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真の海防  作者: 山口多聞
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終盤戦 4

 南アフリカから発進した「峻山」重爆と「旋風」戦闘機による予想外の攻撃によって、マダガスカル島の航空戦力は一気にその半分を完全損失するか、しばらく使い物にならない状態にされてしまった。しかも、敵艦隊攻撃に使うべき爆撃機や攻撃機が大きな打撃を受けたことは致命的であった。


 それでも、防空用の戦闘機の被害は最小限であったから、迎撃戦闘をする分には問題なかった。


 重爆による攻撃の翌日、ついに日英機動艦隊から発進した攻撃機による空襲が始まった。両艦隊から合わせて360機に上る大編隊がマダガスカル島北部から中部に掛けての航空基地や港湾に襲い掛かった。


 マダガスカル島で最大の軍港となっているディエゴスワレスの港は、既に艦船のほとどんが避難済みであったので、残っているのはタグボート等の小艦艇だけであった。また枢軸海軍にとって最早宝石より貴重とも言えるUボートや魚雷艇は頑強なブンカーに入っており、航空攻撃で打撃を与えるのは不可能であった。


 そのため攻撃隊はわずかな小艦船と港湾施設を徹底破壊すると共に、一部の機体は空中投下用の機雷を撒いて一旦引き揚げた。


 一方飛行場に襲い掛かった機体は迎撃に上がった枢軸軍機と壮烈な空中戦へと突入した。独空軍の主力戦闘機はFw190Dで、これに少数のTa152と切り札たるジェット戦闘機のMe262が支援する形であった。


 対して日本側の戦闘機は川西飛行機が開発した最新鋭の「陣風」とイギリス海軍の「コルセア」であった。


 性能的にもパイロットの練度から見ても、何れも伯仲しており、さらにパイロットの腕も甲乙付け難い物であった。Me262はジェット戦闘機として性能的にはレシプロ機を上回ってこそいたが、何分迎撃に出動できたのがたったの10機(そもそも20機しかなかった)では、お話にならなかった。


 しかし、戦闘機の数としてはドイツ側が若干勝っていた。ただしドイツ軍機は攻撃機の相手もしなければならないため、戦闘にどうしても制約があった。


 結果は日英攻撃隊に損害を与えはしたものの、迎撃には失敗しディエゴスワレスの軍港と共に3ヶ所の飛行場が破壊された。さらに枢軸側の戦闘機にも大きな被害が出た。


 対して、日英機動艦隊の攻撃隊にもそれなりの被害が出たが、こちらは後方に控える護衛空母からは多少の補充が可能であるため、全く補充が利かない枢軸空軍よりも多少有利であった。


 枢軸側もただやられていたわけではない。南部の飛行場に退避させていた爆撃機や攻撃機、その護衛戦闘機含めて120機をを発進させるとともに、Uボートを出撃させて海空からの共同攻撃を試みた。


 しかしながら、枢軸攻撃隊は「峻山」の爆撃によって被害を被っていたのに加えて、さらに護衛戦闘機の数が多くなかった。そのため、早々とレーダーで接近を探知されると、各空母より飛び立った150機近い直掩戦闘機の迎撃を受けてしまい、輪陣形外縁部の駆逐艦1隻を沈め、巡洋艦1隻を中破させたのみで終わった。


 そしてここで、枢軸空軍と海軍は致命的なミスを犯してしまう。本来なら上陸部隊を運ぶ輸送船団を集中攻撃する筈が、空軍の攻撃が前方に展開する機動部隊に吸収されてしまったのである。もっと足の長い戦闘機がいれば別であったが、増槽付きとは言え航続力の弱い不十分な数の戦闘機の護衛では、機動部隊のエア・カバーを突破することが出来なかった。


 仮に出来たとしても、今度は輸送船団を護衛する護衛空母の戦闘機を相手にしなければならなかったであろうが。


 そうして空軍との連携が絶望的になったものの、Uボートをはじめとする枢軸潜水艦は果敢な攻撃を開始した。だが彼らの目標である上陸部隊を運ぶ輸送船団には、多数の護衛艦が随伴し、さらに護衛空母から発進した対潜哨戒機も飛び回っていた。


 枢軸潜水艦はそれらに探知されないように、静粛性を最大限に保ちながら、なんとか攻撃の機会を窺った。


 しかしまずイタリア潜水艦の1隻が対潜哨戒機の磁気探知機に発見され、航空爆雷と連合軍の新兵器である対潜用音響探知魚雷の集中攻撃で撃破されてしまった。


 さらに随伴している護衛駆逐艦や海防艦、コルベットの数もかなり多く、これらの警戒網によって攻撃前に3隻が捕捉され、1隻が撃破された。対して護衛艦側の被害は護衛駆逐艦が1隻大破しただけである。


