さて、行きますか
「何で次から次へと・・・」
「皆、ギャド様を守ろうと必死ですのね」
刺客が追って来るかと思っていたがマッジンが居るとは思わなかった。アイツナチュラルに菓子食ってやがった。
流石サウジスカル騎士団の騎士を名乗るだけあるわ。
お前ら機動力半端ねぇ。
「久しぶりにお風呂に入って私ツルツルです!ふふふ」
そうだな。でもお前はいつでもすべすべだったぞ?若いって素晴らしいな。そしてそんなに可愛らしく抱き付かれると我慢するのに苦労するんだが?
「・・・・あれ?ギャド様?どうしたんです?」
「ん?何がだ?」
「え?いつもみたいに・・・ガッと来ないんですか?」
あ。そうだな。すまん。ガッと行ってた?
いや、流石に人の屋敷では・・・ちょっとなぁ。
「え?もしかして何もしないんですか?」
「セ、セラ?あのな?」
「せっかく気合いを入れてツヤツヤにしましたのに!!」
う、うん。そうか?それは有難い。ではなく。
ここら辺で、ちゃんと話しておかないとな。
「セラ。今後の事を話しておきたい」
「はい。結局戻るのですか?」
そうだな。
このまま逃げようか少しは考えたけどよ。
どうしてもスッキリしねぇんだよ。それじゃ。
「俺は多分戻ったら殺されると思う」
「そうでしょうね。それだけ皇家の血が濃くマッカローニの家の者となると、邪魔な存在ですものね?普通の考えであれば」
そうなんだ。普通なら・・・な。
「エルハド様が俺に最後の命令を下さったみたいだぜ?マッジンから聞いたんだが、俺をダシにして反乱分子を一掃するらしい。それに手を貸せば俺達を見逃してくれるってさ」
「・・・・・え?それって・・・・」
「セラ。平民になるけどいいか?」
仕事どうすっかなぁ。
俺、騎士以外の仕事した事ねぇからなぁ。不安だ。
「・・・・・つまり。ギャド様は生き残るおつもりなのですか?」
「ああ。本当は、セラと心中しようとか考えてたんだけどな。余りに皆、必死に止めるから、もう諦めようと思う」
なんだよ、その顔。嬉しくなさそうだな?
「で、でも・・・レインハートの方々がお許しにならないのでは?」
「いや、つーか・・・そもそもエルハド様、俺の事なんて歯牙にもかけてねぇよ?俺が望んでねぇのも、ちゃんとわかってるし、あそこの家族とはそれなりに仲が良いんだ俺。だからいきなり殺されるとかはねぇな?ただ周りの奴等は別だ。そいつらを片付ける」
その中に俺の家も含まれている。
「お前と死ねたらそれはそれで幸せだ。でもよ、どうせならもう少し長生きして、出来れば俺達の子供の姿が見てぇな。駄目か?」
「・・・・・・いいえ。私も見たいです」
だよな?セラは俺の後を追ってくれるって言ったけど俺はやっぱりセラのそんな姿は想像出来ねぇんだよ。
だから、もう終わらせる。それでも駄目だったら、その時はその時だ。しょうがない。
「いつも、もう終わる、楽になれるって思うと必ず邪魔が入るんだよ。昔からそうだった。俺は簡単には死なせて貰えないらしいぜ?」
「そうですね。でも、そのお陰で私は今ギャド様とこうして一緒にいます。私はその方々に感謝しています」
そうだな。
こんなに長くセラといられた。感謝しねぇとな?
ペシュメル様、ゴルド、ティファ、マッジン、エルハド様・・・・ササラ。
・・・・みんな。
「ギャド様、貴方はもう一人ではありません。もし、貴方が奈落の底に落ちたとしても、その隣には私がおります。だから、ギャド様の望みを叶えて下さい」
「セラは良いのかよ。セラの望みは・・・」
ずっと俺は逃げ続けて来た。
自分に突きつけられた現実から、父から、ジェラルドから、母から。
そして、セラお前から。
自分の記憶を消してまで。
全て知られてお前に拒絶される、それが恐ろしかった。
・・・・・でも、現実は違う。
「ギャド様。私の願いは。貴方が私の隣で幸せになってくれる事です。私はずっと貴方とあの庭園で過ごした時のように笑いながら過ごしたかった。私が欲しかったのはそれだけです」
俺は知らなかった。
俺は本当に恵まれた人間だったんだな。
お前は俺の過去を知っても俺の全てを受け入れた。
凄えよ。普通そんな事出来ねぇと思うぜ?
「他に必要な物など何もありません。私はもう、手に入れておりますから」
そう。俺もだ。
セラが俺の隣で幸せそうに笑う。
それだけで俺は幸せだった。
そうやって、ずっと二人でいられたらと夢を見た。
何をそんなに恐れていたんだろう。俺は。
「もう。今更恐るものは何も無かったな。きっとエルハド様は全てを知ったんだろう。だから、俺も堂々と暴れられる」
「はい!!もし、それであの街にいられなかったら、今度こそ国外に二人で逃げましょう!逃走プラン立てておきます!!」
「心強い!お前本当に有能だな!俺泣きそうだぜ!」
ここ数日で俺の無能っぷりをセラにとことん知らしめられたからな!!俺はお前に一生、頭上がらねぇぞ!
「それは違います。得意分野が違うだけで私達きっと二人で一つなんです。二人揃えば最強なのです」
そうだな。
そうに違いねぇ!お前は本当に最高の女だな!セラ!