4話 初めてのクエスト受注
「さて、一番最初はどんな依頼がいいかな~?」
依頼書が貼り出されたクエストボードを眺めながらロイが呟く。
「そっちじゃない、こっちだ。」
声に反応して振り向くと、ジークが手招きをしていた。
「クエストボードはこれだろ?」
「そうだが、G級はまだそこのクエストは受注できないんだ。」
「そうなのか、じゃあG級用のクエストボードがあるのか?」
「クエストボードというか・・・依頼書の束だな。受付で直接受けるんだ。」
「じゃあ、受付に行くか。」
「そうだな。」
そう言って二人は受付へ向かう。
「頼むよアリシアちゃ~ん、ちょっとでいいんだよ~。」
「そう言われましても・・・規則ですので。」
受付では見知らぬ男が、なにやらアリシアに頼み込んでいた。
「おまえ・・・なにやってんだ・・・。」
そう言うジークの表情はもの凄く面倒な場面に出くわしてしまったとゆう感じだ。
「ジークちょうどいい所に!なぁ、お前からもアリシアちゃんを説得してくれよ~。」
「ジークさん、この人どうにかしてくれませんか?」
「まぁ、待て待て。まずは一体何が起こってるのか教えてくれ!まずはマルコから聞かせてくれ。」
ジークの言葉にアリシアは口を閉ざし、マルコと呼ばれた男が言う。
「それがさぁ、今月いろいろ出費がかさんでてそろそろクエストで金稼がないといけないってのに、アリシアちゃんが僕にクエストを受注させてくれないんだよ~。」
「なるほど、アリシアはなぜマルコにクエストを受注させないんだ?」
「マルコさんはまだ療養期間中なので、受注させることが出来ないんです。」
「だからほら、怪我なんてもう治ってるから問題ないって。」
「そうは言われましても、お医者さんが定めた期間中は受けさせてはいけない決まりですので・・・。」
「医者が止めてるならやめた方がいいのでは?」
それまで静観していたロイが口を開く。
「だぁ~から、もう怪我は問題ないっ・・・って、君だれ?」
「ああ、失礼。私はロイ・フォードだ。」
「僕は鉄剣のマルコことマルコ・ハークレイ、D級ハンターさ。」
鉄製のマルコのエンブレムには剣の絵柄と数字のⅢが彫られていた。
「こいつは今日からハンターになったばかりだ、宜しくしてやってくれ。」
「あぁそう、これから宜しくね。」
「こちらこそ、色々教わると思うが宜しく。」
マルコが笑顔で会釈し、ロイも会釈を返す。
整った顔立ちの彼が見せる笑顔は中々の破壊力で、そこらの女性なら軽く虜になるだろう。
「マルコさん、いつまでもそこにいたら邪魔です。」
だがアリシアには通じないみたいだ。
「そんなこと言わないでよぉアリシアちゃ~ん!」
「ロイさんはクエスト受けに来たんですよね?」
「あ、ああ・・・そうなんだけど。」
オーイアリシアチャーン?キイテルー?
「ロイさんはまだG級なので、受けれるのは通常のクエストボードからではなくこちらからになります。」
オーイチョットー?
アリシアは依頼書の束を取り出す。
だが、そこに綴られていた依頼内容は・・・。
ボクモクエストウケニキタンダケドー?
「え?子守り?」
「他のも・・・庭の雑草刈りとか、いなくなったペットの捜索とか・・こんなものばっかりだな。」
ジーキュウハルーキーダカラネ!
「G級のハンターは、ハンターってよりも町の便利屋って感じなんだよ。」
ソウソウ。
「え!?そうなのか?」
「これは、ハンターさんの身を守る為でもあるんです。」
サイショカラモンスタータイジナンテアブナイカラネー。
「モンスターと戦うのは危険だからな。」
ソレイマボクガイッタヨネ?
「それはわかっているが・・・。」
ネ?ナゼボクガイッタコトヲマタイウノカナ?
「俺も最初はこんなクエストから始めたんだ、それにこれもいい修行になるさ。」
ソウダネ、ボクモハジメハオツカイバッカイッテタヨー。
「そうか・・・ならしかたないか。」
ミナ、タツスタートラインハオナジサ!
