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白い鳥  作者: いしい 皐
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第四話

主要人物が続々と登場してきます。

この回で、話の展開が面白くなってくると思います。

今回から、出て来る、ジェリドっていうキャラは私のお気に入りです。

穴を掘っただけの、何の補強もない通路をひとりの男が、ブツブツと独り言を呟きながら、心細そうに歩いていた。

男と言っても、外見は「砂漠の民」に似ており、ただ、身体が彼女達より、細長く全身が真っ黒く、羽根はやはり、細長く、黒く濁った橙色をしている。

「ほんと、ひと使いが荒いったらないぜ

さっき寝たばかりなのによう」

と、手に松明を持って、灯の気の全くない通路を、奥へ奥へと下って行く。

「ヒィッ!

な、なんだ。水滴か。脅かしやがるぜ」

「砂漠の民」の住居は、この世界の北東に広がる砂漠にあるオアシスの中心にある島を利用して作られた天然の要塞である。

その地下は周りが砂漠とは思えないほど、ひんやりしている。穴を掘っただけの地下通路の天井からは、時折、地下水が染み出てくる。

「あー、やだやだ!

誰だよ、」

こんな深く穴掘りやがったのは!

だいたい、連れに行くのが「山岳の民」の女じゃねぇ…これが「平原の民」の可愛い娘ちゃんだったらなぁ

きっと、「山岳の民」の女なんて、きっと不細工に決まってらぁ。オレの感は当たるんだぜぇ」

と、独り言を言いながら歩いて行くと、通路が二つに別れていた。

一つは地下水を汲むために地中深く掘られたもので、もう一つは地下牢に続いている。彼は迷わず、地下牢のある右側の通路へ曲がって行った。

「やっと、着いたぜ

えーと、「山岳の民」の女はっと」

彼は手に持っている松明で周囲を照らし、目的の場所を探した。松明をゆっくりと、右へ左へと、動かしながら前へ進んで行くと、何か白いものがぼんやりと浮き上がって見えるところ があるのに 彼は気が付いた。

前に進むにつれ、その白い ものがだんだんはっきり見えて来ると、それが探していた「山岳の民」の女の閉じ込めてある牢屋だということがわかり、白く見えたのは女の着ている衣装だと分かった。

「あんたかい、「山岳の民」の女は?」

彼はぶっきらぼうにききながら、松明を牢屋の中にかざすと、息を飲んだ。

牢屋の中の少女は通路側を向いて、両手を膝の上に乗せて、きちんと正座をしていた。

凛ともたげた華奢な顔を覆っている柔らかな髪は、松明の光をあびて銀色に、キラキラと輝いていた。何ものにも動ぜぬと言いたげな威厳に満ちた少女のブルーグレーの瞳は、光の加減か、やはり銀色に光って見えた。

まるで、月の光を集めて作られた人形のようであった。

「そうです」

と、少女は彼のほうを向いて答えた。

「こりゃぁ、驚きだ!

