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誤解しないでいただきたい

なんというか。やっぱり俺は・・・馬鹿だったみたいだ。


「バルコニーがあるのですね。ここから街がよく見えます!」


自分の婚約者とはいえ、一人暮らしの男の家に女を連れて来るなんて、下心ありますって言ってるようなもんだろ?

でも、違うからな!決してそんなんではない!


外だと周りの視線が気になってしょうがないんだ。

あの、好奇の目。


「眺めがいいだろ?前の団長の家を譲って貰ったんだ」


「そうだったのですわね・・・確か怪我で引退されましたんでしたっけ?」


「・・・・おう。とても、強くてかっこいい人だった。今はシェスタンブルグ領で暮らしてる。あの人には沢山助けてもらったんだ」


「知ってます。子供の頃何度かギャド様から教えて頂きましたもの。コッソリ剣術を習ってたんですよね?」


そうだ。

あの人はいつだって弱い者の味方だった。


まるで何でもない様に笑いながら俺達を救ってくれた。

俺の心を。


「今のギャド様を見ていれば分かります。とても、素敵な方だったのですね」


「なんだよ、それは・・・・」


「だって、その方が皆さんの親代わりみたいなものだったのでしょう?」


そう。あの騎士団にいる奴等は今でこそあんな感じだけれど皆それぞれに問題を抱えて、あそこに来た奴等が多い。


団長は、どんな事情があろうと剣を握る者は受け入れてくれた。身分なんてあの人には関係なかった。


「いつか、私もお会いしたいです。もし、私の願いが叶う事があればですけれど」


「・・・・・・あー、そうかよ」


胸が痛ぇ。自業自得とはいえ俺はどうしてこんな事してるんだろうな?俺は団長と違って自分の事ばかりだ。いつだって余裕がない。


「今日はありがとうございました!また、来てもいいですか?仕事の後でも構いませんので」


「偶にならな。次はちゃんと菓子とかも用意しておく」


「あはは!いいえ、必要ないです。私はギャド様と二人でお話出来れば幸せですから」


なんでこいつ、そんな真っ直ぐ俺だけを見てるんだろうな。


それなのに、なんで俺こんな不安になってんだ?


さっきだって。明らかに男用の贈り物の包みが誰宛なのか、気になってしょうがないんだよ。聞かないけどな!


「でも、やはり暫く会えないのはとても寂しいです」


「二、三週間の話だ。帰って来たらセラの所に寄る」


「はい、あの・・・ギャド様・・・・」


な、なんだよ。そんな目で見つめて来るなよ。

可愛いなチキショウ!


「・・・・手、繋いでもいいですか?誰もいないので」


・・・・ティファといいセラといい女は皆手を繋ぎたいものなのだろうか?俺はちょっと理解が出来ないんだが?


まぁ、それくらいなら。


「・・・・ん」


だーかーらー!その顔やめろ!直視出来ねぇんだよ!

なんでこんな事でそんな喜ぶかなぁ。


・・・・いや、でも。改めてセラの手にこうやって触れてみると本当に小さくて柔らかいな。


「ギャド様の手凄くゴツゴツしていますね。鍛錬を積んでいる方の手です。ティファ様の手もギャド様ほどでは無いですが、それを感じられました」


そりゃそうだな。

ティファもかなりの鍛錬を積んでる筈だ。

今だって毎朝体力は落ちない程度に運動しているみたいだしな。それに比べてセラの手はやっぱり貴族らしい手をしてるな。すべすべだ。触り心地が良い。


「私、ずっと見てましたから。ギャド様と会えなくなって、あなたの事調べて、どこの家の方か知っていました。まさか名前まで忘れられているとは思いませんでしたが」


そうなんだよなぁ。いくらなんでも忘れすぎじゃねぇかな俺・・・何で・・・・。


「・・・・ギャド様?」


そうだよ・・・・変だ。

いくら俺の頭が悪いにしても、名前まで忘れるなんておかしい。しかも、初恋相手をだぞ?朧げにでも覚えてるもんじゃねぇのかよ?なんで俺おかしいと思わなかった?


「・・・・どうかなさいました?何か、おかしな事でも?」


「い、いや。そろそろ帰るか?親父さんも心配するだろうしな」


「・・・・・はい」


そんなガッカリするなよ。

なんか、俺が悪い事してる気分になる。


「ギャド様、私と離れている間。浮気しないで下さいね?」


・・・・・・・・・・はぁ?

なんで俺が浮気。おかしいだろ?いや、おかしくはないのか?俺はそんな人間じゃねぇよ。お前俺の事ずっと見てたんじゃないのか!そんな度胸ねぇよ。


「お、お前こそな。変な男に言い寄られてフラフラついて行くなよ」


は!俺は何を口走っているんだ!!そして、なんだセラ。

その不満そうな顔は!頬を膨らますな!可愛いんだよ!


「ギャド様が好きだって言ってますのに!!」


うお!こら!抱きつくな!や、柔らか・・・じゃなく!!


「お気を付けて・・・無事にお帰り下さい」


「・・・・・馬鹿力と丈夫なのだけが取り柄だからな。俺は大丈夫だ。心配すんな・・・セラ」


こういう時、普通皆どうするんだろうな。


優しく甘く愛を囁いたりするんだろうな。俺?無理に決まってるだろ?阿呆か。俺はやっぱ阿呆だ。


黙って抱き返してやるので、精一杯だ。

・・・・・それですらままならねぇ!!即刻離れたい!


だってよ!さっきからセラの胸が俺に当たってるんだよ!

何という凶悪な、かんしょ・・・いやいや!!それにすげぇ良い匂いが!俺の理性が!!


「ギャド様・・・く、苦しい」


うお!!悪い!つい力み過ぎて!

よし!帰ろう。さっさと帰ろうな?これ以上一緒にいたらなんか間違いが起きそうで怖ぇ。俺は自分が恐ろしい!!

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