表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~   作者: りょうと かえ
水底の船

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/201

大群

 右手から素早く血を弓矢にした僕は、眼下のモンスターに向けて真紅の矢を放った。

 イライザやシーラ、アエリアや護衛も魔術を放ち、モンスターを攻撃し始める。

 風の刃や青い精霊による遠距離攻撃だ。


 ひしめき合うモンスターは避けることも出来ない。

 真紅の矢も魔術も全て命中する。


 モンスター達の皮膚が裂け、青い血が吹き出す。

 トカゲやカニ、ドジョウに似た巨体のモンスター達が苦痛の声を上げ、叫び始める。

 モンスター達は目の前の陣に気をとられて、僕達の攻撃はまともに受けたようだ。


 まずは狙い通り、一撃を食らわせた。

 当然、モンスター達も僕達を認識する。


 モンスター達の何匹かが魔力を放射し始めている。

 モンスターは獣と同じように野生に突き動かされているが、魔術を使うことができる。

 巨体によるパワーも厄介だけれど、モンスターによる魔術も危険きわまりない。


「次、魔術を放つ奴を優先的に!」


 僕は続けざまにこちらを睨み付け、魔術を放とうとするモンスターを矢で射っていく。

 魔術を放つのを止めるには、頭を狙うべきとされている。


 もちろん、馬車や大きな個体になるとテントほどにもなるモンスターだ。

 頭を狙うのはそんなに簡単じゃない。


 しかし今は飛行騎兵で高所の利がある。

 しかも怒りにかられたモンスター達は、僕達に頭を向けているのだ。


 口を大きく開け威嚇するモンスターへ弓が命中する。

 モンスターの外皮は一様に鎧のように固い。それでも口の中は別だ。


 ついに痛みに耐えかねたモンスターの何匹がその場で暴れ始める。

 上陸し続け列になっているモンスター達は、途端に混乱し始める。


 爪や尾が周囲のモンスターに激突し、制御を失った魔術が別のモンスターを攻撃する。

 モンスターの数は多いが統制されているわけではないし、様々な種類が混じり合っている。


 これが僕の狙いだった。

 一度起き始めた混乱は、洪水のように広がっていく。


「モンスターはまだ河から上陸してくる!?」


「……はい、あと数十体は来ますです!」


「くっ……とりあえず混乱を拡大させるんだ! ガストン将軍が体勢を整えるまで、近づかせるな!」


 それでも先頭の無傷なモンスターや、同士討ちを避けたモンスターはガストン将軍の陣へと突撃していく。

 だけれど、兵達も最初の混乱からは脱しつつあるようだ。


 盾と鎧を装備した重装兵が前線に現れ、距離を取りながらモンスターに対峙する。

 人数は少ないながらも、魔術攻撃が始まりモンスターを食い止めている。


 それでも数が多い。

 このままだと大きな被害ーー1千人規模の被害が出かねない。


 それでも一匹、また一匹と陣へとモンスターは攻め寄せる。

 僕達もモンスターに捕捉され始めていた。


 水球や風の刃といった魔術が放たれ、僕達を叩き落とそうとする。

 空から落とされたら下はモンスターの大群だ。命はない。


 あるいは皮膜のような魔術で防御を固めるモンスターもいる。

 こうなると僕達の遠距離攻撃では埒が明かない。


 対モンスター戦の基本は適切な距離を取ることだけれど、敵の攻撃を回避し続けながらでは難しい。


「無駄かも知れないけれど……やるしかないか……!」


 僕はイライザへと大声で、


「《血液操作》で足止めの壁を作ってみる!  援護してくれ!」


《血液操作》は魔力を含んでいると操りきれない。

 それに荒れ狂うモンスターの達の前では、レナードの時のように即座に拘束は無理だろう。


 それでも兵は3千人もいる。

 柵や壁程度でも効果はあるはずだ。

 イライザは一瞬迷ったようだけれど、


「わかりました……! くれぐれもお気を付けて!」


 僕は手綱を取ると飛行騎兵をモンスターの上空から、兵達の前線へと駆った。

 そのまま滑り落ちるように馬から降りて、僕は両手を地面につける。


「これまでの援護、感謝します……ここは危ないです、お下がりを!」


 前線の兵が僕を庇うように前に出る。

 正規兵であれば、僕達の顔を知らなくても立場はわかる。


「いえ……まだ、やれます……! 少しだけ後ろに下がっていてください!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