第1章 思い出したあの頃…
「あー、彼女できねぇかなー」
俺の名前はタクヤ。大学生になってからのいつもの俺の口癖だった。地元の大学に通い、もう大学2年の秋になるが彼女が欲しいと言いつつも何か行動に移すこともなく(厳密にはコミュ障なだけなのだが…)、なんとなく授業に出て休みの日にはアルバイトをして過ごす、ある意味無駄な時間を過ごしていた。たまに仲の良い女友達と映画を観に行ったりすることはあったが友達としての方がしっくりくると思ったし、おそらく向こうも同じように思っていただろうから何事もなかった。そうしたいつもの何気ない日々に1通のグループメールが届いた。
「来年の1月の成人式の日、B高校の同窓会をします! まだ少し先の話ですが出欠の確認をしたいと思います。決まった人は返信お願いします。詳細は随時連絡します。」
高校の同窓会の幹事からの連絡だった。正直行くかどうか迷った。というか色々と面倒だなと思った。だけど、久しぶりに元クラスメイトにも会えるし、部活の仲間にも会えるし行くのも悪くないなと思い、とりあえず出席することにした。
次の日、大学で仲の良い親友のマサキと一緒にファミレスでご飯を食べているときに同窓会に行くのか気になり聞いてみた。マサキは県外の高校出身で身長は160半ばくらいで俺と同じくらい。地元の彼女と遠距離恋愛中だ。
「そういやさ、マサキは同窓会行くん?」
「行くよー、急にどうした?笑」
「いや、なんとなくや。結構行かない人とか多いみたいやしさ。」
「あー、なるほどね。俺は結構楽しみにしてるよ。かわいい女子来るかもしれんしな笑」
「いやいや、お前彼女いるだろ!なに期待してんだよ笑」
「だって、最近彼女とうまくいってないしさ。もしかしたら同窓会から始まる恋だってあるかもしれんぞ~」
「そんなドラマみたいな話が現実に起こるわけないだろ~」
「いやいや絶対あるって! タクヤは高校の時好きだった人とかいねぇの?」
「高校2のときに一回彼女できたけど、すぐ別れたしそれから気になる人すら…………………………………………いたわ…………笑」
「おるんかい笑」
今の今まで忘れていた。あれは高校3年の冬だった。クラスの最後の席替えでまだ一度も話してこなかった女子と隣になった。その子の名前はユウナちゃんだったのだが、お互いに話すことなんてなかったしほとんど話さなかった。だがユウナちゃんのある行動で俺はなぜか彼女のことが気になってしまった。
それはテストの日だった。クラスのみんなは大体朝早く来て勉強していた。とても真面目な人が多いのが印象的でいつもであれば静かに勉強できていた。だがその日はなぜか騒がしく静かではなかった。俺は騒がしいと思いつつもそのまま何もしなかった。
しかし、ユウナちゃんだけは違った。その日の終礼でいつものように担任の先生が「最後に係から何かあるか?」と言ったときに横にいたユウナちゃんは手を挙げていた。そして、黒板の前に歩いていきこう言った。
「今日の朝の時間、テスト前なのに少し騒がしいと思ったので明日からはみんな静かにしていきませんか?」
それを聞いた瞬間俺はなんて素晴らしい人なんだ!と思ったのと同時に、一人でクラスの前に立って、自分の思っていることを言うことができる人なんだと驚かされた。ユウナちゃんはいつもおとなしい人で自分から人前に立ってそんな発言ができるなんて俺は少しも思っていなかった。そのギャップのせいなのかもしれない…おれはユウナちゃんのことが気になってしまうようになった。
しかし、ユウナちゃんは大学受験があり勉強で忙しくなってしまい俺はタイミングを逃し、そのまま高校を卒業してしまった。