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真の海防  作者: 山口多聞
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第二次世界大戦 9

 昭和18年6月、米軍はついに大規模な作戦を開始した。竣工したばかりの「エセックス」級空母や「サウスダコタ」級戦艦など、最新鋭艦を多数含む艦隊に守られた輸送船団、さらにそれに乗り込む米英連合6万1千名の兵士たちによる、北アフリカ上陸作戦、「トーチ」であった。またこれと並行してジブラルタル奪回作戦も行われた。


 日本軍が印度方面で開戦直後から枢軸軍と本格的な戦いを繰り返したのに対して、米軍は太平洋上やカリブ海に浮かぶヴィシー・フランス政権下の島々を確保するのに邁進した。


 それによって、枢軸軍が太平洋へ進出する可能性はほとんど0となり、アメリカは背中を気にすることなく(もっとも日本がいるから無防備に出来るわけではない)、大西洋での戦いに専念できるようになった。


 しかしこちらの戦いは、開戦直後からもう攻撃を加えてくるUボートに苦戦した。英日に習って、船団方式の導入や船団警備用の艦隊を急ぎ整備したおかげで、バカスカ一方的に撃沈される事態だけは止まったが、その後もUボートに悩まされた。


 Uボートのおかげでアメリカは空母「レンジャー」、「ロングアイランド」、旧式ながら戦艦「テキサス」、「ニューヨーク」を始めとする艦艇も沈められた。


 艦艇自体は既に旧式や2線級の艦ばかりで、直接の被害は大したものではなかった。しかしながら、それに乗っていた熟練乗員の損失や、さらにやられっ放しという事実は決して見過ごせる問題ではなかった。


 長年ルーズベルトが参戦したいと思っていた第二次世界大戦は、彼の予測を上回る規模での被害をアメリカに強いることとなった。特にイギリスへ派遣した爆撃機部隊は甚大な被害を負った。


 この時期、フランスがヴィシー政権としてドイツの同盟国となっていたことがアメリカにとって大きな問題であった。ヒトラーは味方で戦う限りなら、フランス人にも兵器の生産を許していた。そのため、フランス空軍はようやく配備なった最新鋭のVG33戦闘機を迎撃戦闘に投入した。


 皮肉なことに、ドイツに敗北するまではフランスの兵器生産体系は滅茶苦茶であった。しかしながら、ドイツの同盟国となるとヴィシー政権はドイツの助言の下各種兵器生産体制の大幅な刷新を行い、結果それまで乱雑に生産されていた兵器類は扱いやすい程度に統合された。


 こうしたフランスの新鋭機群はフランスに駐留するドイツ空軍部隊の戦闘機と共に、B17、B25,P38と言ったアメリカ軍機を迎え撃った。


 そのドイツ空軍もMe109に代わって戦闘機の主力となりつつあるFw190のD型やHe280ジェット戦闘機を配備しており、連合国空軍部隊に対して大幅に優位に立っていた。さらにドイツ空軍は既にMe262ジェット戦闘機やHe219夜間戦闘機の生産にも着手しており、ヨーロッパの空は堅固に守られていた。


 そのため出撃するアメリカ軍機が如何に頑丈と名高いといえど、損害が続発するのは必定であった。


 アメリカでは高性能のB29爆撃機やP51・47戦闘機の開発を急ぐと共に、さらにジェット戦闘機の開発も急がれた。


 こうした苦戦はアメリカ国民の士気を著しく落す結果となり、ルーズベルト政権は確実な戦果を求められた。その結果行われたのが「トーチ」作戦であった。本来ならジブラルタル攻略を先行させるべき所を同時に行った所に、アメリカの焦りがあった。


 一方それを主力となって迎撃したのは最近枢軸軍に参戦したスペイン軍とフランス軍であった。


 スペイン軍はついこの間起きたばかりの内戦で国内は大きく興廃していたが、ようやく再建の道筋がついていた。さらに軍備もドイツの手助けによって大きく増強されていた。特に空軍はMe109やHe111のライセンス生産を進めるとともに、Fw190の購入も行っていた。


