あなた10歳ですよね?
「ギャド様!お待ちしておりました」
「おう。邪魔するぜ」
「ようこそギャド様。今日も約束の時間に遅れてますね」
最近私の姉に婚約者が出来ました。
憎きその相手は ギャド・マッカローニ。
姉が子供の頃のからずっと想いを寄せていた男だ。
おっと失礼、私はマルク・マキシミリアン。
セラの実の弟で今年11歳になる。
将来有望なマキシミリアン家の跡取りだ!エヘン!
「そうだな。いつも遅れて悪い。この前現れた魔物の件でバタバタしててよ」
「いいえ。こちらこそお忙しいのにわざわざお越し頂いてしまい・・・あの、お仕事がお忙しいのでしたら、無理なさらないで下さいませ」
「大丈夫ですよ姉様。ギャド様はこの国最強の騎士ですから。仕事の合間に婚約者に会いに来る事など造作もないでしょう?騎士団長様?」
お前、最初姉様の婚約の申し出を思いっきり断ってきた癖に手のひら返しやがって。
しかもその時、姉様を泣かせやがったんだって?
そんな男が姉様の婚約者などと断じて私は認めない。
お前一度深く反省する為に魔物の餌にでもなって生まれ変わって来るがいい。
「それがそうもいかなくてよ。俺暫く他の領土に調査に出る事になった。まぁそんなに長くはかからないんだが、その間、その、会いに来れなくなる」
「そうなのですね?それは大変です。どうぞ気になさらず。気を付け行ってきて下さい」
「・・・・俺がいない間、何かあったら、宿舎の仲間を頼っていいからな?」
「?はい。なるべくご迷惑をお掛けしないように致します」
・・・・この男。もしや、凄く心配しているのか?
自分が居ない間、姉様が他の男に取られないか。
いや、まさかね?こいつの話は各方面から聞いたけど色恋沙汰には全く興味ないって言ってた。勘違いか。
「あーーーそうじゃなくて・・・もし、無理矢理言い寄られたりしたら・・・」
「ああ!大丈夫です。慣れてますので」
いや、これ勘違いじゃ無さそうだぞ?
なんか姉様を信じられないものを見る目で見てるぞ。
お前、姉様はモテるんだぞ。本当なら好き放題に選べる立場にあるんだからな。そこの所をちゃんと理解するがいい。
「ギャド様にご迷惑をおかけする様な事は致しません。安心して下さい」
姉様。そうじゃないですよ。
この男、貴方の事を心配しているんですよきっと。
貴方の言葉を聞いて安心するどころか余計な心配事を増やしてますね?ザマァねぇや!もっと苦しめ!
「・・・・それで、今日はどうする?」
「あ、じゃあ偶には外に出かけませんか?私買いたい物もありますし」
「いいぜ。じゃあ行こう」
「ちょっと出かけて来るわねマルク。お父様が帰って来たらそう伝えてもらえるかしら?」
「はい!お姉様!わかりました!」
ギャド。お前、私が居ない隙に姉様に変な事したら、ただじゃおかないぞ。力では勝てなくてもお前を再起不能にする方法なんて沢山あるんだからな!
「・・・・・お前の弟からハイトと同じ香りがするんだが。気のせいか?」
「ハイト様と?マルクは子供なので香水などはつけておりませんが?」
「いや、そうじゃなくてよ・・・・」
本当は今すぐにでも婚約を潰してやりたい所だが、姉様が余りにも毎日毎日幸せそうにしているから、そんな気持ちも失せてしまった。
姉様はあんな筋肉しか取り柄がない男の何が良かったんだろう。理解し難い。
姉様ならもっと頭が良くて顔も良くて女性の扱いもスマートにこなせる男と付き合えると思う。寧ろそういう奴しか認めない。あんな男私は認めないぞ!!
「マルクは10歳ですがとても大人びている一面があるんですよ?あんなに愛らしいのに頭も良いなんて、将来が心配なんです。変な女性に引っかからなければ良いのですが」
「そうだな。でもお前は弟の事よりまず自分の心配をした方がいいと思うぜ?」
「私ですか?私はギャド様だけですので」
「・・・・・・そ、うかよ」
大の大人が顔真っ赤にしてんじゃねぇよ!
一体なんの話してるんだ!!
ぐぅぅ!!やはり私も行くと言えば良かった。
帰って来たら絶対に姉から聞き出さなければ!!
それで帰って来た姉の様子を見に行ったんだ。そうしたら。
「ぐすん」
「姉様?泣いてるの?」
「あ、マルク。今帰ったわ。泣いてなんてないわよ?」
嘘だ!目が少し腫れている。あの男のぉぉ!一度ならず二度までも姉様を泣かすとは!
「分かってはいても暫く会えないのが寂しくて。我儘を言ってしまったのよ。私が勝手に感極まって・・・・」
「何か酷い事を言われたんですか?」
「言われたって、いうか・・・・」
姉様?なんだろう。なんかモジモジしてるけど。
凄く、しょうもない予感がする。
「どうしよう。私、初めてギャド様に抱きしめられたの!それも結構長く!もう今日着てるドレス勿体無くて洗えないわ!!くううううううう!!!」
あ。そうなの?それは良かったね姉様。心配して損した。
これは暫くは安心かなぁ。
ギャドってヘタレだって聞くし今回のハグだってどうせ姉様に押し切られたんだろうし。私の見込み違いだったかな?一生姉様とその距離を保って貰いたいものだ。
「流石ヘタレ団長。その程度か(ボソリ)」
「え?マルク何か言った?」
「いいえ?姉様が幸せそうで何よりです!」