なんてこったい
「少し休むか」
「はい。すみません」
丁度腰掛けれそうな場所があって良かったぜ。
流石にセラを地べたに座らせる訳にはいかないからな。
「よいしょっ・・きゃ!!」
「うぉ!!危ねえ!」
お前!そんな低い場所でひっくり返りそうになるなよ!
驚くべき反射神経の無さ!そしてめちゃくちゃ軽い!
お前の体は羽根で出来てるのか!
「も、申し訳ありません。トロくて・・・」
は!しまった!つい反射的に支えて抱き寄せちまった。
は、離れねぇと。
「ま、まぁ普段から運動してねぇと、そうなるわな。気にすんな」
「・・・・・はい。」
しかし、これはいい機会かもしれないな。
会った時はまともに話も聞かなかったし、ここらでちゃんとセラの話を聞いてみるか。
「セラは、なんで俺と婚約したいんだ?」
「・・・・・やっと聞いてくれましたね?」
う!悪かったって。そうだよな。
俺も、確かに最初から一方的だった。
「私、ギャド様と婚約が決まらなければ、好きでもない方と結婚しなければいけないんです」
それは、俺と結婚しても同じ事では?
よく分からない理由だな?
「セラ嬢は結婚したくないのか?」
「いいえ。でも、どうせするのなら想っている方と結婚したいのです」
「そういう相手が、いるのか?」
ん?じゃあそいつと婚約すればいいんじゃないか?もしかしてセラ、俺が結婚するつもりがない事を知ってるのか?
それで俺に時間稼ぎして欲しいとか?
「はい。います」
なんだよ・・・・そういうことか・・・・。
「・・・?そいつとは、その、婚約出来ないのか?」
そうだよな。そもそも好き好んで俺と婚約したい奴なんているわけねぇ。俺ちょっと自惚れてたか?
「そうですわね。私、やはり間違ってました」
「え?じゃあ・・・・」
「やはり、覚えてないのですね?庭園でした、約束」
は?・・・・庭園?てい・・・え・・・。
"や、約束ですよ?本当に、婚約して下さいね?"
・・・・・・・・・・!?
「貴方が私を忘れている事はわかってました。だから私、今から始めようと思います」
「セラじょ・・・・」
嘘だろ?俺なんで、今まで、すっかり忘れて・・・っていうかセラの唇がや、柔らか・・・・。
「絶対振り向かせます。どんなに勝ち目がなくても最後まで諦めるなと、貴方が教えてくれました」
「セ、セラ・・・・」
そうだよ!なんか、違和感は何となく、あったんだ。
初めて会うはずなのに何故かセラは俺の事よくわかってる感じだったじゃねぇーかよ!当たり前だよ!子供の頃あんなに仲良く過ごしてたんだからな!道理で・・・。
「ごめんなさい。私、こんな事・・・少し、頭を冷やして来ます」
「あ、セラ!ちょっと待て!」
参った・・・・・。
これ完全に俺が悪いやつだ・・・多分あいつ約束をずっと覚えてたんだな・・・俺がすっかり忘れてた約束。
「最低野郎だな、俺」
どうするか。あまり一人にしておくのも危ないしな。
しかし、会ってどう話をすればいいものか・・・。
ん?向こうから歩いて来るのは・・・。
「お?ティファ、お前どこ行ってたんだよ?ヨシュアは?」
「はぐれてしまいました。すみません」
「いや、俺もセラ嬢とはぐれちまったんだ。探しに行くか」
そうだ。
こっちの誤解も解かねぇと。
もし、セラが俺との約束で婚約の話を申し出て来たなら、ちゃんと向きあわねぇと。このタイミングでティファを連れてったらややこしくなるな。
「あ、いや悪りぃ。やっぱティファ先に帰っててくれるか?夕飯の支度もあるだろ?ティファなら一人で帰れるよな?」
「・・・・・・・・構いませんが、いいんですか?」
「おう。こっちから無理言って頼んだのに悪りぃ。今度埋め合わせすっから!」
「いいですよ?気にしないで下さい。じゃあ私、先に山降りてますね?」
ティファにも悪い事しちまったな。
後でいい食材でも持ってってやるか。あとはヨシュアを・・・・。
「きゃあああああ!!」
「!?」
なんだ!叫び声?獣でも出たか?
「ギャド!!先に行くぞ!!セラ嬢足を踏み外したっぽいぞ!!」
「はぁ!?」
マジか!!やっぱり一人で行かせるんじゃなかったぁ!
恐るべき運動音痴!!ヨシュアが変幻出来て助かった。
その方が早いからな!
「す、す、すみません。ヨシュア様・・・」
「ハァーーー。別にいいよ。持ち上げるよ?」
「はい。きゃ!」
・・・・・なんだろうな。
さっきも薄々感じてたんだが、ヨシュアとセラってお似合いなんだよな、背丈の所為だと思うんだが。
ちゃんと、その。・・・・恋人同士に見える。
「・・・・・大丈夫か?」
「は、はい。度々申し訳ありません・・・・・」
「ギャド?怒るなよ。そもそもこんな所に連れて来た俺達が悪い」
は?怒ってねぇぞ?何言ってんだ?
なんだよ二人共その顔は。
「セラ、怪我は?」
「は、はい。お陰様で大丈夫です。枯葉で滑ってしまって。あの、本当に大丈夫ですから」
「山を降りよう。下まで俺が運ぶ」
「「え?」」
もしかしたら今ので足を捻ったかもしれないからな。
念の為だ。
「え?ギャド様?ッキャ!!」
「大人しくしろ。山を降りるまでだ」
「・・・・え?あ、はい」
しかし、本当に困った。
さっきので、しっかり思い出しちまったぞ。
あの庭園でしたセラとの約束と・・・・・。
「ギャド様?まだ、怒ってます?」
「・・・・だから、怒ってねぇ」
俺の・・・・・初恋相手の事をぉぉぉおお!!!