓であれば火矢程度であり、実用性はあるが大きく活躍できないものであり、制圧力もない。
しかしそれを可能にしたのが国宝級のマジックウエポン。
この世界で有名な国宝級のマジックウエポンである紅蓮剣。
これは大地を火の海にするほどの強大な力が刀身に宿っているのだとされている。
しかし国宝級のマジックウエポンには意志があり、持ち主を選ぶとまで言われているが、実際の所国宝級のマジックウエポンは滅多に表舞台に立つことがないため、それは噂でしかないのだそうだ。
「こいつが国宝級ね……。確かに家宝ではあるがな」
「いやあの……理解してます? その危険性について」
「これが狙われるのだろう? であればそれを退ければ良い話しではないか」
「最悪国と戦うことになりますので……出来るだけその刀の能力は伏せておきましょうね……」
「む。それでは目的が果たせぬな……。わかった。善処しよう」
「いや、確約してください?」
レミとしてはあまり危険な旅にしたくない。
だが木幕はそれを何処か望んでいるような節があるため、レミとしてはそれが非常に不安だった。
とは言っても隠し通せるようなものではないのは事実。
いつかはバレてしまうものだ。
今から気にしすぎるのもどうかと思ったが、取り敢えずは普通に戦うことにする。
木幕としては全ての型の能力を把握しておきたい所ではあったが、敵も居ないし、ここまでレミに言われては少し申し訳ない。
非常に残念ではあるが、木幕はそっと柄から手を離した。
「しかし……その様な武器がいくつもあるのか。興味深いな」
「マジックウエポンの所有数はその国の力を示しているのです。師匠の世界には無かったんですか?」
「米だな」
「こめ?」
「うむ。土地の多さ、田畑の多さだ」
「そ、それだけ……なんか地味ですね」
「何を言う。それだけ民を食わせていくだけの力があるという証拠なのだ。侮ってはならん」
「……ああ!」
何万石の将。
聞いたことがある人は多いのでは無いだろうか。
一石というのは、一年間に一人を養える兵糧の数のことを指す。
それが何百、何千、何万聞けば……その大きさが見えてくるのではないだろうか。
民あらずして君主は成らず、君主無くして民はあらず。
民がいなければ国として成り立たず、まとめ上げる者が居なければ国として成り立たない。
時折勘違いをしている君主がいるが、そいつらの最後は酷く過酷なものばかりだ。
「この世はどうなのだ?」
「んー……いい王様もいますけど……その息子とかはくずが多いです」
「言いよるな」
「事実ですから……」
「して、王とはなんだ?」
「多分君主とか言うのと同じです!」
「左様か」
覚えることが多くて困る。
だが君主のせがれは君主の姿を見てそれを目指していくもの。
だがこの国を納める者たちはそうではないようなきがする。
とは言っても木幕にとってそれは別にどうでも良いこと。
お近づきになる予定もなければつもりもない。
旅人はその日を一日何事無く過ごせればそれだけで良いのだ。
だが木幕は用がなくても、相手側は用がある可能性がある。
それがこの武器の存在。
確かにレミの言う通り、葉隠丸の能力が知られれば木幕は目を付けられてしまう可能性が非常に高い。
木幕としては葉隠丸を絶対に手放したくはないのは勿論、人に触らせるのですら嫌がる。
刀は武士の魂。
それが君主であろうと、己が持つ刀だけは触らせたくないものだ。
「まぁ良いか。レミよ」
「はい?」
「このりざーどまんとやらは食えるのか?」
「えっ?」
倒してしまったのであれば食べてやるのが道理。
命を粗末にするわけにはいかないからだ。
これは見たところトカゲのようではあるし、肉自体は食べれないこともないはず。
とは言っても本心は木幕がただ肉にありつきたいだけではあったが。
「辞めておきましょう」
「む、何故だ」
「リザードマンは臭くて食べれませんし、毒を持っている個体も居ます。普通は火葬して放置ですね」
「そうか……」
「でもこれでギルドへの足がかりが出来ました!」
レミがそう言うとリザードマンに近寄ってから、腰に携えていた剣を抜いて鱗をはぎ始めた。
「なにをしておる。火葬するのでは無かったのか」
「素材を頂くんです」
「素材?」
「リザードマンの鱗は鎧に使われるほど硬いんです。これ売れば路銀に少しは余裕が出ますし、ギルドへの登録もこれがあればすんなりいきますよ!」
確かに路銀は欲しい所ではある。
レミがそう言うのであれば、ここは任せておくとしよう。
だが何故リザードマンを狩って得た素材で、ギルドへの足がかりになるのかが未だよく理解できていなかった。
それを聞いてみると……。
「リザードマンを単身で狩る人なんて居ませんからね! これだけで強さは認められます!」
そんなことだけで一人の男を優遇してもいいのかと思ったが、これもこの世界の理なのだろう。
というか……。
「何故……某がぎるどとやらに入ることになっておるのだろうか……」
この様子だと拒否権もなさそうだ。
だがこの世界を知るためには、そういった物に入るのが良いかも知れない。
弟子とはいえ、この世界の師匠。
妙な関係性になってしまったと少し頭を悩ませることになったが、今暫くは好きにさせることにしよう。
「因みに師匠」
「なんだ」
「剣はいつ教えてくれるんですか?」
「剣は教えぬ。教えるのは槍だ。故に槍を買うまではその辺の棒を回しておけ」
「はい! ……まわす?」
答えるのも面倒くさかったので、木幕はそのまま寝た。
「回すってどういうことですか!? 師匠!?」