第九話
「…とうとう戻って来なかったな…。」
学校にいる皐月は、もう帰り支度をしていた。
芦屋はまだ戻って来てない。
学校の授業も全部終わって、帰るだけだ。
今日は部室が違うことに使われていて部活もない。
「…。」
芦屋のバックに手を突っ込むと、鍵と財布を見つけ、自分のバックにしまう。
「渡部君帰り?」
「ああ、うん。」
宇佐が話しかけて来た。
「一緒に帰ろうよ。」
「道一緒だっけ?」
「駅までは一緒だよ。僕何度か渡部君見たことあるし。」
「そっか。でも一回芦屋の家に寄らなきゃ。」
「どうして?」
「せめて鍵と財布だけはポストに入れておこうと思って。」
「優しいね。僕も付き合うよ。」
「ありがとう。」
二人はそう言うと廊下を出て行った。
「ふふふふふ。」
その姿を教室から見ていたツインテの萌々香は不気味に笑った。
もちろんその隣には野々花がいる。
「今度は何?もう芦屋君は神田さんと確実だよ。」
「見た?今の。」
「は?」
「あそこもありだよね。どっちがどっちかなぁ…。」
「…。」
「確かに芦屋君は神田さんのこと好きかもしれないけど、私ひしひしと感じるの!!!渡部君が嫉妬してるの凄く感じる!!!今日だって芦屋君がロミオのように教室を飛び出した時の渡部君の顔、興奮した。」
「あんたの妄想でしょ。」
「鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してたもーん。だから今宇佐君と一夜の過ちを…。」
と、机を叩いていた。
「あんた幸せね。」
と、またいつものため息をついていた。
「渡部君。僕、あのカメラのことについてもっと調べることにしたんだ。」
一方噂の二人は、校門を出て談笑しながら歩いていた。
「へえ。物好きだね。宇佐も。」
「あのカメラの持ち主は自殺した川田ヤスの物だったんだ。あと男と女が一人ずついたんだ。どうやら動画を投稿してたみたいでそれ探して見たんだけど、全部削除されたみたいって掲示板に書いてあった。」
「肝試しにでも来て、事件に巻き込まれたって事?」
「そう。女の子は行方不明になった女子高生の桜田美雨未だ行方不明みたい。」
「もう一人は?」
「大学生の白鳥義弘。僕、ネットでコンタクト取って見たんだけど、ブロックされちゃった。何も話したくないみたい。」
「ふーん…。ねえ。それ一回見てもいいかな。」
「僕の家にあるんだけど…来る?多分渡部君の二駅先なんだけど。」
「いい?」
「いいよ。どうせ予定もないから。」
「芦屋にそっくりな男が映ってるんだよね。」
「うん…。それが気になって。」
「芦屋はあの山には入らないよ。怖がりなんだ。意外とね。」
「そうなの?僕の勘違いかな。」
「早く見て見たいな。」
「渡部君は どうして芦屋君と仲良くなったの?」
「先生に頼まれてね。」
「でも、一年の時芦屋君とは別のクラスだったのに、わざわざ渡部君指名したの?」
「さあ。もうあの先生この学校辞めて遠いところに行っちゃったからね。なんで俺だったのかな。」
「言われてみれば渡部君って優しくて社交的で頼れるからわからないでもないかな。」
「過大評価しすぎだよ。ほら、あの新人の若い先生だよ。芦屋のクラスの担任だった。あの先生すぐ結婚して辞めちゃったけどね。」
「いたね。あまり覚えてないな。」
「芦屋のこと相当悩んでたみたい。科学の先生だったから仲良くなったんだよ。」
「そっかあ。なるほどね。芦屋君とどうやって仲良くなったの?」
「ひたすら話しかけてたよ。最初は。あの先生色々初めてで、ノイローゼ気味だったからそれが見てられなくて。それを解消してやるために芦屋と仲良くしようと思ってたんだ。」
「大変だね…。僕はもう嫌われちゃったからな。」
「まあ奇跡だよ。仲良くなれたのは。殴られたし、かなり罵倒されたし。毎日泣きたかった。」
「今では芦屋君の事なんでも知っているんだね。本人から病気持ちって聞いたけど、彼は具体的にどんな病気なの?」
「うーん…精神的疾患て言うか、昔のトラウマで悪夢を見てしまったり突飛な行動をしてしまう病気。ごめんね宇佐。この事はデリケートすぎるからこれ以上は聞かないで。」
