セラさんそれはストーカーと呼ばれます
セラの狂気的な一面が垣間見える。
「こんな所で何をしているんだ?」
「あ、ギャド様」
皆様御機嫌よう。
私はセラ・マキシミリアンと申します。
先日ギャド様に婚約の申し出を断られた残念な令嬢です。はい。
「ちょっと近くまで来たので立ち寄ったのです。もうすぐ父の仕事も終わるかと」
「・・・・そうか。それは足止めして悪かったな?じゃあ俺は帰るわ」
「帰る?ギャド様は宮廷でお暮らしになってるのですよね?まだお帰りになるにはお早いのでは?」
私これでも横の繋がりを広く持っております。
ですから、ギャド様が日々どんな生活を送っているのか実は全て把握しております。
今日はまだお仕事、終わってませんわよね?
「・・・・いいんだよ。明日やるから。じゃあな」
そうですか。
そのまま宿舎に行くのですね?
ギャド様の好みの女性が待つという、あの宿舎へ。
・・・・・・ギャド様って本当に分かりやすいです。
婚約の申し出をこちらから切り出したのもその情報がきっかけでした。
ティファ・マスカーシャ。デズロ様の養女で元カスバールの騎士だったと聞いてます。
まだ、会った事もありませんが、噂によると大層綺麗な方だとか?それに私より背が高くお綺麗で恐らく剣の腕も立つのでしょうね。ギャド様が好みそうなお相手です。
でも・・・・。
「それならいっそ騙して、無理やり責任を取らせようかしら・・・・・・」
は!!いけないですね?ついつい気が抜けて本音が!
だってギャド様そうでもしないと女性とお付き合いなんてしなさそうなんです。恐らく色々お家の事情も絡んでいます。私も同じような立場ですから、よく分かってます。でも!
「約束・・・約束したのに」
ここで諦めてしまったら私のこの7年間はなんだったんでしょう?ずっとずっと我慢して、やっとチャンスが来たんですもの。
「絶対に諦めませんわ」
貴方の事は、なんでも知っています。
貴方がどんな家でどんな幼少期を過ごし、何故騎士団長になったのか。
まさかハイト様に書類を簡単に偽造されて出されるなんて・・・ギャド様うっかりにも程がありますわ。チョロい!その後、面倒でそのまま団長になった事も分かってますから!
ギャド様はなんというか、要領が悪いですよね?
書類の束が日に日に溜まっていくのは、その所為もありますよ?婚約者になってしまえば、お手伝い出来ますのに。
「やり方を変えた方がいいのかしら?でも距離を置いたらそれはそれで忘れられてしまいそうだし・・・・」
それにしても、今日もギャド様カッコ良かった。
小さい頃はもっとお綺麗な感じの方でしたのに年々増えていくあのたくましい筋肉は、なんなんでしょう。いえ、素敵なんですけれど、いつか筋肉に埋もれるのではと、偶に心配になります。余計なお世話ですが・・・。
「差し入れも、きっと受け取っては頂けないでしょうし」
ギャド様、ああ見えて甘い物がとてもお好きなのですよ?
でも、あの宿舎ではお菓子も出るらしく・・・恐らく商店で売ってる物は好まれないでしょうね。
「打つ手なしですね。やはり・・・・」
私、体も小さくて顔もこんなですが、その・・・胸だけは人並み以上に育ってます。全ての栄養をコレに持っていかれたのでは?と、思う程です。世の男性はそういう女性を好むと色々な方が教えてくれました。
最終手段ですが、この手の事もちゃんと勉強しておかないといけませんね。
さっそくギャド様の好みを調べなくては・・・・。
ササラ様お忙しそうでしたけれど少しくらいならお話できるでしょうか?
「あのさぁ?君の娘から物凄い邪なオーラが出てるんだけど?」
「デズロ様。相変わらず暇そうですね?お羨ましい。こちらは貴方が隣の国の山に風穴を開けた後処理に未だ追われているのです。少しは私に協力して頂いても良いのでは?」
「分かった了解!おーい!セラー!」
あら?あちらにいるのはお父様と、デズロ様?
「これはデズロ様。お久しぶりでございます。デズロ様もお仕事ですか?」
「ううん?今ペットの躾を終えて帰る所だよ?途中まで一緒に行く?」
「はい。是非」
ペット?なんでしょう?
デズロ様とは実は何度もお顔を合わせています。
ここだけの話ですが、実は私の中にも少ないながら魔力があるのです。魔力保持者はその度合いを見るために一度宮廷で調べられるのです。
「それにしても、セラもよくやるよねぇ。毎日毎日ギャドを覗きに来て・・・飽きない?」
「飽きないです。あ、あの・・この前教えて頂いた隠し覗きスポット、最高でした。ありがとうございます」
「いえいえー。あ、ノゼスには内緒だよ?流石に半裸の男を覗いてるって知られたら僕でもタダでは済まなそうだからね」
本当にありがとうございます!
あそこは隠れてギャド様を覗くのにとても最適な場所なんです!近すぎず、しかし遠すぎず!はぁ。最高です!
「こんなにギャド様の事、なんでも知っているのに何故側にいられないんでしょうか」
「あはは!そりゃスト・・・相手がその事を知らないからねぇ?」
え?今、何か言いかけませんでしたか?
そうですね。やはりそれもありますものね。
「もっとちゃんとお話が出来ればいいのですが。ここまで避けられてしまいますと・・・・」
「成る程ねぇ?じゃあ強制的に話をしなければ、いけないようにすればいいんじゃない?」
「え?」
「セラさ、明日からギャドの仕事手伝いなよ。僕がなんとかしてあげる」
デ、デズロ様!!なんてお優しいんでしょう!!
やりました!最終手段を使わずに側に近寄れるきっかけを手に入れられそうです!!
「これが上手くまとまればティファに余計なちょっかいかけなくなるしね?(ボソリ)」
え?デズロ様今何か仰いました?