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デウス・エクス・マギア ~大いなる幼女とデスメタる山田~  作者: 猫文字隼人
最終章 機械仕掛けの魔神 -Deus Ex Magia-
29/32

黎明の空


 全ての光が天へと昇り、消滅していく。


 虚数から生み出された無尽蔵の生命力に貫かれたバル=ヨハニは散り散りになって消滅していく。


 放たれた無限光は黒い月にまで至り、黄昏れていた魔界に徐々に光が戻ってくる。

 大気にはきらきらとした虹色の輝く粒子が混じっており、魔界全土へと降り注いでいた。全てを出し切った俺たちは呆然とその光景を眺めていた。



「おい、ヤマダ」


「なんだ」



 気だるげにヴェルベットに返事する。



「綺麗だな」


「ん? ああ、そういやそうだな」



 一瞬何のことかと思ったが、大気の中をきらきらと舞う無限光の欠片のことだった。



「なぁ、ヤマダ」


「なんだ」


「……ありがと」


「……おう」



 そう言って顔を見合わせると小さく笑い、俺たちの笑い声は徐々に増し、そのままお互い抱き合って笑い合った。



「あのー、ちょっと(キュー)の中であんまり盛ったりしないで下さいよ」


『盛るか!』



 またしても声が重なり、お互いの顔を見合わせて笑いあう。



「とにかく、こんで大団円だ。死んだはずのキューが帰ってきたら皆びっくりするだろうな」


「あー……、あのメイドにまたいじめられるんですよ……」


「そういやシャーリーが格好いい三味線欲しいって言ってたな」



 勿論嘘だが。



「こ、怖いこと言わないで下さいよ、もう!」



 ぷんすかと怒るキューに対してもう一度笑った。

 もう一度魔界の大地を踏めるのだという事を考えると、俺はやっぱり思った以上にこの世界が気に入っても居たのだなと思った。


 サンダルフォンの周囲には徐々に魔界の民が集まりだしている。

 黒い月の再起動と、【無尽無限極光(アイン・ソフ・オウル)】の余剰魔力が皆の回復を早めたのだろう。



「準備完了しました。それじゃ降りましょう」


「おう、エレベーターかなんかか?」


「こんな古いのにそんなの付いてませんよ」



 え、じゃあどうやって……。



「え、う、うわあああああああ!」



 疑問を口にする前に座っていた椅子が抜け、俺とヴェルベットの体はフリーフォールの要領でまっさかさまに落ちていった。




「ヴェルベット様! よくぞご無事で!」


「うおおおお! ヤマダ! ヤマダ!」


「こんな隠し球があったなんて聞いてねえぞオラァ! 最高だぞテメエ!」



 地上に降りると叫びながら飛び跳ねて喜びを表現するギャラリーが出迎えてくれた。

 だがヴェルベットにもそうだったようにあれだけ格好つけておいてもう一度皆と相対するとなると流石に恥ずかしいものを感じて照れながら手を振るにとどめる。



「魔王様ー!」


「のわっ!」



 リベルシアが文字通り飛んで来て俺の背中に飛びついていた。



「まさか、本当にこの世界を救っていただけるとは思いもしませんでした! やはり、魔王様はボクの魔王様だったのです!」


「たまたまだよ、それにこれは俺だけじゃない。皆のおかげで勝てたんだ」 


「うう、魔王様、そんな謙虚なところも好き!」


「あー離れろ離れろ、ヤマダは私のなんだぞ」


「あっ、サブヒロインだ」


「な、なんじゃとー! 誰がサブヒロインじゃ! どう考えても私がメインだろうが! サブはお前じゃ!」



 わーわーとやりあうヴェルベットとリベルシア。

 どう対応して良い物か解らず苦笑いを浮かべるだけだった。



「はい、3(ギメル)、2(べート)、1(アレフ)。時間切れー! うるさいのは撤去しまーす」



 突然上空からキューの声と共にクレーンのようなものが伸びてきてヴェルベットとリベルシアは猫のように首を掴まれて運ばれていく。



「うわわっ! あっ! そういやよくも私にあんなものをぶっこんでくれたなキュー!」


「あれはマスターが言うからぁ……」


「っていうかなんで私が飼い主なのにヤマダがマスターなんじゃ! おかしいじゃろ!」



 そんなこんなでヴェルベットはぶらさげられたままぎゃーぎゃーと叫んでいる。



「貴様ヴェルベット様にあそこまでしておいてサブヒロイン扱いとは覚悟は出来てるんだろうな?」



 毎度の事ながら唐突に現れるシャーリー。俺の肩を抱くその顔は珍しく笑顔だった。



「はぁ、めんどくせぇしうるせえ……」



 思わず吹き出した。

 終わったと思ったら、とっても騒がしいことになっている。

 けれど、これこそが俺が望み、守りたかった『失敗作の世界』だった。


 ふふと笑った俺の腕をひっぱって抱きしめたのは、今度は何とむさ苦しいことかダイモン。



「うおおお! 偽物だと思ってたらてめえも本物だったとはな! 俺の店は今日からフリーパスだ! 好きなだけフルーツ食わせてやる!」


「ご褒美に当てに来たわよ」



 いつの間にかアモンのダゴンがまたしても俺の腿に! ひっついたり! 離れたり!



「あー! もう好きにしてくれ!」



 全部投げやりになって、そう叫ぶ。


 熱狂はいつになっても冷めず、どんちゃん騒ぎは夜を越えても続いていた。

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