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真の海防  作者: 山口多聞
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第二次世界大戦 12


 ようやくこちらも復帰です。以前ほどは書けませんが、よろしくお願いします。

 北アフリカ上陸作戦の失敗は、アメリカの世論に大きなショックを与えたが、また世界中にも大きな衝撃を与えた。同盟国である日本やイギリスはその圧倒的な物量で被害は被っても、作戦自体は成功させるだろうと予想していたからだ。


 しかしながら、独伊仏の連合軍は見事アメリカ軍に大打撃を与えて撃退している。さらにその撃退の際に新兵器を多数投入したことも連合軍には大きな衝撃であった。


 枢軸軍のこの強さの元凶は何であるのかは、明白であった。それは枢軸軍が中東の豊富な石油を押さえたことと、ソ連との同盟関係の維持であった。


 この内ソ連との同盟関係は、当初ヒトラー総統のソ連嫌いから独ソ開戦が起きるのではという予測が為されていたが、結局の所ヒトラーはナポレオンの二の舞を踏まないよう慎重になったらしく、未だにソ連とは友好関係を保っていた。


 これにより枢軸軍は鉄や食料などをソ連から豊富に供給されていた。またドイツやイタリアからは見返りとしてソ連に艦艇や航空機が供与されていた。


 このドイツやイタリアから供与された艦艇の一部は、ドイツ占領下のスエズ運河を通ってアジア方面と回航されている。結果ソ連太平洋艦隊は少しずつではあるが水上艦隊戦力を整備しつつあった。また航空機もドイツからの直輸入や、技術供与によって高性能な機体をロールアウトしていた。


 これらソ連軍の新戦備が活躍するのはもう少し先のことである。


 一方、大西洋における戦いはまたも激しくなる兆候を見せていた。原因はドイツ海軍の投入した新兵器である。


 開戦以来、英国を始めとする大西洋で活動する連合国商船はUボートと独艦隊に苦汁をなめて来たが、ようやく護衛艦や対潜哨戒機の数も整い、さらにアメリカの参戦のおかげで不足気味だった商船も、損失を生産の方が上回るようになった。


 ところが、それも束の間。Uボートは潜行しながらでも限定的に吸気可能なシュノーケル装置を配備して潜行時間を以前よりも長くし、さらに新型の音響魚雷やFAT魚雷を配備してきた。


 FAT魚雷とは一定の距離を走るとジグザグ航行を行う魚雷で、これまでの魚雷と違って一度かわしてもまた戻ってくるという特徴があった。もちろん、音響魚雷のような相手を追いかけていくほどの精密さはない。それでも、これまでの一度かわしたらそれでお終いとはならないのだから、攻撃される側にとっては厄介なことこの上ない。


 さらにレーダーや逆探の技術も大きく前進したので、航空機や艦艇が近付くと潜ってしまい撃沈出来る率が下がってしまった。


 日本海軍の戦場は喜望峰より東側であったので、幸い潜水艦の多くはどちらかというと旧式で、さらに新兵器の配備も大西洋方面より遅れがちだった。そのため、米英より電子兵器の生産技術で劣る日本海軍も、対等な戦いが出来た。


 しかし米英海軍はそうは行かず、再びUボートの跳梁に頭を悩ませることとなった。特にジブラルタルへ向かう輸送船団の被害は痛かった。


 北アフリカ上陸作戦は失敗したものの、米軍は何とか地中海の入り口であるジブラルタルを占領した。しかしあくまで占領しただけで、基地としてはほとんど機能していなかった。常にスペイン軍の空襲にさらされ、戦力を増強しようにもUボートの攻撃で思うように行かない。


 仕方がないので、米海軍では輸送船による大規模な輸送はあきらめ、平甲板駆逐艦改装の高速輸送艦によるネズミ輸送で細々と物資を運びこんだ。この輸送部隊は枢軸側からロンドン急行だのニューヨーク急行と嘲笑された。


 当然ながら、ちっぽけな駆逐艦クラスの輸送艦であるから運べる物資にも限度がある。特に基地建設に必要不可欠な重機の搬入は遅々として進まなかった。時折搬入できた機械も、枢軸空軍の執拗な空襲で破壊されたり、燃料不足で動けなくったりする事態が頻発した。


