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プロローグ
事の発端は学校で起きた。
俺の席の位置が悪かったのだろう。
教室の位置は校門入って目の前の生徒用玄関に入り最初の曲がり角を左に曲がったすぐ側。
席の位置は廊下側一番後ろの角の席。
つまり一番出入り口に近い席である。
時計の針は11時半を指していた。
俺らは授業終了の合図と放送の合図を聞き間違えたのだろう。
やっと授業終わったとざわめき始める教室、その音に紛れ奴は教室に入ってきた。
俺の脳内に突然響く鈍い音、目の前は赤く染まり全身から力が抜ける。
すべてを理解するのは案外容易であり、しかし事実を受け止めた時にはすでに生徒の悲鳴は遠くにあった。
一番出口に近いという席が俺を奴の標的にし、放送の音をかき消す教室のざわめきが俺という被害者を生み出した。
今教室にあるのはもう死体になろうとしている瀕死の俺と永遠と流れる放送。
「学校に高橋さんがいらっしゃいました。生徒の皆さんは体育館までお出迎いの準備にお越しください。繰り返します。学校に……」
薄れ行く意識となんとも言えない感覚の中生徒に対する警告が聞こえていた。