変な気起こして下さい
そういえば婚約してからギャド様と街に出るのは初めてです。こんな日が来るとはちょっと前まで思いませんでした。いわゆる、その・・・デート?きゃあー!!
「で?どこに寄りたいんだ?」
「あ、あそこの男性用品が売っているお店に」
「うお?俺ここには昔来たきりだ。高ぇんだんなぁ。貴族が買うようなのばかりだから・・・」
「はい。私も偶に父の代わりによる程度です。入っても?」
「この服で大丈夫かぁ?」
大丈夫ですよ。
そこまでお堅いお店ではありませんもの。
「おや?これはセラ様。いらっしゃいませ」
「御機嫌よう。頼んでおいた物は出来てますか?」
「はい。今お持ち致します」
本当はギャド様にも何か贈りたいのですけれど、そういうのギャド様はお嫌いそうですし、逆に気を使わせてしまってもいけませんから我慢しております。いつかそんな事を気にせず差し上げたいものを渡す事が出来る関係まで近づきたいです!
「お待たせ致しました。お代は頂いておりますのでこのままお持ち下さい」
「ええ、ありがとう。ギャド様お待たせ致しました」
「ギャド様?お久しぶりでございます。ご活躍は伺っておりますよ。そういえばお二人はご婚約されたとか?おめでとうございます」
「い、いや。・・・ご丁寧にどうも。悪いな、俺は何も買ってないのに」
「いいえ?マッカローニの方々にはご贔屓にして頂いておりますので」
ギャド様、顔色が良くありません。
ここは早く帰った方が良さそうですね。
「ごめんなさい。急いでますのでこれで失礼致します」
「これは、お引止めして申し訳ない。良い一日をお過ごしください」
「ええ。ありがとう」
もしかしてギャド様またお家の方と喧嘩でもされたのでしょうか?私と婚約してからしつこく呼び出されていると調べさせて分かっています。あの家の方々は昔から皇家にたいする執着がありますから。
「私の用事は終わりました。この後どうしましょう?」
「・・・・帰ろう。俺といると目立つからな」
え?もう?まだ街に来たばかりですのに・・・もう、帰ってしまわれるのですか?
暫く会えないのに。
「セラ?」
「じゃ、じゃあ人があまりいない所に移動しませんか?わ、私もっとギャド様と一緒にいたいので・・・・」
「・・・・・そうだな。まだ時間があるし・・俺の家でも行くか」
え!?ギャド様のお家?それはどちらです?実家ではないですよね?では、宮廷内のお家の事ですか?
・・・・きゃあああああああん!
見たい!凄く見たい!!ギャド様がどんな所で生活しているのか、隅から隅までくまなく観察したいです!!
「何も無いけどな、外の眺めがいいんだぜ。宮廷は高い所にあるからな。どうする?」
「ギャド様がお嫌でなければ是非行ってみたいです」
普段なら絶対入れないギャド様のお部屋です!
目に焼けつけて脳内に刻み込まなければ!あとで一人で妄想する為に!!
「ここが俺が借りてる家だ。入ってくれ」
結構素朴な感じのお家ですね。
私結構好きです。ギャド様らしくて。
「お、お邪魔します」
あら、思ったより綺麗です。
あまり帰ってはいないんでしょうか?
「二階に部屋がある。そこでゆっくりしょうぜ」
わーわー!ここがギャド様が暮らしているお家。
あ、もしかして使用人がいるんでしょうか?そうですよね、きっと。中に入ると思ったよりも広いんですもの。
「ここだ」
「ここがギャド様のお部屋ですか?」
「・・・・お前、本当に大丈夫なのか?」
「え?」
ギャド様?なんでそんな怖い顔で私を見下ろしてるんですか?いつの間にか壁に追い詰められています?私。
「そんな簡単に一人暮らしの男の家に入るなよ。お前、俺が変な気を起こしたら逃げらんねぇぞ?」
・・・・・・・え?
「え?ギャド様、変な気を起こしてくれるんですか?」
「エ?」
あ。固まりました。
これはそんな気はないんですね?ガッカリ。
「あ、あの。そもそもギャド様以外に誘われてついて行ったりしませんし、その、私。変な気を起こして欲しいのですけれど?」
「あ。あーあー・・・・お茶を用意するから、ソファーに座って待っててくれ」
逃げました。
自分で聞いておきながら思いっきり話を逸らしましたね?
もう、ギャド様何がしたいのでしょう?もしかして本気で自分が居ない間の事心配なさって?あり得ませんのに。
「・・・もぅ」
でもいいです。
私をこの部屋に入れて頂けただけでも私はとても嬉しいですから。なんだか、このソファー。ギャド様の香りがする。落ち着く。
「ふふ。いい香り」
・・・は!いけないです!
こんな所見られたら変態だと思われてしまいます!!
直ぐに体を起こさないと・・・・。
「セラ?何やってんだ?」
「あ、いえ。寝心地を、確かめてました」
「は?ソファーでなんて寝ないだろ?何を言って・・・」
・・・・・ギャド様?何故固まっているのですか?
何か、あらぬ誤解していません?
「あ、お茶!ありがとうございます!どうぞ座って下さい!」
ギャド様?何故私から少し距離を置いているのですか?
ですから。誤解です!!
「お茶。飲むだけだからな?誤解、すんなよ?」
だからーーー!!違いますーー!!もーー!!