 これでは、ジブラルタルを奪回した意味など無いに等しかった。むしろ余計な補給先を増やしただけである。しかしながら、アメリカ政府はとにかくヨーロッパに橋頭堡を建てたことを盛んに宣伝して、国民の士気上げに努めた。


 思わぬ戦況に焦るルーズベルト大統領率いるアメリカ政府は、最新鋭超重爆撃機B29や原子爆弾、新型のジェット戦闘機の開発を急がせると共に、既存の兵器によるUボートやドイツ軍が用いる新兵器への対抗策を急いだ。


 この内米英が逸早く開発したのが、音響魚雷対策の「フィクサー」と呼ばれる妨害兵器である。この頃の音響魚雷は後のような細かい音の聞き分けが出来ず、あくまで大きな音に付いて行くだけであった。そのため、水中に大きな音を出してやればこれを船と間違えてしまう。


 また日本で開発された新兵器も使えるならば積極的に採用された。電子兵器の生産技術で劣る日本であるが、それはあくまで量産技術の話だ。この時代の日本は優秀な飛行機や戦車、軍艦、そして電子兵器を設計し、開発するだけの技術があった。


 ところが、それを大量生産するべき基礎工業力が大きく欠けていた。そのため試作品は高性能だが、量産品となると一気に性能が落ちるという事態があった。例えば飛行機のエンジンの場合、当初はパッキンの生産技術が未成熟なので油漏れが日常的に起きた。


 電子兵器もそうで、無線機は雑音交じりで使い物にならない。レーダーや逆探用のコードも、試作品ではちゃんとした厚いゴムに覆われたものだったが、量産品ではゴムの輸入先の仏印が枢軸占領下であった時は、なんと和紙で覆うという策に出た。こんな物ではとてもではないが戦場では使えない。もちろん、これは直ぐに仏印が連合国側に落ち、さらにイギリスが同盟国として豊富なゴムを送ってくれたので短期間で済んだ。


 日本側にとって連合国の一員となったことは、遅れていた基礎工業力を一気にアップさせるのに役立った。それまで欧米製の旧式工業機器と低い量産能力しか備えていなかった日本の工業界は、一気にアメリカから新型の工業機器を買い取り、生産技術を導入することで大戦後半には大幅な進歩を遂げていた。


 これが後に工業立国日本の原型となるわけだが、それは今回の話とはあまり関係ない。


 そんな日本で開発された画期的な新兵器の中に、MADと呼ばれる磁気探知装置があった。これは海中に潜む潜水艦を磁気によって探知する装置で、日本独自のアイディアによるものであった。


 インド洋で実戦投入されて効果が確認されると、さっそくアメリカとイギリスから購入要請が来た。日本はアメリカからは航空技術、イギリスからは電子・航空技術を供与される見返りとしてMADを輸出した。


 その日本であるが、印度方面からイラン方面へと地上軍を進めたのは前述したが、一方で多数の潜水艦を派遣してペルシャ湾の海上封鎖も行っていた。


 日本海軍の伊号潜は当初艦隊決戦の補助戦力として開発されたが、それが無理と分かった昭和15年ごろから通称破壊戦への投入と、それに併せた戦備の整備が計画された。


 これが最新型の「伊15」型を始めとする乙型潜水艦で、イギリスの技術指導の下防音対策を施した最新鋭艦であった。


 日本海軍潜水艦にはドイツのような音響魚雷こそまだなかったが、その代わり長射程で高速、大威力の酸素魚雷が配備されていた。また射撃指揮装置も多少大きめであったがアメリカ軍の物と遜色ない新型が配備されていた。

 

 これら潜水艦は、ベンガル湾沿岸より紅海を経由してヨーロッパへと向かうタンカーや貨物船を狙い撃ちにした。


 標的の数がそれほど多いわけではなかったので、戦果自体は微々たる物であったが、枢軸軍に大きなプレッシャーを掛けたのは確かであった。


 そしてインド洋の戦いでは、日本側の新たな戦力も投入されていた。

 


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