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白い鳥  作者: いしい 皐
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第一話

この作品を書くきっかけを作ってくれた友達に感謝


夜が明けるには、まだだいぶ間があった。

少年は目を覚ますと、直ぐに寝床から抜け出し、防寒用の毛織物を羽織った。

部屋の中を見ると、寝床の中では他の兄弟達は良く眠っている。

そっと部屋を抜け出し、少年は外へ出た。空を見上げると、蒼紺の闇の中で星は冴えざえとした光を投げかけている。その中で遠くに黒い山のシルエットがぼんやりと浮かび上がっている。

少年は海辺にある家を後に白い息を吐きなら、友達との約束の場所へ走り始めた。

海辺から森へ入る坂道の両側は切り立った崖になっている。

少年は少し立ち止まって上を見上げ、また急いで走り始めた。

坂道を登り終わると、少年は大きく肩で白い息を吐きなら、崖の上海の方へ歩いて行った。

波のない静かな海が冷たく輝く夜空の星の光をキラキラと弾き返している。浜へ寄せて返す波の音さえも聞こえない


水の民であるこの少年の名は、マリオン-レダンという。

「水の民」 こう呼ばれる彼らは 普通、女、子供は海の中で生活し、成人男子は陸上で生活している。

男女共に 肋骨のあたりに左右三つづつ六つの水中で呼吸をするための気孔がある。男女の姿はそれぞれ異なっていて、男は二本の足を持っているが、女は二本の足の代わりに魚の尾を持っている。

「水の民」の子供達は海の中で生まれ、母親のもとで育つ。しかし、男の子は幼年期を過ぎ、少年期に入ると、次第に海上へ出るようになる。そして、成人と認められる頃になると、母親から離れ、父親と陸上で暮らすようになるのである。


マリオンはぼんやりと海を見つめながら、初めて海の上に出たときのことを思い出していた。


小さな冒険であった。

好奇心の強いマリオンは、母親の目を盗んで、兄達から聞いていた、まだ見ぬ海の上の世界を目指した。

深遠の闇の中を上へ上へと向かう泳いで行った。このまま闇の世界が終わらないのではないかという不安と、まだ見ぬ世界への期待とで、マリオンの心はいっぱいであった。

どのくらい泳いだのであろうか。ふと、キラリと前方で何かが光ったのが見えた。マリオンは、それに向かって勢いよく泳ぎ出した。

「ああ‼︎」

海の外へ出た瞬間、マリオンの口から声が漏れた。

海の中から見えたのは月の光だった。

蒼紺の闇の中にぽっかりと真丸の月が浮かんでいた。その青い光が夜空にうっすらと山々のシルエットを浮かび上がらせていた。


そんなことを思い出しているうちに、次第に東の空が明るくなって、闇の中に柔らかな乳色の光を放ちながら、太陽が海から昇ってきた。その光が闇に隠されていた少年の顔を浮かび上がらせた。

少年の髪は朝の陽の光をあびて、まるで真紅の炎のように、キラキラと輝いていた。よく陽に焼けた卵型の顔と澄んだ黒い大きな瞳は少年を年齢よりも幾分幼く見せていた。

マリオンは冬の朝の寒さに身体を少し震わせて、独り言を言った。

「遅いなぁ、ジギアス」

少しむくれながら、マリオンはジギアス達「山岳の民」の村が多くなる山岳地帯の方を見た。しかし、冬で草が枯れているとはいえ、人の丈の数十倍にもなる草は、少年の視野を完全に狭めてしまい、まだ明けきらぬ蒼い空と僅かな星が見えるだけだった。

マリオンが一つ二つと星が消えていく空を眺めていると、不意に黒いものが頭上を掠めた。

「うわぁ!」

よろめきながら、その黒いものを目で追うと、巨大な鳥が朝陽の中を軽快に飛んで行った。その鳥は冬の冷たい風の吹く海上高く飛んで行くと、大きく旋回して戻ってきた。

鳥が近づくにつれ、それに誰が乗っているのかが判り、何か叫んでるのが聞こえる。

「おーい!マリオン!」

ジギアスであった。

彼ら「山岳 の民」は別名「有翼の一族」とも呼ばれている。

その昔、彼ら「山岳の民」は鳥の様に空を自由に飛ぶことが出来たという。しかし、彼らが火を使うことを覚え、村を作り、家畜を飼育し、自らの翼を使わず、鳥に乗るようになると、彼らの持って生まれた能力は次第に消えて行き、今では、その名残が背中に美しく残っているだけであった。

しかし、それでも彼ら「山岳の民」は飛ぶということを忘れはしなかった。この世界で最も上手か鳥を使い、最も速く空を飛ぶのは「山岳の民」であった。


「遅いじゃないか。約束の時間は夜明け前だよ」

地上に降り立った鳥の背丈は、マリオンのそれよりも半分は大きいように思われた。ジギアスは、そんな巨鳥の肩から身軽に飛び降りると、マリオンの方へ歩いて来た。

マリオンはジギアスに鳥に乗せてもらう約束をしていたのである。

「せっかく、父さんの目を盗んで来たのに…

冬で漁が無くても、結構忙しいんだよ」

「悪い悪い。

そう怒るなよ。どうしても、抜けられなかったんだよ」

と、彼はマリオンに理由を話し始めた。

「実は、エクセリオン様とエンディエッタ様の結婚式の準備の手伝いをずっと夜明け前からやらされていたんだ」


エクセリオン-エディホークは「山岳の民」の首長、ウインドル-エディホークの弟の息子であり、エンディエッタはウインドルの娘である。エンディエッタには双生児の姉が一人いるだけで、他に兄弟はいない。そのためエクセリオンは次期首長として、期待されているのである。

この二人がいよいよ結婚するのである。

「山岳の民」の人々は長い冬が終わり、春が来たような騒ぎである。

その上、エンディエッタの姉ファルミリアは、この世界共通の空と海の総合の神「アーシア」の巫女姫なのである。

ファルミリアは巫女として、神殿に物心つく前から上がって以来、一度も人々の前に姿を見せたことがなかった。その彼女が妹の結婚式で初めて人々の前に姿を現し、二人に祝福を与えるのである。


「本当に!

本当にファルミリア様がいらっしゃるのか!」

マリオンは頬を蒸気させて言った。

海で生まれ、海と共に生きていく「水の民」にとって、海の神でもあるアーシア神は絶対であり、その神に仕える巫女は崇拝の的なのである。それがたとえ他の種族の巫女であろうと。


「な、なぁ、ジギアス

ファルミリア様を一目だけでも、見ること出来ないかなぁ」

「無茶言うなよ」

「そうだよな」

「まぁ、遠くからなら、見れないこともないけどな」

と、ジギアスはマリオンの顔を覗き込みながら、ニヤリと笑った。

頑張って書いてみました。

これから 本題に入って行きます。

二人の冒険を広い心で見守って下さい。

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