「うん。分かったよ。」
2人は芦屋の家のマンションの前に来た。
「芦屋君気づくかな?」
「メール打っておいたから大丈夫。」
皐月は財布と鍵をポストに入れ、マンションを後にした。
「いつもここまで迎えに来てるの?」
「うん。朝は早めに行ってね。」
二人は今度、駅まで歩き始める。
冬に向けて日が落ちるのが早く、あたりはもう薄暗い。
「蓮本が神田さんを好きだったとはね。」
一部始終を学校で聞いた皐月は急にそれを思い出して腕を組んだ。
「神田さん美人だからね。蓮本君って面食いらしいし。」
「確かに神田さんが転校して来た時は男子はみんな騒ついたよね。綺麗な子だって。」
「思い出した。でも彼女に近づいた男はみんな玉砕して、誰も近寄らなくなったんだった。神田さんと芦屋君、あの後どうなったんだろ。」
「さあ。全然連絡ないしね。」
「蓮本君も学校戻ってこれるのかな。」
「芦屋に殺されるかもしれないけど。」
「それはありえるね。」
駅に着くと、二人は電車に乗って宇佐の家に向かう。
「ただいまー。」
ガチャ
徒歩5分で着いた宇佐の家。
駅近とは言え、その家は小さなアパートだった。
「誰かいるの?」
「いない。母さんはパートなんだ。」
「…。」
確か、中学の頃聞いた話によれば宇佐は母子家庭だった。
社会人のお兄さんと、宇佐と母親の三人家族だった。
「ごめんね狭くて。」
「大丈夫だよ。」
「最近兄さんが出て行ったから僕の専用部屋が出来たんだ。」
と、小さな畳部屋に向かう。
そこには木のタンスと、ちゃぶ台と部屋の角に収まる布団があった。
「宇佐の部屋?」
「うん。前は兄さんと使ってた。お茶入れてくる。」
宇佐はそのままキッチンに向かった。
「どうぞ。」
宇佐が暖かいお茶をちゃぶ台に乗せた。
「いただきます。」
「ビデオカメラ…。」
皐月がお茶を飲んでいる間に
宇佐はバタバタとカメラのセッティングをした。
「これ落ちた衝撃で突然電源落ちちゃったりするんだよね。後何回見れるかな。」
そう言いながらパソコンと繋いでバッテリーの維持に努めた。
「再生っと。」
宇佐はカメラの再生ボタンを押した。
すると、カメラ準備をする川田ヤスの声、三人組が陽気に暗闇に挨拶しているところや、何もないところを徘徊してる映像が流れる。
「ここ!見て!」
宇佐が注視する場所は、みうと名乗る女子が倒れら音がしたところだった。
残念ながらそこはカメラには映っていなかった。
「あれ?」
ザーザーと、カメラの映像がぼやけ始める。
気づくと、場面はとある寂れた小屋の中だった。
ビデオカメラを持った男が突然カメラを持ったまま倒れた。
川田ヤスだろう。
そのカメラは色んなものを映しながら回転し、床に落ちた。
そこでカメラは終わる。
「見えた?」
「わからなかった。」
「もう一度。」
「宇佐、これパソコンにデータ移さないの?」
「データ不足で保存できなくて。USB買ってこなきゃと思うんだけど今お金無いし。」
と、また再生して肝心の場所で停止ボタンを押した。
「ここ!!」
宇佐はその小さなビデオカメラの液晶を見せる。
そこには人が映っていてナイフを持っているように見えた。
だがブレブレすぎてよくわからない。
「うーん、確かに言われてみれば似てるね芦屋に。でもこれだけじゃ弱いかな。」
「これ、警察持って行ったほうがいいのかな。」
「どうなんだろう。宇佐はどうしたいの?」
「やっぱり出そうかなって。桜田美雨が行方不明からまだ見つかってないから。映像あんまり映ってないし、いたずらと思われるかもだけど。」
「俺が出して来てあげるよ。警察近いし。」
「え?」
「今日の帰り。実は警察の知り合いがいてね。その人なら話わかってもらえるよ。」
「本当?良かった…。僕、警察の人好きじゃなくて。」
「どう言う事?」
「父さんが自殺した時、心ない言葉を言われてから近づくのも嫌になったんだ…。」
「…。」
「ごめんね。忘れて。じゃあこれ頼んだよ!」
「うん。その人は正義感溢れる人だから大丈夫だよ。」
皐月はそう言ってビデオカメラを受け取った。
