0-3話 父から告げられた言葉
「ところで父上、お話とは何でしょうか?」
アウスレーゼ王子が尋ねる
呼び出された理由に皆目見当がつかないといった様子で気になっているようだ。
「アウスレーゼよ、お前も今年で17歳になるか。」
「はい。」
「お前には政治や経済、世の渡り方や学門に芸術等色々な事を学ばせたが、お前はこれらを上手く身につけることができた。この調子なら私に万一の事が起きた場合安心して国を任せることができよう。」
「お褒めに預かり光栄です。ですが、私はまだまだ未熟者です。故に私では父上の代わりなどできません。それに父上の御身に万が一の事など起こるはずがありません、なのでそのような心配は無用かと存じ上げます。」
スコフォード王の表情が一瞬曇ったように見え、不安を感じたアウスレーゼ王子はその不安を否定するように言う。
まるで自分に言い聞かせるかのように。
「そのように謙遜する志もまた、素晴らしいものだ。だが、お前は世の中を知らん。知識としては知っていても実際に見て、聞いて、触れた経験が無い。」
「お言葉ですが父上、父上もご存知だと思いますが私は宮殿の中だけで生活を過ごしておりません。市場や市街地等へ赴き我が民と交流もしております。」
父の突然の言葉に反感を覚えたのか、反発するかのようにアウスレーゼ王子は父の発言を否定する言葉を並べる
「お前が民を身近に思い、交流を深めている事はもちろん知っておる。それは良き事だ。だが、お前は外の世界を知らんと言っておるのだ。」
国の外、それはアウスレーゼ王子にとって未知の世界だった。
父が他国へ訪問する時に何度か付き添いで行ったことはあるため、全く見たことも聞いたこともない訳ではないが、他国の文化やそこに住まう人々のことは確かに触れたことのないものだった。
「・・・それは確かに父上の仰る通りです。」
先程のアウスレーゼ王子の反発心は父の言葉にかき消されようだ。
「自分を知るだけでなく相手を知り、交流を深めてこそ良き友たり得るのだ。国同士とて、それは変わらん。」
「だが、お前はまだ相手を知らぬ。交流を深め良き友となってくれる国のことをな・・・。」
アウスレーゼ王子には一辺たりとも反論の余地はなかった。
「お前はいずれ私の跡を継ぎこの国の王となる。だがそれには、自らの足で赴き自らの目で見て自らの耳で聞き自らの肌で感じて外の国を知らねばならん。・・・そう、お前は旅に出るのだ。」
玉座の間が静まり返る。王の言葉は誰も予想だにしなかったからだ。
一瞬の静寂の後、衛兵や家臣達からどよめきの声が漏れ始める。
「父上、その・・・旅に出る、とは一体・・・どうゆう事ですか?」
アウスレーゼ王子が尋ねる。
今しがた父の口から発せれた言葉を理解はしているものの、状況が飲み込めていないといった感じだ。
「言葉の通りだ。なに安心してよい、付きの者を1人同行させる。その者は旅に馴れており、お前の助けとなるだろう。」
「出発は明日の昼だ、それ以降はこの宮殿内に留まる事は許さぬ。」
「ち、ちょっと待ってくださいちt「ならぬ!・・・・・これはもう私が決めた事だ、決定を覆すことはまかりならん。」
アウスレーゼ王子の言葉を遮り、一喝する。
どうあっても逆らう事は許さん・・・という強い意思を感じる。
「・・・今夜で必要な荷物をまとめておけ、それと今夜の夕食は別室で食べるのだ。これからは1人で食べることも増えるだろう、今のうちに少しでも馴れておくのだ。」
「・・・はい。」
アウスレーゼ王子は静かに返事を返す。
理由を聞きたいが、それすらもはばかれる父の威圧感に言葉が上手く出ない。
「金銭は少しなら持って行っても構わん、食料もな。剣は何かと役に立つ、持って行くのを忘れるな。」
「話は以上だ、そろそろ部屋に戻って準備をしてこい。今夜は早めに寝ておけ明日からはいろいろと体力を使うぞ。」
「わかりました。・・・それでは父上、失礼します。」
アウスレーゼ王子は立ち上り大扉に向かう。
そして衛兵が大扉を開ける。彼の表情は今しがた目の前で起こった出来事に驚き、理解が追い付いていないようだった。
アウスレーゼ王子がふと歩みを止め、振り返る。
「・・・父上、一つ尋ねても宜しいでしょうか?」
「構わん、申してみよ。」
「私が旅を終え、この国に戻る時が来たら父上は私を迎えてくれますか?」
「その時のお前次第だ。」
「それは、すぐに戻っては来るなとゆう意味ですか?」
「ひとつ、と言ったぞ。」
「・・・!」
「・・・失礼します。」
父に冷たいあしらい方に、アウスレーゼ王子は踵を返して玉座の間を後にした。