夢日記〜第五幕〜 夢の導き 後編
こちらは
夢日記〜第五幕〜夢の導き
の後編となっております。
前編をお読みでない方も楽しめるとは思いますが、前編を読んだ方がより一層楽しむことができると思います。
〓すこし、グロテスクな描写があるので苦手な方はブラウザバックをお願いします。〓
今回は後編ですので、前書きは少なめです。
それでは、夢の続きをどうぞ、ご覧ください。
先ほどまで熱気がこもっていた部屋に風が吹き込む。その風は冷たく、夏とは思えないものだった。
強風のあまり思わず目を瞑ってしまう。しかし、一向にその風が止みそうにない。
恐る恐る目を開けると、窓の外に女の人が立っていた。
ありえない。
ここはマンションの4階。いるはずがない。どうやっても上がってくることはできない。
その女の人は真っ白の大きいワンピースのような服を着ていた。
窓を開けたBの目の前にいた、その女のひとは、そうっとBに触れて、こちらを見てくる。
あまりの恐怖にA、Cは部屋から弾き出されるように動き始めた。
部屋を出てすぐ右に行くと小さな横長い部屋がある。そこは出入り口こそガラス張りであるものの、端の方は壁で死角になっているためここにとりあえず隠れることになった。
『どういうことだよ、なんであんなモノがこんなところに来たんだ』
Cは少し動揺した様子で話している。無理もないだろう。あの状況を見れば誰だってこうなる。
『小さい頃におれは一度にたような経験をしたことある気がする』
ふと、少しだけ、断片的な記憶が戻ってくる。しかし、参考になるようなものではなかった。
『はぁ!?今はそんなこと考えてる暇はないだろ!はやく、Cを助けに行かないと』
Bが立ち上がりガラスに手をついた瞬間。ガラスを挟んで、先ほどの女の人が立っていた。その女のひとはBの合わせ鏡になるように立っていて、Bの行動を真似ている。
『おい、B。横を、よく見てみろ…』
『なんだよ、急に』
そう言いながらゆっくりと横を向く。おそらく気がついたのだろう。その顔は恐怖に沈み、一瞬にして血の気が引いていっていた。
『うわぁ!くそ!なんでこうなるんだよ!』
そう言ってドアを全力で開けて外に飛び出る。女の人はゆっくりとそれを追いかける。
その隙に周りを確認して部屋から出る。物音一つしなかった。ゆっくりと玄関を出る。こうなれば一安心だろう。
安堵して周りを見渡す。変わった様子は全くなかった。いつものように蒸し暑く、風がほとんど吹かない、変わらない世界が広がっている。
『やっぱり、あれは。いや、でもそんなことって』
落ち着いたところで先ほど思い出したものについて考える。しかし、どうしてとその先が思い出せない。
すると、横を少し涼しい風が吹き抜けて行く。普通の状況ならなんの変哲も無い風なのだろう。
しかし、今はわけが違っていた。考えれば考えるほど、信じたくは無い結果にたどり着く。
恐る恐る顔を上げる。
そこには先ほどの人が居た。
なんでこうなるんだよ。何もして無いのに。
女の人はそっとAの頬に触れる。それだけだった。そして、何事もなかったかのように消え去って行く。
一体何をしたのか、頬を擦って確かめるが、特にこれといった異常はない。
なんだったのだろうと不思議に思っていると家の中からBとCが出てきた。二人とも無事そうで変化も特に起きていなかった。
『無事でよかった』
そう二人に告げる。二人とも少し心配そうな顔をしていたが、徐々に顔色が回復していって、普段通りに戻った。
その後すぐにB、C共に家に帰り、何事もなくその日を過ごすことができた。
次の日。また同じように起きて学校に向かう。BもCも家が割と近くにあり、いつも一緒に登校している。昨日のことは忘れていないみたいだ。しかし、誰も話の中にその話題を持ち出すことはなかった。
ぼちぼち歩いているとようやく学校に着く。しかし、いつもと雰囲気が違う。それは校門を通った瞬間に感じた。
この異様な空気。全身の細胞が危険信号をあげている。夏にもかかわらずこの涼しさは、まさに昨日と同じもの。
しかし、学校をサボるわけには行かない。できるだけ警戒心を解かぬよう教室に向かう。
教室の中も少し異常な雰囲気だった。皆いつもと同じように元気に過ごしているように見えるのに、なぜか空気が死んでいる。見た目は変わらないのに中身が完全に別物のよう。
そして、教室内のどこかで話されていた噂をたまたま耳にする。
『昨日真っ白のワンピースを着た女の人が町中を徘徊して、知らぬ間にその人に腕を軽く触られるんだって』
この話を聞いた瞬間、皆一斉に顔から血の気が引く。
そしてまた、教室から飛び出して全力で校門に向かって走る。
しかしなぜだろう。いくら走っても校門に近づかない。まるで近づけば近づいた分だけ校門が離れて行くような。そんな状況だった。
『ちくしょう、なんなんだよ!』
Cが走るのをやめる。それに合わせてAもBも立ち止まる。
『とりあえず、戻ろう。このままじゃ走っても意味がない』
皆納得して教室に引き返す。
教室に戻る途中、靴箱前で異常な人と遭遇する。
両腕を真っ直ぐ前に突き出して、よく見るようなゾンビのようだ。しかし、ソレとは違う部分が、首から手首と手首から腰までが鎖で繋がっていて、腕の自由が全く効かないようになっていること。真っ直ぐ二階に向かっている。
『おい!どうしたんだ!』
話しかけても反応はなかった。ただただ二階に向かっている。一体何事だろうと後ろを追う。二階についてすぐにその人は窓を開けて飛び出そうとする。