「今日はありがとう渡部君。」
「うん。家に招いてくれてありがとう。」
「またいつでも来て。芦屋君の愚痴とかなら聞くから。」
「ありがとう。宇佐も頑張ってね。」
「うん。またね。」
ガチャン
宇佐は扉を閉めた。
「…。」
皐月はそのビデオカメラ片手に、夕暮れで橙に染まる空の下を戻って行く
「…。」
彼の横には綺麗な川が広がる。
河川敷は寂しく、人っ子一人いない。
皐月はその光景に足を止め、優しい風に髪を揺らしながら川にまで近づいた。
「ごめんね。宇佐。」
川辺にしゃがむと、持っていたビデオカメラを川につけ、そのまま離した。
「…。」
沈んだカメラをしばらく見つめると、そのまま立ち上がってその場を後にした。
金曜日。
「おはよう卓。」
「ああ。」
芦屋はそう言いながら眠そうな目をこすった。
相変わらず髪がボサボサで、ネクタイが曲がっている。
「その様子だとさっきまで寝てたな。」
皐月はその曲がった芦屋のネクタイを直す。
「昨日はお楽しみだった?」
「は?」
「神田さんと。」
「そんな楽しいことしてねえよ。あいつずっと落ち込んでたし。」
「神田さん今日学校来れそうかな?」
「さあな。喫茶でカフェラテ飲んで、話して帰っただけだからな。俺は何もしてねえよ。」
「そうなんだ。昨日帰ってこなかったからもしかしてって。」
「何の話だよ。」
「ううん。無事帰れたから良かった。」
今日も秋晴れの中、二人は肌寒さを感じながら通学路を歩く。
「昨日鍵助かったぜ。皐月のことだから入れてくれると思った。」
「うん。どうせ帰って来ないとわかってたから。」
「あのタバコ野郎は戻って来たのか?」
「あの後?戻って来なかったよ。お願いだから何もしないでね。退学になるようなこと。」
「わかってる。そうしたら神田にも会えなくなるのもわかってる。」
「…。」
校舎に入り、靴を上履きにかえる。
「そう言えば、クラスのみんな二人のこと心配してた。」
「だならなんだよ。」
「今日から反応違くなると思う。」
「?」
とりあえず自分達のクラスへ向かう。
皐月は前の扉に手をかけ、横に引いた。
ガラッ
「あ、おはよう!!」
皐月の男友達が声かけたと同時に、なぜか皆の視線が一気にこちらへ集まった。
教室が一瞬静かになる。
「おはよう。」
皐月はいつもと同じように振る舞う。
適度に挨拶しながら芦屋を連れて教室の真ん中を歩く。
横目で神田の席を見るが彼女はいない。
蓮本の席にも荷物はなかった。
「…。」
彼のキャラクターのおかげで安易に話しかける人はいなかったが、チラチラと視線は感じる。
あの後どうなったか皆知りたいようだ。
「ねえねえ渡部君。渡部君。」
一方、話しかけやすい男は複数の女子に囲まれて彼の席に行けずにいた。
「芦屋君から何か聞いたの?」
「芦屋君と神田さんどうなったの?」
「二人付き合ってるの?」
噂好き女子達はワクワクしながら彼に詰め寄った。
「いや俺もわかんないよ。ごめんね。」
皐月はそう苦笑いしていた。
ガラッ
教室のドアの開閉音にまたみんなの視線が集まる。
「おはよー!神田さん!!」
「おはよう!!」
噂好きの女子達は何も話さない皐月に飽きて彼女に微笑む。
神田もいつものように席に向かい、窓際へと座った。
「神田さん頰大丈夫?」
わらわらとそのハイエナ達が神田に群がる。
それくらい二人のカップルはこのクラスにとってのビックニュースなのだ。
「大丈夫。」
「ねえねえ芦屋君の事好きなの?」
「いつから?ねえいつから?」
「キスした?」
ヒソヒソと話してるつもりがクラスに丸聞こえである。
「悪いけど期待することは何もしてないわ。」
「隠さなくてもいいよ!もうバレちゃってるし!!」
「そうそう!大丈夫!大丈夫!」
「好きなわけないでしょ。あんな人。」
神田が冷たく皆にそう言った。
「えー、そうなの?」
「私に話しかてもあなた達が嬉しくなるようなこと言わないわ。本当に何でもないの。あの後は一人で帰ったし、彼とは会ってないわ。」
「本当に?」
「いいカップルだと思うのになぁ。」
と、ハイエナ達はがっかりしながら席に戻った。
その数分後
ガラ!!!!
