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咲き誇る花々は世界を知らない  作者: 入沢日呂
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5.……桜と黒髪

 肌は回りにいるどの生徒よりも白く、きめ細かい。すっと伸びた鼻立ちに、綺麗な平行二重。その瞳は少したれ目がちだが、そこがとても女性らしい。


 立ち姿も顔と同じくとても背筋正しく美しい。身長は少女と言うのが似合う、どちらかと言えば低い部類だが、纏っているその雰囲気が現実離れしており、オーラというものが桁外れだ。


「――……かわいい」


 その言葉を発したのはどちらだろうか。いや、もしかしたら二人かもしれない。

 あんなに話し込んでいた万折と干奈も、目の前の美しい少女に目を奪われ、言葉を失った。それは二人だけでなく、この会場にいるもの全てがこの坂齋可奈子と言う少女に釘付けになっている。


 美しい背筋のまま、その少女はステージに向かう。

 ステージに上がると、教師と来賓に向かって頭を下げる。そして演台に向かい、手に持っていた原稿をゆっくりと、それまた可奈子という人物を汚さない美しい所作で広げていく。


「桜舞う、穏やかな春の光に包まれた今日の良き日、私達は聖翔学園の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行って頂き、大変感謝しています」


 会場全体に響き渡るその声に、誰もが魅了され聞き入っている。女子しかいない生徒も、うっとりと可奈子を見つめ聞き惚れる。


「今日から私達は高校生です。今まで着ていた中学校の制服とは違い、真新しくまだ馴染んでいない制服に身を包み、これからの毎日に不安もありますが期待と希望で溢れています。三年間と言うものはあっという間です。その尊い毎日を、悔いのないよう一日一日を大切にすごしていきたいと思っています。そしてこれからの毎日を友人と呼べる仲間達と一緒に立派な人となれるように成長していきたいです」


 ステージから離れていてもわかるその美しい容姿。長い睫毛は伏せている瞳を隠す。しかし睫毛の隙間から見える瞳は宝石のように輝いており、その瞳に映る全てが輝いて見える。


 可奈子の美貌を言葉で述べるには、適当な言葉が多すぎる。否、本当に的を得ている言葉がないからこそ、彼女を形容する言葉は複数導き出されるのかもしれない。


 「先生、ならびに来賓の方々、これから優しくときに厳しい指導を宜しくお願い致します。新入生代表、坂齋可奈子」


 原稿を読み終えると、可奈子はまたあの美しい所作で原稿を畳み、綺麗にしまう。

 そしてまた同じように教師と来賓に頭を下げ、ステージを降りる。そのまま元いた自分の席に戻ってくる。


 自身が注目されているのがわかっているのか、可奈子は誰とも目を合わさず自席に着いた。


 万折と干奈は隣に座る可奈子を横目でじっと見つめる。二人は無表情で、何を考えているのかも定かではないが、ただひたすら隣の美少女を横目で見つめ、そこからはあっという間に終わった


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