 また海軍も「カナリア」級重巡に加えて、ドイツから売却されたUボートや駆逐艦を配備して戦力を強化していた。


 フランス軍も空母こそ少なかったが新鋭艦を多数要していた。特にようやく完成した「リシュリュー」級3番艦の「ガスコーニュ」はその象徴であった。


 さらにドイツ軍とイタリア軍もそれぞれ少数ずつではあるがUボートを派遣して迎撃に加わっている。


 英米側は枢軸軍を騙そうとあらゆる手段を講じた。ダブルスパイの活用、囮船団の編成や欺瞞通信の発進である。


 しかしながら、この時期ドイツ側は既にダブルスパイの存在に気づき、さらに暗号も敵軍に入手されて苦戦を強いられた第一次大戦の反省から頻繁に改正し、暗号機器自体も改良を繰り返していた。


 そのため枢軸軍は騙されること無く、英米連合軍を迎撃することとなった。まず迎撃対象となったのが、ジブラルタルに接近してきたジブラルタル攻略軍であった。英米軍の作戦ではジブラルタルを早期に攻略し、北アフリカ上陸軍への補給路を造る予定であった。


 ジブラルタル攻略部隊は、旧式戦艦6隻、護衛空母6隻に守られた輸送船23隻と、海兵隊1万2千名であった。


 しかしこの部隊には、スペイン軍を中心とする空軍部隊が大挙して襲い掛かった。さらにジブラルタルの飛行場からはドイツ空軍機が出撃してきた。


 もちろん、アメリカ軍側も上陸に先立って空襲を実施した。しかしながら、北アフリカ上陸が主目的であったためにそれは1回キリで終わり、充分な成果を出せなかった。


 そして枢軸軍のお返しは強烈だった。スペイン空軍120機に加えて、一端後方に待避して戻ってきたドイツ空軍機150機が上陸艦隊に襲い掛かったのである。しかもドイツ側は最新鋭兵器の誘導爆弾「フリッツX」まで投入した。


 アメリカ軍側も護衛空母搭載の120機のF4Fで迎撃したが、枢軸空軍機に圧倒されてしまい大損害を出した。艦隊も戦艦「アイダホ」が轟沈し、護衛空母2隻が撃沈されるという大被害を負った。海兵隊も上陸前に1000名が戦死するか戦闘不能になった。


 それでも遮二無二上陸し、アメリカ軍はなんとか橋頭堡を設置することには成功した。しかしそこまでであった。


 断続的に空襲を繰り返す枢軸空軍機に加えて、傷ついた艦隊には待っていましたとばかりにスペインとフランスの潜水艦が襲い掛かった。この結果さらに戦艦「ミシシッピ」を失い、海兵隊の損害も鰻登りとなった。


 それでも連合軍ではジブラルタルをなんとしても確保したい一心から、続いて増援部隊として英連邦軍を投入し、なんとか確保だけは出来た。しかし基地機能は再建できず、とにかく枢軸軍に再び使わせないことだけに専念せざるを得なかった。


 ジブラルタル奪回にこそ成功したが、その基地としての価値を連合軍が手に入れるまでには長く、辛い戦いを続ける必要があった。


 一方北アフリカ上陸部隊の方は、英米併せて戦艦8隻、正規空母6隻、軽空母2隻、護衛空母8隻に守られ、絶対に失敗はしないと見られていた。


 しかしながらそれはあまりにも浅はかな予測であった。確かに3年前のような弱小なフランス植民地軍相手であったなら、英米軍は圧倒的な勝利を掴めたであろうが、生憎と現在は全く状況が違っていた。


 フランス植民地軍は兵器の更新を終えていたし、さらにここにもドイツからの派遣軍が駐留していた。ドイツ軍はリビアで最近になって湧き出した石油をなんとしても守る必要があったからだ。


 それはフランス軍も同じであった。フランス海軍はただちに主力艦隊を派遣してこの迎撃に当たった。もちろん、彼らだけでは逆にフルボッコにされる可能性が高かったが、植民地軍に加えてドイツ・イタリア両軍がそれを支援していた。


 英米連合軍は苦しい戦いに入ろうとしていた。



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