「俺も一緒に手伝うさ、最近こういったクエストは受けてないからいい気分転換になる。」
ソウダネ、キブンテンカンニナルネ-。
「わかった。ではアリシア、このクエストを受けたい。」
ドンナクエストダイ?
ロイは工事の手伝いのクエストを選らんでアリシアに依頼書を渡す。
イカニモチカラシゴトッテカンジダネ!
「はい、クエストを受注しました。ではこちらがクエスト受領書になります。クエストを達成したら依頼主から受領書にサインを貰ってきてください。サインが確認できたらクエスト完了となるので、その時に報酬金をお渡ししますね。」
ハジメテノホウシュウキンハトッテモウレシイヨ!
「工事の手伝いか・・・力仕事だな。」
アレ?ダカラソレボクガイマイッタヨネ?
「その方がいかにも修行っぽいだろ?」
ロイは無邪気に笑う。
「そうだな、体を鍛えるにはいい仕事だ。」
ハンターハカラダガシホンダカラネー。
ジークも鼻で笑いながらロイに賛同する。
「では、もう行くか。このクエストなら特に準備も必要ないだろう。」
「そうだな、早く行こう!」
イッテラッシャーイ、ガンバッテネー。
二人はそう言うと集会所の入口へ歩き出す。
「お二人ともお気をつけて、クエスト頑張って下さいね!」
アリシアは集会所を出ていく二人に声をかける。
「ところで・・・アリシアちゃん?」
「・・・あら?誰かに名前呼ばれた気がしたけど・・・気のせいですね。」
「ちょっとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
集会所内にマルコの声が響き渡る。
「なぁジーク?」
「ん?なんだ?」
「あれでよかったのか?」
「なにがだ?」
「いや、だから・・・やっぱなんでもない。」
「・・・アイツの扱いはそれでいいんだよ。」
二人は依頼書に書いてあった工事の場所へ向かった。
「ここだな、依頼書に書いてあった場所は。」
そう言うロイの視線の先では建物を建築している真っ最中だった。
「さて、じゃあ工事の責任者を捜さないとな。」
ジークが辺りを見回しながら言うとーーー
「おい!そこの二人!そんなところでボーっとして、何やってんだ!・・・ん?お前ら見ない顔だな?」
怒号が飛んできた先を見ると筋骨隆々の逞しい男が立っていた。
「邪魔になっていたなら申し訳ない、俺達はクエストでこの工事を手伝いに来たんだが。」
ジークが状況を説明し、ロイが受領書を男に渡す。
「んん?こりゃ旅団に出した依頼書じゃねぇか。そうか、あんたら手伝いに来てくれたのか!」
険しかった男の表情が一転して明るくなる。
「はい、私はロイでこちらはジーク、旅団に出されていた人手募集の依頼を受けて手伝いに来ました。」
ロイに紹介されたジークが頭を下げる。
「おおそりゃあ助かる!実は先日、工事中に事故が起きてなぁ、工員が怪我しちまってこのままじゃ工事に遅れが出るってんで旅団に人手を募集したんだ。」
「これは何の工事なんだ?」
「なんでも、でっけぇ兵舎を建てるんだってよ。」
「兵舎?平和なこの国にか?」
「さぁな、お上の考えることは俺らにはわかんねぇよ。」
「・・・・・。」
「とにかく、手伝ってくれるならありがてぇ。まず皆にあんたらを紹介しないとな。」
「ああ、そうだな。まずはこの工事の責任者に会わせてくれ。」
「この工事の責任者なら俺だ、アデク・ストラってんだよろしくな。」
「こちらこそ、今日は宜しく頼む。」
アデクは手を差し出し二人と握手を交わす。
「それと、さっきはいきなり怒鳴って悪かったな。ウチの若ぇのかと思っちまってな、ボーっとしてまた怪我でもされちまったらたまったもんじゃないからな。」
「大丈夫だ、気にしてない。」
ジークがアデクに返す。
「そうそう、注意喚起は大事だからな。」
「そう言ってくれるとこちらとしても一緒に仕事しやすい、助かるぜ!」
アデクは二人の言葉に笑顔で答える。
「さ、ついて来なこっちだ!」
そう言ってアデクが建築現場の中へ向かって歩き出す。
二人もアデクに続いて行った。
その後は作業員に自己紹介をした二人は、荷物運び等を手伝い額に汗を流し、気づけば日が暮れていた。