 それでも、歴戦のUボート2隻が何とか懐に飛び込んで戦車輸送艦1隻を撃沈し、大型輸送艦1隻を大破させた。だがこの2隻はその後対潜哨戒機と対潜艦艇による袋叩きに遭い、空しくインド洋の藻屑と消えてしまった。


 そもそも、枢軸潜水艦はこれまでの日英護衛艦艇や潜水艦との激闘で数を大きく減らしており、今回出撃させられたのもたったの9隻に過ぎず、しかもその全ての在来型の旧式艦では大戦果など期待できるはずが無かった。


 結局、最終的に9隻の潜水艦の内生きて戻れたのはエチオピアの軍港に損傷しながら避難したイタリア潜水艦と浮上降伏したフランス潜水艦1隻ずつで、残る7隻は全て沈められてしまった。


 もちろん、彼らが挙げた戦果程度では連合軍の進撃を止めることなど出来るはずが無かった。


 連合軍側の容赦ない攻撃はさらに続いた。


 2日目の空襲では機動部隊に加えて、整備と休養を行った南アフリカからの爆撃隊も攻撃に加わり、マダガスカル島中部から南部に掛けての飛行場や軍事施設を叩きに叩いた。


 この攻撃によって枢軸空軍の稼動機は戦闘機と攻撃機合わせても100機弱まで落ち込んでしまい、その多くも旧式機などであった。この瞬間、制空権は連合軍の物となってしまい、枢軸軍地上部隊、ならびにわずかに残っている水上部隊は常に敵航空機の攻撃に怯えながら行動する羽目に陥った。


 この後連合軍はさらに翌日も空爆を加えた。この攻撃では飛行場に加えて陸上部隊や砲台も空襲の対象となったが、枢軸側も度重なる空襲に対して警戒を強め、擬装を施すなどしていた。また強固なべトンに守られた砲台は航空攻撃では容易に破壊できるものではなく、被害は軽微に留まった。


 さらにその翌日、すなわち戦闘開始4日目、いよいよ上陸部隊上陸の前哨戦となる戦艦部隊による艦砲射撃が開始された。日本側はこの作戦のために「大和」、「武蔵」に加えて高速巡洋戦艦の「奥羽」級4隻を用意していた。さらにイギリス側のKGV級戦艦である「ハウ」と「デューク・オブ・ヨーク」が戦列に加わり、10門の36cm砲を発射して加勢した。


「弾庫が空になるまで撃ちつくせ!補給はいくらでもある!」


 戦艦部隊を率いる神重徳少将の力強い命令の元、18門の46cm砲と36門の36cm砲が上陸予定地点に向けて火を噴いた。

 

 上陸地点となったのは北東部のトアマシナで、首都アンタナナリボへ続く街道が整備されていた。もちろん、枢軸側もここが上陸地点になることは百も承知であったので、沿岸部には強固なべトンで守られた重砲を用意していた。


 しかし、航空爆撃に耐えられるそれらもさすがに46cmと言う大口径砲弾による攻撃は予想外であった。最大でも40cm砲に対する防御しかされていないそれらは、弾着観測機による正確な砲撃によって次々に破壊された。


 ドイツ側の重砲も反撃を行うが、その殆どが30cm以下の砲であったため戦艦に対しては威力不足であった。


 ただし、それでも彼らは奮闘し海岸に接近しすぎた英駆逐艦1隻を撃沈し、日本の軽巡「木曽」(2世で改「阿賀野」級)を大破させている。


 さらに、最後の切り札たる小型潜航艇や魚雷艇による反撃も試みられた。特にドイツ海軍のSボート並びにイタリア魚雷艇は連合軍側の激しい銃砲撃の中を突進し、自由フランス籍の護衛駆逐艦1隻に輸送艦艇を大小5隻撃沈し、さらに7隻に損傷を与えた。


 もっとも、それら魚雷艇は攻撃を成功させても避退中に上空援護の戦闘機に発見されると次々に攻撃を受けた。2機を撃破したものの、魚雷艇の非力な対空兵装ではそこまでが限界で、結局出撃した30隻あまりの魚雷艇で帰還したのはたった8隻に過ぎず、それらも2度と出撃出来なかった。


 また同時に出撃した潜航艇も、輸送船団に接近しようとしたものは次々に発見されて撃沈もしくは撃退された。そのため、最終的な戦果は待ち伏せを行った艇が8隻の艦船に損傷を負わせるに留まった。


 戦闘開始5日目、ついに連合軍の最初の部隊がマダガスカル島へと上陸を開始し、戦闘は陸上戦主体の物へと移行した。

 御意見・御感想お待ちしています。


 それから最近Mixiを始めました。YADAMONで山梨在住と探せば出ると思います。

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