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白い鳥  作者: いしい 皐
3/4

第三話

話がやっと進展してきました。

話に重要なキャラも、続々と出てきました。

きっと、話も、盛り上がってくるでしょう。

よろしくです


太陽の傾いて行った方向は、高い崖があり、反対側は人の丈の何倍もある草が立ち枯れている草原である。

あたりはだいぶ薄暗くなってきた。

エクセリオンはジギアスにマリオンを「水の民」の村まで送るように命じると、最後に残っていた甲虫に乗って自分の村へ向かった。

村まではだいぶある。

沈む陽が、名残り惜しむように放つ光がやけに赤い。

エクセリオンはふと、さっき会った「水の民」の少年マリオンの髪も夕日のように赤かったな、と思った。

「エンディエッタ様の怪我、御心配ですね」

と、甲虫を駆っていた男が、話しかけてきた。「他の者に比べれば、大したことないはずだ。」

と、エクセリオンは動揺を隠そうと、強く言った。しかし、命に別状はないとはいえ、愛する花嫁に傷を負わせてしまったことには違いなかった。

「それよりも、ファルミリア様の方が心配だ」

平静を装おうとしたが、声は震え、顔色は悪かった。しかし、速足で歩く甲虫の激しい揺れと、赤すぎるほど赤い夕日が、若い指導者を庇っていた。


赤かった…。

空も、海も、砂浜も…。

目に映るものは皆、赤かった。

まるで、そこにあるもの全てを焼き尽くそうとでもいうように――、夕日が赤く染めていた。

しかし、マリオンには、それが夕日の所為だけでないことが直ぐに分かった。

血だ。

そこには、「水の民」の幾人もの死体と、「砂漠の民」の死体が横たわっていた。

マリオンとジギアスは茫然として、暫く鳥から降りたまま、動こうとしなかった。

「そんなバカな!」

と、叫ぶなり、マリオンは自分の家へ向かって、一気に走り出した。その途中、何度も足が縺れそうになった。

家の中は酷い荒れようだった。

やはり、不意を突かれたのだろう。

しかし、外に倒れていた「水の民」以外は何処にも人の姿は見えなかった。たぶん、皆、海の中へ逃げたのだろう。

食物貯蔵庫は完全に空になっていた。「砂漠の民」が全て持ち去ったに違いない。

「マリオン…」

ジギアスは後の言葉が続かなかった。

「ああ、ジギアス…

皆、海へ逃げたみたいだよ」

と、無理に笑って見せようとしたが、直ぐに俯いてしまった。

「お前は、追いかけて行くのか?」

「え⁉︎いや…

皆の行った所を探すなんて不可能だよ。それより、ここで、皆が戻って来るのを待った方がいい」

「水の民」の男達が、女達の住む海底へ行っているわけがないと、マリオンは考えた。それは陸へ上がった男達はいつまでも、海底で暮すことが出来ないし、第一、今の時期、女達の住む近くの海は激しく荒れている。近付こうとするだけでも、自殺行為である。

「無茶だよ!

これから寒さがもっと厳しくなるんだぜ!

それに食べ物だって、みんな砂漠の民に持って行かれたんだろ!」

「……」

「取り敢えず、オレん家に来いよ」

ジギアスは、力なく立っているマリオンを鳥に乗せようと抱えるようにして、家を出た。

「弔ってあげなくちゃ…」

マリオンは、ジギアスの手を振り払った。

「手伝ってくれ」

彼は、亡骸の傍らに立つとジギアスに言った。

「海へかえしてあげなくちゃ」

「え?

墓を掘るんじゃないのか?」

マリオンは、ジギアスの意外な質問を、不思議そうに暫く彼の顔を見つめてから、答えた。

「僕達には、墓というものはないんだ。「水の民」は海で生まれ、海で育ち、海にかえる。

生命の光が消えた僕ら「水の民」の亡骸は海にかえす。そして、海流は亡骸を魂と共に、アーシアのもとへ連れて行ってくれる。

どの流れもひとつ、アーシアのもと…生命の源、母なるアーシア…

ただ、僕達は祈る。彼らが新しい生命を再び得ることを…」

「オレも祈るよ。

無事、アーシア神のところへ着けるように…」

二人は暮れて行く陽の光の中で、祈り続けた。


エクセリオン達を乗せた甲虫が立ち枯れた草の生えている丘を下れば、村へ着くという所まで来たとき、前から、甲虫がゆっくりとこちらへ向かって来るのが見えた。

近づくにつれ甲虫の様子がおかしい事に気付き、エクセリオンと、甲虫を駆っている男は息を飲んだ。

大小さまざまな甲虫に、先に村へ向かったものたちより、ずっと多くの怪我人が乗っており、女、子供、老人達まで混じっていた。

「まさか!

村も襲われたのでは!」

エクセリオンの心に不安が過った。

そんな彼の心を鞭打つかのように、薄暗闇の中から、太い男の声がした。

「エクセリオン!

何をグズグズしている!早く甲虫の向きを変えて、神殿へ引返せ!

夜になってしまうぞ」

見ると、肩幅の広い、身体のがっちりとした、白髪の男が先頭の甲虫の上から、エクセリオンを見ていた。

「叔父上!」

エクセリオンは、その男、ウィンドル-エディホークの顔を見ると、少し緊張が緩んだ。そのためか、左足の傷が急に酷く痛み出した。

彼の乗った甲虫は向きをゆっくりと変えると再びもと来た道を引き返して行った。


「やばいよ、急がなくちゃ!」

ジギアスは鳥を操りながら、独り言を言った。

陽は完全に山の端に隠れてしまい、あたりは薄闇に包まれている。

「なんだろう?あの光の列は…」

ジギアスの後に乗っていたマリオンは神殿のある山の方向へ、ゆっくりと移動している光の列を見付けた。

どうやら、「山岳の民」の村に続く道から、ずっと移動しているらしい。

ジギアスは鳥を光の列に近づけて行った。

近づくとそれは大小さまざまな甲虫に乗って、神殿へ向かって移動して行く「山岳の民」の人達が灯した松明の火だった。

その灯に照らし出されて、大勢の人が怪我をしているのが見えた。

「あんな、小さな子まで…」

マリオンはさっきまでの悲しみよりも、怒りが心の底から湧き上がってくるのを感じた。

「父ちゃーん」

「母ちゃーん」

急にジギアスは甲虫の列の上空を両親を探して無茶苦茶に飛び始めた。

「うわぁ!」

マリオンは振り落とされないように、必死に捕まった。

穏やかな丘陵地帯の中でも、最も平坦なところに造られた、「山岳の民」の村から丘を二つ越えたところにある小高い岩山を利用して、大昔、世界が乱れていたときに、築いた城の中にアーシア神殿は建てられ、今では、巫女や神官など、アーシア神に仕える者しか住んでいない。

だが、神殿に着くまで、ジギアスの両親の生死は分からなかった。

そして、エクセリオンもまた、愛するエンディエッタが生死の境を彷徨っているのを知らなかった。

作品を入力するのにも、だいぶ慣れてきました。

面白いのか、どうか、わかりませんが、よかったらしい、感想などお聞かせください。

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