オレァー、「山岳の民」の女が、こんなに綺麗だとは思わなかったぜ」

さっきまでの態度とは、打って変わって、

「オレの名は、ジェリドってんだ。

見りゃぁ分かるだろうが、オレァ、本当は「砂漠の民」じゃねぇんだぜ。冬で仕方なく、ここに置いてもらっているんだ。

狩人なんだぜ。この一人前の男がよぉ、女共にこき使われ、情けねーよなぁ。

けどよ、仕方ないんだよ。冬で獲物がねぇからら…」

「わかっています。

ジェリド、あなたがここに来たのは、女王エリア様に仰せつかって、私を迎えに来たのでしょう。

さあ、私を女王エリア様のところへ案内して下さい。

私も女王 エリア様にお話があります」

こういうと、少女は立ち上がった。


陽はすっかり降ち、遠くから海鳴りが聞こえる。小高い岩山の上に「山岳の民」が崇拝している神、アーシアの神殿が造られている。

「砂漠の民」に襲われ、傷ついた「山岳の民」の

人々は一時、神殿に避難してきていた。

「水の民」の少年マリオンは広間に上がる階段に腰を下ろして、うつらうつらしていた。

広間には、たくさんの怪我人が寝かされている。さっきまで、マリオンは怪我人の手当てを手伝っていて、今やっと、一息ついたところである。

そんな、夢うつつの中で、マリオンは不思議な幻影を見た。

一人の白い少女が暗闇の中を小さなともし火の後を歩いている姿だ。そこがマリオンには何処だか分からないが、その少女がファルミリアだということは分かった。

マリオンはその少女の顔をよく見てみたいと思ったが、そんな思いとは反対に、彼は誰かの呼び声に目を覚まさなければならなかった。

「おい、そんな所でうたた寝していると、風邪を引くぞ!」

と、いう声にマリオンはハッと目を覚ました。

ジギアスは両親が全くの無傷で無事だったのを知って、すっかり元気になっていた。

「向こうに、巫女様たちが、何か温かいものを用意してくれたんだ。寝るんなら、それを食ってからにしろよ」

その言葉にマリオンは、今朝から何も食べてないのに気がついた。

何と慌ただしい一日だったのであろう。

彼が昨日まで過ごしてきた日々と比べると、今日一日で、まるで一年の月日が過ぎ去ったようであった。

マリオンは腰を上げると、ジギアスと、怪我人が寝かされている広間を人を避けながら通り抜け、廊下のずっと奥へ歩いて行った。

何処も怪我人が寝かされていたり、無傷でも、さっきの脱出騒ぎと怪我人の世話で、皆、疲れてぐったりと眠っていた。その間を数人の巫女たちが様子を見て回っている。

マリオンはその巫女たちの白い衣を見て、さっき見た夢は、きっと、この巫女たちで、自分が寝ぼけて、あんなことを感じたのに違いないと思った。

二人が着いたのは、神殿の一角に造られた炊事場だった。炊事場といっても大変広く造られていて、マリオン達「水の民」の家と比べると、家一軒分ぐらいの広さはあるだろう。

そこには既に、エクセリオンが思慮深げに腕を組んで、腰を下ろして休んでいた。目を閉じ、眠っているようにも見える。

一人の巫女が二人に席へ座るように言い、温かいものを用意してくれた。

その時、エクセリオンは目を開き、一言いった。

「私は、ファルミリア様を助けに行こうと思う」

突然のその言葉にマリオンも、ジギアスも、そして、食事を運ん来た巫女さえも、一瞬動きが止まった。そして、この沈黙を破ったのは、意外な人物であった。

「いいえ、エクセリオン!

その必要はありません」

その言葉に、そこにいた人達は皆、その声の主の方へ向いた。

「姉のことは諦めて下さい。

エクセリオン、あなたには、今、行わなければならないことがあるはずです」

そこには、父に抱かれた一人の少女が青ざめた顔で、エクセリオンを見つめていた。


ウィンドルの腕に抱かれた少女の側にエクセリオンは駆け寄った。

「エンディエッタ!

動いたりして…」

少女は苦痛に耐えながら続けた。

「私はもうすぐ、アーシアのもとに参ります。……エクセリオン……いっときの感情に流されないで……あなたは、あなただけのものではありません。……民のことを考えて……許せない気持ちは、わかります……でも……今は……私たちの民のことをどうすべきか、考えて……父と共に……」

少女はこう言うと、父の腕の中に力なく顔を埋めた。

「エンディエッタ……」

力なくエクセリオンは少女の名を呼んだ。

「まだ、死ぬと決まったわけではない」

こう言い残すと、ウィンドルは少女を抱いて行ってしまった。

エンディエッタに付き添っていた女が付け加えた。

「どうしても、お話が出来るうちにと……。

お止めしたのですが……」

と、涙を流しながら言った。

再び、部屋に沈黙が訪れた。

手付かずのうちに、皿のものはすっかり冷めてしまっている。

エクセリオンは不動のまま、ウィンドルの去ったほうを見つめていた。

読んでくださり、ありがとうございます。

どんどん、書けている分は、投稿していきたいと思います。

次からは謎の民 砂漠の民の女王エリアも出てきます。話も盛り上がってくるでしょう!

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