『おい待て!』
やはり、声は届かない。刹那、目の前から消えた。
そして少し鈍い音がする。急いで下を確認する。辺り一面に血が広がる。打ち所が悪かったのだろう。ピクリとも動かない。
なぜ飛び降りたかも不思議だがもう一つ不思議な部分があった。
『鎖が、消えてる…?』
先ほどまで付いていたはずの鎖が綺麗に消えていた。しかし、首と手首にはくっきりと跡が残っている。
急いで下に降りて確認しに行く。やはり付いていない。
すると奥の方から一人、先ほどの人と同じような状態で歩いている。
『おい!一体何があった!』
次は肩をさえながら話しかける。目玉がゆっくり動き目が合う。
『た…すけ…て…くれ…』
声は掠れていてほとんど聞こえなかった。何度も繰り返している。そしてようやく理解する。助けてという言葉。
それに応えるべく必死に鎖を外そうとする。
しかし、ものすごい力でその人に抵抗される。どれだけ掴んでも振り払われる。
『こ、これは俺の意思じゃないんだ。頼む、早く助けてくれ』
今度は先ほどよりもはっきり言葉を話していた。しかしどうしようもなかった。
その人は3階まで登って飛び降りていった。
そして、次々に周りの人が色々な場所から飛び降りる。ゴフッという鈍い音があちこちで鳴り響く。そして、真っ赤に染まっていく。
『お、おい、これなんだよ』
『C!お前まで…。うわ!?俺も…』
BとCに鎖が絡みつく。そして、周りの人たちと同じような格好になる。しかし、他と違うのは意識がはっきりしていて、鎖を外そうとしても抵抗がないこと。
必死に外そうとする。しかし、ビクともしない。
校舎の裏にあるグラウンドでは大量の死体と大量の血で溢れかえっていた。しかし、その中に真っ白の人がたった一人真ん中に立っていた。
それは異彩を放っている。元凶がそれなのはすぐにわかった。
『A!お前だけでも逃げろ!』
『そんなことできるわけないだろ!絶対に助けてやるから、まってろ!』
Cがもういいと言っているがそれを無視する。絶対に助けなければ。その思いが強かった。
グラウンドに向かって走る。すると、後ろから聞きなれた声で叫び声が聞こえた。
Bの首が締まり始めている。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!』
凄まじい声とともにBの首が飛んだ。切れた部分からは血が吹き出し、力を失ってその場に倒れこむ。隣にいたCまでもが赤く染まる。
『くそがぁぁぁぁぁ!!!!』
Cが叫びを上げる。
それを見た時に、気づいてしまった。真っ直ぐCに向かって鉄柱が一本だけ落ちていっている。
だが、Cは気づいていない。このままでは、まずい。
『Cぃぃぃぃ!!!よけろぉぉぉぉ!』
え?と言った様子でこちらを見る。かけるタイミングが遅すぎた。
目が合ったと同時にCの体を鉄柱が真っ直ぐ貫く。串刺しになっていた。
二人とも即死。Cが死んだ瞬間、学校中が静かになる。そして生きている人間は自分一人だという事実を思い知らされる。
逃げ場はない。打つ手もない。でもこのまま死ぬのはBにもCにも頭が上がらない。
真っ直ぐその何かに向かって走る。
ソレは近づけば近づくほどはっきりと見えてくる。
昨日出会ったあの女の人。その人が立っていた。
一発でいいから殴ってやろう。そう思い全力で立ち向かう。
『そんなに怒らないでよ』
声が聞こえたと同時に体の動きが止まる。そして、ソレはゆっくりとこちらに歩いてくる。
ポツリポツリと真っ赤な雨が降り始める。ここで死んだ人の血液が降っているようだ。その人は少しづつ赤くなっていく。
静かにAの前に立ち、頬を前と同じようにゆっくりと大切そうに撫でる。
『君は殺さない。私が恋をしたあの人にとても似ているから』
とても安心した。この状況なのに不思議と。そして知っていた。こうなる結末を。
ぐしゃり。
今までに聞いたことのない音が聞こえる。同時にお腹が少しづつ熱くなる。何者かに腹を裂かれた。目の前のいたソレは驚いているのか目を丸くしてこちらを見ている。
少しづつ意識が遠のく。視界が歪んで、ぐるぐる回り始める。
あぁあ、ダメか。また、死んじゃうのか。
もう、それ以上は何も考えられなかった。
真っ赤な絵の具が一滴、また一滴と落ちる。
夕暮れの校庭。空気は澄んでいて、心地よいはずの風。しかし、体はその空気を受け付けない。この空間そのものを否定するかのように。目の前に広がるのは真紅の世界。あまりにも綺麗で、ひどく残酷な姿。その真紅の世界に佇む一人の怪物。孤独にただただ立っている。その怪物から、また赤い絵の具が滴り落ちる。しかし、その赤は純粋な垢ではない。
少し澄んだ赤。
『いやだ。いやだよ、こんなの』
〜終〜
いかがだったでしょうか?
えぇ、これを夢で見た私は本当に恐ろしいですね。
忘れられない理由がわかりましたか?
これは本当にきついです。
あ、でも、女のひとはすごく美人さんで可愛いですよ。私の中では。
やっぱり夢の中だと好きな感じになるんですねぇ。
皆さんも夢に出て来る想像上の人物が自分のタイプかもしれませんよ?
それでは夢日記〜第五幕〜は完結となります。
夢日記はこれから投稿するかはわかりませんが、昔つけていたものがたくさんあるので、おそらくするとは思います。
今は新作の完全に私のオリジナル作品があるので、ぜひそちらもご覧ください。
それでは、また皆様を夢の世界へお連れできることをお祈りします。
それではまた会いましょう!