「!」
芦屋がすぐさま反応した。
「何見てんだよ!!」
クラスの沢山の視線に早速吠える蓮本。
茶髪の明るい髪に、銀の丸いピアスを片耳につけてネクタイをだらしなく垂らしている。
自分の席に荷物をガサツに置いた後、すぐに教室を出て行った。
「嫌ね。あいつまだ神田さんに謝ってないでしょ。」
「大丈夫よ神田さん!芦屋君が守ってくれるわ。」
「三角関係…。」
恋愛病の一人が唾を飲み込んだ。
「勝手に言ってなさい。」
神田はそう呆れていた。
「やっぱり持ちきりだったね。」
「そうだな。」
休み時間、移動教室で廊下を歩く二人は解放されたかのようにその話をしていた。
「女子は好きだよね。ああいう話。」
「神田の言ってたことは嘘だよな。」
「なに?」
「さっきの。」
「落ち込んでるの?」
「あいついつもハッタリかますよな。本心じゃないよな。」
「そういうのなんて言うかわかる?巷の流行りでいうとツンデレって言うらしい。」
「つんでれ?」
「人前でツンツンしてるけど二人になるとデレデレする人のこと。」
「だからなんだよ。」
「そう言う人がいるんだって。人前で嫌いとか言いつつ二人きりでは実は好きって言う…みたいな。」
「難しくねえかそれ。でも神田みたいだな。」
「あ。」
会話の途中で皐月の目が大きく開いた。
芦屋も皐月の顔からその視線を辿ると、あの蓮本が他のヤンチャな仲間同士で談笑していた。
「駄目だよ。卓。学校に行けなくなるの嫌でしょ?」
「…。」
渡部は芦屋の腕をがっちり掴み、暴れる犬を連れてるかのように警戒した。
蓮本もこっちに気付くと、笑顔が険しくなる。
「なんだよ。もうあの女には興味ねえよ。」
「…。」
露骨に睨んでくる芦屋にそう突っかかる蓮本。
「あんな女、変人のお前にはお似合いかもな。」
「ああん?」
「卓!!!あはは、ごめんね。」
皐月はグイグイと芦屋の腕を引っ張り、躾のなってない噛みつきそうな犬を連れて行く。
「優也。お前なんかあったのかよ。」
「なんでもねえよ。」
「女絡み?誰だよ。」
「なんでもねえって!!」
蓮本が仲間にいじられているところを眺めながら、芦屋はそのまま連行された。
「なんだあのクソ野郎。」
「興奮すんなよ。症状出るだろ?」
「あいつもう手を出さないよな。」
「わかんない。薬後であげるから落ち着いて。」
「…。」
芦屋は移動教室の先で渡部からカプセルを一つ貰った。
「ねえ内田君。」
「どうした?宇佐。」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なに?」
移動教室先で、先生の急な欠勤により自習となったその時間に、宇佐はさり気なく内田の隣へ座った。
「大嶽山の出来事について聞きたいんだけど。」
「え?何のこと?」
「君が少し前に芦屋君を山で見たって話しだよ。」
「ああー。あれねー。」
内田はそれを聞くと嬉しそうに何度か頷いた。
まるで自慢のネタがあるように、ふふんと鼻から息を噴射させる。
「嘘はつかないでね。本当の事だけ教えてほしいんだ。」
「へえ。宇佐は俺の話嘘だと思っていつも聞いてたの?心外だな。」
「そ、そういうわけじゃないけど。気分を害したらごめん。でも山でのことは本当なんでしょ?」
