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紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~   作者: りょうと かえ
ディーン王国

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168/201

模擬戦①

 チーム戦……?

 個人戦もしていないのに、急な話だった。

 僕が首を傾げていると、


「ふん……午前の調練に来ない頭でっかちの男爵様に、戦えるものかよ」


「ああ、目にモノを見せてやろうぜ」


 ……周囲の貴族から、そんな声がちらほらと聞こえてくる。ライラがそっと近づいて、僕に耳打ちをする。


「すみません――午前中、他の貴族は他の貴族で集まって訓練をしているのです。私たちは神聖魔術などがありますから……」


「なるほど……同席してやるわけにはいかないのか」


 ライラがこくりと頷く。神聖魔術は聖教会の秘術だ。今でも、僕たちは訓練所をひとつ貸し切って使っている。


 事情を知らない他の貴族には、身体を使う訓練をサボっているように思えるのだろう。


「チームを組む制限は特にない。互いに合意して5人が組めば良い。チームのリーダーは私に名乗り出ること、以上だ。30分で諸々の準備を含めて決めたまえ――すぐに模擬戦を始める」


 ツアーズは言い切ると、教壇に椅子を引いて腰かけた。


 僕のチームは僕自身にイライザ、アエリア、シーラ、ライラの5人でもちろん決まりだ。悩むまでもない。


「で、誰がリーダーをやるかだけど……」


『ジル様です!』


「……そ、そうなる? 声を合わせなくても……」


 模擬戦なんだし。

 多分、武器を打ち合うならシーラやライラの方が強いよ?


『じーっ……』


「わ、わかった……」


 言ってみただけなのに。気圧されるまま、ツアーズに報告する。


 さらさらっと名前を書き写したツアーズは、目線を紙に落としたまま、呟いた。


「切り札はできることなら、見せないように。あと、くれぐれも無茶は避けなさい」


「……それは……」


「今日のこれは、ターナ公爵の差し金だ。それしか言えん」


 それっきり、ツアーズは口をつぐんだ。


「お言葉、感謝します」


 小さく礼をして、僕は下がった。

 やはりターナ派の嫌がらせ――あるいは、偵察かもしれない。


 他の貴族たちも出身や血縁でまとまっており、チーム分け自体はスムーズなようだ。

 元々、嫡子ではないが宮廷にそれなりの繋がりがある貴族ばかりだ。


 あっという間に10組ほどのチームが出来上がった。

 全員が分かれたのを確認したツアーズは、


「よし――では野外訓練所に移動する。ついてきなさい。模擬戦の概要は、リーダーに紙で渡す。各々、歩きながら確認するように」


 ツアーズは合理的に物事を進めていく。

 従者から渡された紙には、次のようにあった。


『模擬戦は最初に二人同士で戦う。次にリーダーを含む三人同士で戦う。戦う順番は各チームで決めること』


 ふむ、勝ち抜き戦ではないのか。

 結局全員が戦うわけだけど――割り振りはよく考える必要がありそうだ。

 最初の二人は前衛で、後の三人が後衛といったイメージだろうか。


『重傷を負わせるような攻撃は禁じる。武器は当方で用意したものを使うこと。スキル・魔術については使用制限はない』


 あ、僕の《血液操作》が使える。

 この類いの模擬戦では、スキルの使用は禁じられることが多い――強いスキルの持ち主が有利すぎるからだ。

 身のこなしや精神的タフさを見たいときには、スキルは邪魔にしかならない。


 それが今回は許されている――ということはかなり実戦的な戦いになるだろう。


『時間は一戦五分間とする。勝敗だけでなく、決着に至るまでの過程も重視する。無様な戦いはしないように』


 これはまぁ、そうだろう。

 スキルの相性によっては一瞬で決まることもありうるが――勝負を投げたり、恐怖に負けることの方がよほど問題なのだ。


 戦場では、貴族は常に前線に立つわけではない。それでもスキル持ちの敵精鋭と戦う可能性がない訳じゃない。

 そうした時に慌てふためき、統率を乱すようでは話にならない。


 そうでなくても、敵は死霊術師なのだ。どのような戦術を仕掛けられても――味方が屍となっても動揺してはいけない。


 回廊を歩きながら、僕は組分けを考える。

 まず僕はリーダーなので、後の三人組に決まっていた。問題は残りをどうするか。


 イライザが紙を覗き込みながら――ちらっと僕を見る。


「危険を避けるだけなら、私とライラ様とジル様で一組作る方が……」


「……戦力がちょっと片寄ってない? 危険があるとしたら、僕だけじゃないと思うけど」


「それは、そうですが……」


 そうこう話しているうちに、回廊を抜けて野外訓練場へと到着した。

 訓練場は一面を芝生に覆われ、周囲を小さな林に囲まれている。

 林との境界には、魔力に満ちた柱が何本も立っていた。


 からっと晴れた、陽気な天気だ。

 身体を動かすには、ちょうどいいと言えた。

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