始まりの世界
物語には始まりがある
我が世界は、ここから始まった
これは断片に過ぎず、理解をすることはできない
だからこそ、我が世界達に触れて欲しい
いつの日か、識るであろう
西暦2095年
大日本帝国、帝都東京より北に135キロ
行政特区『TCC-AA』
[1日目]
「玲奈、聞いたわね?」
「...馬鹿げてると思うね、私は。 母上だってそう思うでしょ?」
「...まぁ...ね。 でも、確かに理にかなってはいるわ。 」
高梨玲奈、時に25歳
彼女こそが大日本帝国の中枢の1つたる高梨財閥の令嬢にして、財閥根幹の1つたる『タカナシテクノロジクスアーツ』の人工知能技術部長である
「全くだね、母上。 TDDを複数箇所で同時に別方向ベクトルにオーバーロード、結果として現実安定性を崩壊させ、そこをデウスプロジェクトで再構築する。 私の研究がキーだなんて、本当にろくでもない。」
「本当にね。 でも、帝国府が思ったよりも弱気なのは驚いたわ。」
「不安なんだろう? 先の大戦からもう150年。 ずっとドイツ帝国と我が国とで世界を支配してきたけれども、ついに翳りも見えてきた。 今代の両陛下も実のところどちらも小心者なのは別に今に知れた話じゃない。」
「そうかもしれないわね。 さて玲奈、話していても仕方ないわ。 チームを召集しましょう?」
「そうするよ、母上。」
[702日目]
高梨玲奈の日記
『あれから2年近くが過ぎた
デウスプロジェクトは概ね想定通りに進んでいる
並行しているNext-Genプロジェクトの進捗には少々の不安が残るが、これも取り返せないほどではない
大丈夫だ
母上のチームも快調らしい
デウスプロジェクトの建造は私の想定よりも遥かに早く終わりそうだ』
[896日目]
高梨玲奈の日記
『ついにNext-Genプロジェクトの最初の完成系が生まれた
名前はマルヴィナだ
今はまだ彼女が役に立つことはない
それでも、ずっと話し続ける必要がある
いつか来る、その日のために
デウスプロジェクトは予測通り大幅に進捗している
本体の建造が終わったのがやはり大きかっただろう』
[1032日目]
高梨玲奈の日記
『これを始めて...3回目の年明けだ
今年の初日の出も実に美しかった
そして、これを後何度見れるのだろう?
去年末、北京自治区で大規模な暴動が起きた
暴動を指揮していたレジスタンスの拠点に踏み込んだ神光のチームによれば、そこから何らかの大規模兵器構想の計画が見つかったらしい
何事もなければいいが
プロジェクトNext-Genは大詰めだ
もう少しで予定数に達するだろう
それにデウスプロジェクトも調子がいい
あと少しあれば基礎設計が完璧になるはずだ』
[1398日目]
高梨玲奈の日記
『...もう一度、これを見れることを願おう』
[X-DAY]
「母上!」
「玲奈! 準備は!?」
「いつでも! DEMはオンライン、TDDとも連動してる!」
「分かったわ! 後はTDDを...きゃっ!」
「母上! 危ないっ!」
「玲奈! やって! この世界をすく─」
「ははうえぇぇ!!!」
新暦元年、1月1日、0時
旧チャイナ、旧シャンハイ
国家レルフ、首都レルフリア
「さぁ我が親愛なる民達よ。 新たなる時代の幕開けだ。」