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咲き誇る花々は世界を知らない  作者: 入沢日呂
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2.……金と銀と豪華

 地元の駅から交通機関で三〇分ほどすれば、高校の最寄り駅。そこからまた高校の専用バスで十五分。そしてやっと高校の敷地内に入ることができる。


遠いと言えば遠いだろうし、近いと言えば近い距離に存在する高校は住宅街からは離れた場所に位置する。外界からの視線を遮断するかの如く、高校の敷地の周りは青々しい木々が生い茂っている。


 今まで桜や花々が彩られていた世界から、緑の木々しかないその敷地内に次々とバスが到着する。五〇名ほどが座れるだろうその大型のバスは、白の車体に『聖翔学園』という文字だけのシンプルなものだ。

 数台のバスが敷地内で停車すると、ゆっくりとバスのドアが開く。暫くするとバスから真新しい制服に身を包んでいる少女達が降りて来る。


 軍服とセーラー服が混ざったような黒を基調とした制服にコバルトブルーのネクタイ。それらをきっちりと着こなし、少女達はバスから降りてすぐの校舎に向かう。その中には万折と奏も含まれており、二人とも駅に向かう途中と同じように話していた。


「はぁ~、ドキドキするね!どんな学校生活になるのかな~。クラスの子とすぐに仲良くなれるかな~。う~んハラハラドキドキの高校生活が今始まるよ~~」


 テンションが先ほどよりあがっているらしき奏は、身振り手振りが激しい。そんな彼女に万折は冷たい視線を送っている。


「はしゃぐのはいいけど、私から少し離れろ。お前と同類に思われたくねぇ」


 そう言うと、万折は奏から離れるように早歩きで校舎に向かった。その後を「待って~」とニヤニヤした表情の奏が追いかける。


「でもさでもさ、受験したときも思ったけど、ここの校舎すっご~く豪華だよね~」


 後ろから付いて来る奏は、校舎を見回しながら話しかける。

視線の先の校舎は、白を基調とし、所々ゴールドで装飾されている。そのコントラストはとても神々しく見えて、外界から遮断されているこの場所を更に神聖なものにしているかのようである。


万折は奏のその言葉に「見た目だけだったりしてな」と嫌味ったらしく言う。その答えに奏は抗議の声を出した。

 そんな話をしながら二人はバスを降りてから数分もせずに校舎に入る。


「……相変わらずこの配色、すげー目が痛くなる」


校舎は外見だけでなく中身も同じような配色をされており、その色に慣れていない万折は何度も瞬きを繰り返す。


「でもホテルみたいでワクワクするよね~。これから毎日こんな綺麗で豪華な学校に通えるって思うと楽しみで仕方ないよ~☆」

「こんなんすぐに慣れてそんな感動もすぐになくなんだろ」


 万折の感動も何もない言葉に奏は「全然わかってな~い!」と抗議した。


「こんな学校そうそう存在しないんだよ~?友達に自慢できる案件でっせ~?」


 ほら見てみてよ!と奏は万折の顔を鷲掴みし、無理やり校舎内を見渡す。万折は顔面を鷲掴みされ、しかも無理やり顔を動かされたせいで、元々不機嫌だった顔が更に眉間に皺が寄り怒りという感情が丸わかりになっている。


「おい、まじでやめろ!首が捥げる!」


 万折の静止も聞かず、奏は色々な方向に万折の顔を向ける。全体をもう見回したというのに、奏はそれでも満足していないようだ。

あそこの配置が凝っているだの、あれは有名なオブジェだの事細かに説明する。最終的に万折が諦め、「すごい」というまでこの攻防は続いていた。

 二人の攻防戦が終わり、奏は満足げに、万折は疲労を表情に表していた。疲労感からか万折がのろのろ歩いていると、奏が腕を引っ張る。


「おっそ~い!そんなんじゃ入学式間に合わないよ~?」

「………テメーが下らない事でギャーギャー騒いだせいだろ」


 万折はボソッと言うが奏には届かなかったようで、ぐいぐいと腕を引っ張られる。万折は成すがまま成させるがままに身を委ね、重い足を動かしながら入学式の会場に向かう。



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