9.生徒会のいつものやつ
シュトゥルムの号令で全員立上がる。
5人が一斉に私の方を向いた。
「メリー、俺が結婚してやってもいいぞ。」
「今夜は特に月が綺麗ですね、メリー。」
「たくさんの女の子がいるけど、結婚したいのはメリーだけだよ。」
「俺と一緒に海のそばで暮らそう、メリー。」
「あなたの不安は私が全て取り除きますよ、メリー。」
口々に私への求婚。
答えはずっと昔から同じである。
「気持ちは嬉しいのですが、私が好きなのはフックス・L・ボーゲン様なので、お答え出来かねます!!!」
「知ってた!!!!!!」
これは生徒会恒例行事、求婚である。
生徒会はそこそこのメンバーが集まっている。
毎日のように求婚をされるようなものばかりだ。
それにいちいち答えるのが面倒だと考えた全員は、
この求婚行事を思いついた。
毎週最初の生徒会の日に、唯一の女子である私に全員が求婚するのである。
これでこの5人はメリーを取り合っていると思われ、
急激にお見合いを減らすことに成功したのである。
メリーも同じく、ここまでの人材たちに求婚されているということで下級の貴族からの見合いや求婚はほとんど無くなった。
win-winである。
中等部から始めたことであるから、
幼なじみの4人はなれたものである。
しかし、高等部からの新入りであるトラムだけは
1年経った今でも少し恥ずかしそうで可愛い。
トラムはデルフィのように留学しており、
高等部からこの国に帰ってきたのである。
そのため生徒会は高等部からの参入になったのだ。
新鮮枠なのである。
ちなみにフックス・L・ボーゲン様は実在する人物である。
しかし、ここで名前を出しても迷惑のかからない人物なので使わせてもらっている。
後ほどご紹介しましょう。
「恒例行事終わりましたし、仕事に取り掛かりましょうか。」
かぐやの号令でみんなが書類に向き合いだした。
(今更ではあるけど、こんなばかげたことをやっているのに、ほかの令嬢は私に対して何も文句を言ってこないのかしら……)
こんな優良物件ばかり揃えているのだ。
家格的にいじめはなくとも、何かしら文句等あっていいと思うのだが……
「大丈夫ですよ。誰もエアーツェレン家には逆らうことは出来ないのだから」
「!?!?」
唐突に隣の席のかぐやがそう言った。
もちろん、私はさっきのことをいっさい口に出していない。
考えていただけである。
人懐こそうな笑顔を浮かべてかぐやがこちらを向く。
さすが神職と言ったところだろうか。
この人は本当に計り知れない。
それにしても、エアーツェレン家に逆らえないとはどういうことだろう。
聞こうと思っと矢先、扉が勢いよく開いた。
「誰だ、静かに入れ。」
お前が言う!?と、全員思ったであろうシュトゥルムのセリフは入ってきたグレーテルにかけられた。
「すみません!でももう帰宅時間なので、メリーをむかえにきました!」
「グレーテル走っちゃダメだよ〜」
よたよたとヘンゼルもやってくる。
「むっ、そんな時間か。」
かれこれ2時間ほど書類に向かっていたらしい。
集中すると耳に何も入らない連中だ。
チャイムが聞こえなかったのだろう。
「では本日は解散!みんな気をつけて帰れ!」