「そんなに教えてほしいの?」
「うん。お願い。」
宇佐は胸の真ん中で手を合わせた。その人懐っこい顔が偏屈な彼の瞳を覗く。
「ま、宇佐ならいいか。俺の事悪口言ったことないし、信じてくれるんだろ?」
「もちろんだよ!内田君のその話すごく聞きたいな。」
「へへ。しょうがないなあ。宇佐にだけ教えてやるよ。」
内田はやはりうれしそうに答えた。
「確かそれは二週間前の金曜日だったかな。学校も土日休みだからネットで作った心霊同好会で、呪いの山へ遊びに行こうってなったんだよ。確か、4人くらいいたんだけど。」
「そうなんだ。」
「なんで行こうかと思ったかと言うとな、都市伝説みたいなのがあって、金曜の夜に行くと出るって噂が数年前から出回ってたんだ。今の時代だと、好奇心で来るアホな集団とか、動画サイトで再生数稼ぎたいがために肝試しするやつとか。結構いるんだよ。」
「あそこそんなに人来るの?」
「来る。で、今回も自殺者が出たろ?また物好きが来るんだよ。事件より自殺の方が人は集まってくるしな。それで俺達もその噂を信じて肝試しすることにしたんだ。」
「今回の事件でまた集まってくるのかな。」
「かもね。いま肝だめし業界ではかなりのトレンドスポットだぜ。いろんなアホが好奇心だけ携えてやってくる。」
「…。」
「23時くらいだったかな。あの日は一人免許持ってるやつがいたから駅で待ち合わせして、4人で向ったんだ。それで山の麓について、立ち入り禁止を潜ってな。それで4人でライト片手に足元も見えない暗い山を探検してたんだ。」
「よく行くよね。」
「結構そういうコミュニティ多いぜ。それで何もなく山にある小屋にまで向かったんだ。何もなかったんだけどなんか臭かったんだよな。鉄臭さと生ごみが混じったような、変な臭い。他のこじらせた奴が低級霊の霊臭だのなんだの騒ぎ立ててたのは覚えてる。」
「それで?」
「で、なんもないから山を後にしようってなって。あの小屋も今落書きされてスプレーだらけで雰囲気もぶち壊しなんだけどな。俺の持ってたライトが接触悪すぎて、一番後ろで列から遅れてたんだよ。で、ライトの接触直してて、ふと後ろの小屋を照らしたら男が血だらけでこっち見てたんだよ。え?ってなったんだけど、またライトつかないし、一人ここに残されたくないから列を追いかけたんだ。」
「それが芦屋君だと思ったの?」
「ああ。顔は見た。芦屋だった。けど誰も信じないし、空似だと言ったらそうかもしれない。」
「なにしてたのかな。」
「血がついてたから人殺してたんじゃねえの?」
「そんなお気楽で大丈夫なの?」
「なにが?だってその後なんもないし、俺は嘘つき呼ばわりされるし、いい事なかった。」
「そっか、でも僕は信じるよ。話してくれてありがとう。」
「まさか、今日行くつもりなのか?」
「え?」
「金曜だぜ今日。」
「そっか。今日金曜日だ。」
「宇佐も怖いもの好きだったんだなあ。でもあそこは自己責任だし、立ち入り禁止区域だから警察呼んでも怒られるのはお前だぞ。何かあっても呪いの山だからで片付けられるしな。」
「そうなんだ…。」
「それくらいいろんなこと起こった山だしな。」
内田は得意げに腕を組んで、何回か頷いた。