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紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~   作者: りょうと かえ
水底の船

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113/201

今後の計画

 その後は手分けしてイヴァルトの有力者達を巡り、挨拶と情報収集に専念した。

 しかしディーン王国より遥かに小さい都市国家とはいえ、有力者の数でも相当数だ。


 アラムデッドに近しい者にはアエリアを、エルフに近しい者にはシーラを当てたりして、なるべく数をこなすようにした。

 僕もイヴァルトの議員を中心に面会していくものの、結果は芳しくない。


 その中では議員であるレイアーー彼女は若干ではあるけれど好意的に僕を出迎えてくれた。

 エルフにしては低い身長、そして青白く影の濃い美女だ。一方、目の奥には柔和で人好きのする優しさが宿っている。


 レイアにはドワーフとヴァンパイアとエルフの血が混じっているという。

 年齢は30に近いはずだけれど、歳を取りづらい3種族の血が彼女を20歳前後に見せていた。


「ディーン王国からあなたが来られると聞いていましたが……なるほど、なるほど」


 僕のことを知っているのですか?  などと聞いたりはしない。

 アラムデッド王国の出来事で、とんでもない有名人になっているのだ。


「アルマ様から手紙で自慢されたことがありますよ、『おいしそうな方が来ましたって』 確かにおいしそうな貴族様ですね」


 渇いた笑いしか返せない。


「冗談です、いえ……アルマ様の手紙は本当ですけれど」


「は、いや、まぁ……でしょうね」


 レイアはヴァンパイアの血が濃いのだろうか。

 あるいはライラにしても、ヴァンパイアの血が駆り立てるのか。


「ここでは血には困りませんが……質を求めるとどうも……」


「貴人の血が良い、でしたか……」


「スキルを持つ方の血の方が、味が深くコクがあるのですよ。後はヴァンパイアの血は質を悪くしますね……祖父母までにヴァンパイアがおられる方の血は、どうにもおいしくなくて」


 小首を傾げるが、反応に困る。

 結局、ちょっとした雑談で時間が来てしまった。


 ノルダールや大司教バルハ以上の情報は何も出てこなかった。

 もちろん、ディーン王国への参戦要請を持ち出す雰囲気ですらない。一蹴されて終わりだろう。


 とはいえ、収穫があったのも確かだった。

 イヴァルトの夜は長い。

 船を先導するための灯台がそこかしこに立ち、途切れることなくグラウン大河に明かりを送っている。

 大陸各地から集まった人達のために、歓楽街は信じられないほど遅くまでやっているのだ。


 夜の会食も終わった僕は用意された宿舎に戻り、イライザと打ち合わせをしていた。

 ライラは途中で信心深い有力者に会いに行くのに別れて、まだ戻ってきていない。

 チーズの欠片をつまみながら、今日得たことをまとめていく。


「追加の情報はなし……か」


「ええ、アエリアやシーラも奔走してくれましたけれど……商売を持ちかけれてばかりだったみたいですね」


 イライザは同情をにじませて言った。

 アエリアの勘とシーラの危機察知の鋭さは、信頼している。

 その二人でも、特に怪しい人物も出来事も浮かび上がらなかったのだ。


 教団とブラム王国に対抗するのに、イヴァルトの援軍はとても有用だ。

 数は多くなくても、他の諸勢力も駆けつけてくれるきっかけになる。


 すでに北では一戦が始まっているのだ。

 なんとしても、早急にこぎつけたいのに!


 実際には取っ掛かりもない。

 仕方ない、別のところから進むしかない。


「あとは……カバの昔の出現だけか」


「ジル様、気になるところが?」


「カバの出現、最後は300年前でしょ? その前のカバの伝説を繋ぎ合わせると……符合していると思うんだ。《神の瞳》の行方と」


 300年前に《神の瞳》はアラムデッドに封印された。

 それより前にも《神の瞳》を奪いあって暗闘が繰り広げられていた。

 時に教団に渡り、奪い返して封印しては、また奪われる。


 その繰り返しだったと、ディーンの王宮で僕は聞かされた。

 そして現在《神の瞳》のひとつは奪われて行方知れずだ。


 もし失われた《神の瞳》がここにあるならば?

《神の瞳》を持つ死霊術師がカバを使役している可能性はないだろうか。


「《神の瞳》の力でカバが呼び出されている……あり得る話です」


「でも不思議な感じはするよね……。クラーケンを呼び出せるなら、そうすればいいのに。《神の瞳》が関わっているとして、どうしてカバなんだろう? こんな所で実験というのも……」


 僕は《神の瞳》を造ったわけではない。

 使った時も無我夢中だ。


 本当のところ、《神の瞳》でどこまでできるかを知るのは教団だけだろう。

 死霊術の深淵に触れない限り、わからない。


「仮に《神の瞳》がイヴァルトにあるとして、カバを操っているとしましょう。なら……さすがに操っている瞬間は魔力の波動があるはずです」


「そこを押さえれば、か……仮説ではあるけれど探してみる価値はあるかな」


 イヴァルトの地図に目を落として呟く。

 どのみち、今のままでは成果は望めない。


 やれそうなことは、やりきる。

 ガストン将軍のためにもなるし、もし《神の瞳》が見つかれば特大の成果になる。


 ぐっと拳を握りこむ。

 焦りと、光明ーー小さいろうそくなようなものだけれど。


 だけれど挑んでいくしか、僕にはないのだ。

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